幸せの棲み処 「アシカさん可愛かったモン!」
興奮が冷めない百目が、数歩前をピョンピョン跳ねながら歩いている。メフィスト二世が隣で苦笑いをしながら窘めた。
「おい、人にぶつかるぞ。」
「アシカさんは芸をたくさん覚えて賢いんだモン。」
「上手だったねぇ。」
「楽しかったモン!」
はしゃぐ百目に、真吾は水族館に来てよかったと微笑んだ。
きっかけはテレビだった。
嫌々夏休みの宿題を進めながら、気分転換に何処か遠出したいなと考えていた時だった。
お昼の素麺を食べながら観ていたテレビが、夏休みで賑わう行楽地を取り上げていて、その日は水族館が特集されていた。
茹だるような暑さで辟易していた毎日に、青い水の中、魚達が泳ぐ涼しげな光景はとても魅力的だった。
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