「明日のお花見、楽しみだね」 「えっ!?」
おおよそ明智から出るとは思えない言葉に蓮は咄嗟に彼の額に手を当てたり。その結果読書を邪魔された明智は眉を少し釣り上げるとその手を振り払う。因みに平熱だった。
「僕が楽しみって言うのがそんなに変?」
「えぇっと、珍しいなって······」
「君といい、元怪盗団のお仲間といあ僕のことを人の心がないとか思ってるんじゃないかって時々思うよ」
「流石にそこまでは思わないけど」
「僕だって楽しみにしたりくらいはするさ───大体、それを教えてくれたのは君だろ」
「明智?」
後半が聞き取れずもう一度と言っても明智は「何でもないよ」とだけしか変えしてくれず、聞けなかった。明智の頑固さは知っているので諦めるしかない。
「ともかく、一緒に弁当まで作ったのに楽しみにしないのはおかしいだろ。それだけ」
「そっか」
まるで義務のような言い方ではあるが、彼の声が少し弾んでいて蓮は本心から楽しみにしてくれているのだと嬉しくなった。
「こんなに桜があるのに人が全然居ない······」
「言っただろ、近くに最高の穴場なあるって」
「これは確かに穴場だね」
お花見当日になって普段は大人びた明智がどこか子供のように瞳を輝かせていて、そんな彼を見ることが出来るのは自分だけの特権なのだとほんのりと優越感が湧いた。
それを誤魔化すように蓮は明智に声をかけて景色の良さそうな場所を探すとその場所にシートを敷いた。そしてその上に二人で作ったお花弁当の重箱を置く。
ぱかりとお弁当の蓋を開けると、定番のおにぎりや卵焼きから菜の花を使ったコロッケ、春のフルーツ等、どこか統一感の無い中身が出てきた。二人で作りたいものや食べたいものを作って詰めたので当然かもしれない。しかし彩り豊かなおかげでお花見弁当らしい華やかさをしていて見ているだけでワクワクする。明智の方を見ると目が合った。きっと彼も同じようなことを考えているのだろう。どちらともなく口を開くとお弁当にどこから手を付けようかと話し合う。そんな二人の間を白い花弁が降り注いでいた。