問うてはその応え ようやく西の国から中央の国に帰還する目処が立って、賢者を含め全員が安堵していた頃のこと。
散歩ついでに買い出しを済ませてファウストと西の魔法舎に帰ってきたところ、待ち構えていたかのようにフィガロが門前で手をひらりと振る。てっきりファウストに用があるのだと思った(隠しているようだが二人は妙に親しげな気配がある)が、視線は何故かネロに向けられている。
正直、ネロにとってあまり得意な相手ではない。例の件もあるので、今後は関わりを減らしたかった。情が移るから、というわけではないのだ。何があろうともネロのなかで優先順位がひっくり返ることはあり得ないので、フィガロとこの先どれほど思い出が増えたとしても、ネロは躊躇わないだろう。ただ、夕飯まで部屋で休むつもりでいたので困惑した。隣でファウストも微かに戸惑っている気配がする。
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