ためらう小指「ね、道長。ちょっと俺のこと、抱きしめてみてくれない?」
「抱きしめる……ですか?」
突然の薛洋のお願いに、暁星塵は少し戸惑ったように聞き返した。
薛洋は、暁星塵がこうやって困ったような顔をするのを見るのが大好きで、隙があれば突拍子のないことを言って、暁星塵の反応を楽しんでいた。
冗談だよ、そう告げようとした薛洋の前に、白い影が差した。少しだけ屈んだ暁星塵が、薛洋の肩に手を回してそっと抱き寄せたのだ。
上衣の袖が薛洋を覆い、全身が暁星塵に包み込まれる。
息を吸うと、胸いっぱいに暁星塵の匂いが広がった。土埃と、汗の臭い。
薛洋は衝動に突き動かされるように、両手を暁星塵の背に回そうとした。
ところが、その肩に手を添える直前で、左の小指が疼き、薛洋は我にかえった。
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