圧迫面接 一歩事務所に入った瞬間、就活に失敗したことを悟る。唯一内定を出してくれた不動産会社。面接は和気あいあいとしていたし、面接会場の応接室だって明るくて、開けた窓からの風に観葉植物の葉が揺れていた。なのに、この事務所の暗さと緊張感は一体何だ?
「ようこそ◯×不動産へ。綾野くん」
事務所の丸テーブルの中心に、中世の王の如く座るのがきっと社長だ。最終面接にも姿を現さなかった時点で、おかしいと思えば良かった。絶対に、一般的な企業の社長じゃない。長くうねる髪は深い海の底の海草のようだし、第一、こんな暗い事務所でサングラスなんかしている。黒いガラスで隠された奥の目は獲物を狙うライオンのように光って見えて、寒気がした。この場で、獲物となるシマウマはただひとり、僕だけだからである。
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