「変わりゆく朝、変わらない君と」瞼の隙間から柔らかな光が滲んだ。夢と現をさまよう意識を微睡から連れ出したのは聞きなれない電子音。ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、延々と繰り返されるけたたましい音色は寝起きの頭に優しくない。初期設定のままにせずせめて小鳥の鳴き声か何かに変えておけば良かったか。結局、人工的な調子には変わりないのだろうけれど。
「う、」
無機質なさえずりを止めるべくシーツの海から手探りで音源を辿る。自室のベッドならとうに腕がはみ出している距離を漕げども漕げども、かき分ける手はやけに手触りの良い布地を掴むばかりだ。シルクだかサテンだか知らないが、いかにも質が良さそうな繊維の上に所々かさつく感触がある。粘度を持った液体が染み込みそのまま乾いたような指触りの正体については、考えないのが無難だろう。
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