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    dellsen_k

    隠居爺

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    #APH
    #普日
    pugil

    寝正月新年だからって、何が変わったという訳ではなく。寧ろ変わってくれてれば良かった。変わるのであれば、少しは善い方向へ向かってくれる事を祈るばかり。
    この“国”の化身の様なモノである私が、こんな調子ではイケナイが。
    バタバタと行事やらなんやらで時が過ぎ、時間に余裕が出来たのは1月も下旬近く。

    疲れが溜まっていたのか、コタツでうっかり寝込んでしまい髪を触る感触で目が覚めた。
    銀髪赤眼の男がかなり間近で睨みつけてる。
    「……ぅいょぉー」
    「おぅ。おはよーさん」
    「いつ……来はんれふ?」
    動く気もなく目線だけ、ぼんやりプロイセンに向ける。
    ウチに来るとは聞いてない。しかし来たい時に来るのが常である。
    「だいぶ前だ。ポチの散歩は行っといたし、餌も出してあるゼ。タマの分も」
    あぁ、ありがとうございます。とブツブツ呟き目を閉じた。さっきから頭を撫でるプロイセンの手が気持ち良過ぎる。
    「んだよ、また寝んのか?」
    しょーがねぇな。いつになく優し気な声でヘラヘラ笑った。
    きっと夢なんでしょう。と思えば素直に欲に従える。
    目をしぱしぱさせもぞもぞと隣に移動し、狭いスペースに無理やり体を滑り込ませた。
    「んぉ?何だぁ?イキナリ」
    スペースを空けるプロイセンに抱きつき、調度体の収まりのいいポイントを探し出す。
    「……や・やけに積極的じゃねぇか」
    しっかり抱きしめ返す腕が心地好い。
    「オヤスミなさい」
    「……あぁん?」
    何事か呟く声が聞こえるけど、それも子守唄のよう。前から感じていたが、奴にひっついていると気持ちが落ち着いて疲れが取れる。
    これからは“安眠枕”と書いて“プロイセン”とでも読む事にしようか。

    次第に静かな寝息が聞こえてくる。
    「……どーっすんかねぇ?」
    ふぅっと息をつくが別に困ってはいない。
    イタズラしてやろうか。と、一瞬思ったがそーゆ・気分じゃねぇ。
    そろそろシンドクなってる頃だろうと、毒吐きに付き合ってやるつもりで来た。気持ち良さ気に寝入っていたのを起す事はしたくなかった。
    間の抜けた顔で熟睡しているのを、自分で入れた茶と出してきた饅頭をツマミに、観察し待機していたワケだがまた寝入られてしまった。睡眠はストレスを確実に減らす事が出来る。
    まだ眠いつーなら、付き合ってやるまでだ。
    ゆっくりと抱えるように、日本の体を移動させ座布団を折り、中で丸くなってる猫の位置確認をし横になる。
    運んで布団に寝かせてもいいが、布団を引くのがメンドイしコタツから出たくない。
    そして俺はコタツで寝るのが案外好きだ。
    腕の中の日本が身じろぎしがみ付いてくる。足なんか絡ませて来て。
    日本がジャージで良かった。
    サラサラな黒髪を指で遊び、首筋に滑らせる。暖かい体温に動脈が波打つのを感じ、口元がニヤける。多分俺、今とんでもなく締まりの無い顔してるだろうな。
    それも心地良く、無防備な日本を抱きしめ目を閉じる。

    暖かくて大好きな匂いが心地良くて、もぞもぞとしがみ付いた。
    が、妙にリアルな質感につい目を開ける。真っ暗な視界。静かな寝息がかなり間近に聞える。
    何が何故どうしてこうなった?
    広いがっしりした背中を、ペタペタと確かめるように叩く。
    うん。間違いなく、プロイセンくん。
    ほっと息をつき、隙間から辺りを窺う。自分の家……うっかり長々と寝入ってしまったらしい。
    頭がだいぶ起きてきて……とりあえず起きねばなるまい。体を動かすと、尻の傍に柔らかい感触があり手を伸ばす。柔らかい毛並み。フワフワ……タマか。猫を踏まないように慎重に体を起こす。
    「……っぅうっ」
    室内の温度に体を震わせ時計を確かめる。あぁ、完全に夜。何もせず1日寝て過ごしてしまった。
    呆然と座り込んだまま頭を振って、さっきまでの温もりが恋しくて手を伸ばす。
    「うひゃぁあっ?!」
    突然、手を握られ素っ頓狂な悲鳴を上げてしまい見ると、肩肘をつき寝転がるプロイセンが伸ばした手を握っていた。暗がりで光る赤い目&白髪と共に爺の心臓に悪い。
    「もう起きるんか?」
    まだバクバクと波打つ心臓を抑え「……ね・寝てたのでは?」なんとか口を開く。
    「寝てたゼ」
    少ししゃがれた低い声。体を起こしバキバキと音をたて伸ばすのを、ぼんやりと眺めた。
    「……どっから湧いて出たんです?」
    ぽろっと漏れた呟きは無言で睨まれる。
    「はっ!忘れてましたっ、ポチくんとタマの餌っ!!」
    急に大事な仕事を思い出し、立ち上がりかけた腰をプロイセンがロック引き戻した。
    「はぃ!その件なら終了」
    「ふぇ?」
    「ポチの散歩も完了。お出迎え早々に催促してたからな。洗濯物も回収し片付けてある。お前ン家の奴から何件か電話が入ったが、具合が悪いっぽいからメールにしろと伝えた。結構、俺様は早く着いてお前は寝てた。質問は?」
    これから私が聞くであろう事を一気に並べ、パチン!と指を鳴らし促す。
    なんかの講義を受けてる気分。
    「起してくれれば」言い訳のように呟くと「メンドイ」
    「なんです、ソレ……何故、貴方まで一緒に寝ていたのです?」
    「お前がひっついてきた」
    「まさか!」
    それは無いでしょう。と続けようとしたら
    ぐぅぅぅ~っ
    「あ……」
    腹の音が盛大に鳴り顔を伏せる。恥ずかしい。
    まさかポチくんとタマの餌の事を思い出したのは、自分の空腹の為……とは思いたくない。ついでに一度目が覚め、確かに自分がひっついた心当たりがなんとなく。重ねて恥ずかしい。
    「まず俺等の“餌”だな。作ってあった肉ジャガでいいゼ?ツマんだけど旨かった」
    「え、いえ。でも、それでは」
    流石に作り置きはどうか。顔を上げると、予想外に優し気な眼差しに真顔があった。
    「なんなら俺が作ってやろうか?ん?サボれる時にサボっといた方がいーぞぉ」
    ドクン。高鳴る動悸に息切れ眩暈。顔を上げる事が出来ないのに、わざわざ覗き込もうとしてくる。何プレイだというのだ?キサマは落としゲーキャラか?
    困った事だが、普段豪語する程に奴は自分の顔を理解していない。
    「今日は……やけに優しいですねぇ?」
    「いつも優しいだろが。ぉ?」
    「ついでにもう少し……甘えさせて下さい」
    とプロイセンの首に腕を回し自ら抱きついた。部屋が暗くて良かった。
    バランスを取るように姿勢を替え、日本の細い腰を引き寄せる。
    「おまー……こーゆ・のいちいち窺うな。照れんだろよ」
    貴方は照れるポイントがいちいちズレてるんですよ。と、心の中でツッコんでおく。
    背中を撫でる手が心地良くて首元に顔を埋め目を瞑る。
    眠くなってきた。このまま寝てしまおうか。
    ぐぅ……きゅるるるぅ~……
    再度、空腹が主張してきた。肩を震わせて笑い耳元で囁く。
    「やっぱ俺、作ろうか?お前抱えて」
    「……断固拒否します」
    ただ寝ているだけで何故腹は減るのでしょう。
    あぁ……なんて格好悪い。
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