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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    放課後、学校の校庭で生徒たちがサッカーなどで土埃で汚れつつ遊んでいるのを、校庭の隅の木の木陰に座ってぼんやりとした顔で見る琥珀。右腕には痛々しく包帯が巻かれていた。生徒の一人が琥珀に近寄り遊ばないかと聞いてきたが、琥珀は体調が優れないからと言って断った。遊べるわけない、と琥珀は俯く。
    (……僕ももっと遊びたい、けど……)
    昨日母親から蹴られたせいか体が痛いのだ、一日元気のなかった琥珀を周りは心配していたが、誤魔化して今に至る。周りは優しい、自分の右腕を見てもヒソヒソと何も言わない。さっきも自分のことを誘ってくれた、本当はもっと周りとうちとけたいのだが、その一歩が踏み出せず座り込むしかない。
    そろそろ帰ろうか、と思っていた時目の前に誰かの足が見えた。誰だろうかと顔を上げると綺麗な金髪の少年だった、琥珀は目の前の少年の顔を知っている。同じクラスの子だと。名前は確か、創くんだったはず。
    創はじっと琥珀を見る、見たまま何も言わないので居心地の悪くなった琥珀は恐る恐る聞いてみた。
    「……え、と……僕に何か用……?」
    「……お前さー、もっと遊びたいって顔してる」
    「え?」
    「ちょっと着いてこいよ」
    「え、ちょっと……」
    創から手を捕まれ引っ張られるように歩く。そのまま学校を出て通学路を歩く、帰り道が一緒なのを今日気づいた。そのままとある家に着き中に入れてもらった。ここが創の家なのかと思いつつも、何をされるのだろうかと琥珀の顔色が悪くなると創は週刊誌を取り出してページを開く。
    「この漫画、俺のオススメなの」
    「……漫画……?」
    「【リインと時の鐘】って言う漫画! これすげー面白いんだぜ! 主人公のリインがさ! 俺らと一緒の歳なのにさカッコイイわけ! 琥珀も気にいると思う!」
    「……途中から読んでも分かるの?」
    「大丈夫大丈夫、あらすじとか俺が教えるし! ほらここ、俺の好きな台詞出てる!」
    そういって創が指を指す。琥珀は指を追って見るとその台詞に目が止まった。場面としては大きな敵に対して仲間がピンチの時に言った台詞だろう。
    『諦めるな! オレが、いるだろ!』
    「……」
    琥珀はじっとその台詞を見続けた、まるで穴が空くほどに。不思議とその台詞が琥珀の体に入ってきて、本当にこの主人公がそばに居るのでは、と思うくらいに。この主人公がタイトルに出ているリインというのだろうか。琥珀にとって、迫真溢れる顔でそう言ったリインが目から離れない。じっと見てるしかない琥珀をみて創は声をかける。
    「琥珀、琥珀ー? 大丈夫?」
    「……え、う、うん……。………あ、あの……創くん……その、もっとこの作品……教えて……」
    「いいぜ! 本もあるから! てか創くんって言わなくていいから」
    「え、ならなんて呼べばいいの……?」
    「簡単だろー? 呼び捨てで言えばいいじゃん!」
    「……つ、つく……る」
    初めて人を呼び捨てで言ったため、声が震えてしまったが創は笑顔で返事をした。それを見た時なぜだか胸の辺りが熱くなり目の前が滲んで見える。琥珀が泣いてるのに気づいた創が慌てて琥珀を見る。
    「え!? なんで泣いてるの!? 嫌だった!?」
    「……だ、大丈夫、嫌じゃないから……」
    何故だろう、涙が溢れてくる。母親から蹴られたり何をされても泣かなかったというのに、創は自分に嫌な事をしたはずじゃないのに。ポロポロと涙が零れて留まるところを知らない。
    ──その日、琥珀はいずれ親友と呼べる相手と、ヒーローを見つけたのだ。

    「琥珀ー、琥珀ー!」
    「……リイン?」
    体を揺らす感覚に起きた琥珀、どうやらソファに座ってそのまま寝てしまったらしい。目の前ではリインが琥珀をみて少し呆れていた。今日はリインが琥珀の住んでいるマンションに遊びに来ていたのだ。
    「全くさー、俺が何度も呼んでも起きなかったんだぜ琥珀」
    「あー……仕事で疲れてた……ごめん」
    前の日少し立て込んでいたからだろう、どのくらい寝たのだろうと時計を見て約一時間経っている事に気づく。せっかくリインが遊びに来てくれたというのに悪いことをした。それにしても、懐かしい夢を見た。幼少期の自分と昔の親友、リインの作品に初めて触れたあの日。あの日から少しずつ自分は変わっていった、今はリインがいるが、親友はいない。
    「え!? 琥珀どーした!? 泣いてる!」
    「え?」
    リインの顔を見た時、確かに周りが滲んで見えた。そして鼻の奥が痛い、リインが慌てた様子でティッシュを探している時にそっと自分の頬を触る。触ると濡れており、ポロポロと涙を流していた。リインがティッシュを見つけて琥珀に突き出す。それを受け取り涙を拭くが、涙は止まってくれない。
    「琥珀、琥珀どうしたんだ? なんで泣いてるんだ……!? 俺何かしちゃった!?」
    「だ、大丈夫……。大丈夫だから」
    このままではリインが心配する、心配するリインの表情があの日泣いた時心配してくれた親友とリンクする。その瞬間胸が締め付けられるような感覚になった、あぁ、俺はいつまでも泣き虫なのだな、痛感してしまいとますます泣いてしまった琥珀をみてリインが叫ぶ。
    「琥珀! オレがいるから泣くな!」
    「………っ、分かってる……リインはいつでも……」
    いつでも俺を助けてくれた、と言いたかったが、言葉して出てこなかった。ゴシゴシとティッシュで拭くともう大丈夫だとリインの頭を撫でる。それ以上どこか悲しそうに見るリインの顔を見たくなかった。そのまま飲み物をいれるためにソファから立ってキッチンへと行くのであった。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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