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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    ちょこ

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    かのくだ
    よその子さんお借りしてます(流れ等もお借りしました!)

    「教えてくれたのは」 目を負傷した椥に連れそう形で病院に来ていた、病院では今回の戦闘で怪我をした職員が待合室に沢山おり、看護師が忙しそうに大声で周りに指示を出しながら走り回っていた。重軽傷や、死者も沢山出たと聞いていただけに、自分が傷一つなくこうして当たり前のように立っているのが奇跡のように感じた。椥の目の傷は失明をするほどの大怪我ではなかった。だが、視力の低下と傷跡が残ると言う。
    「椥ぃー!!!!」
    「病院で大声を出すな、大丈夫だから」
     慌てふためいているイルと違い、冷静にそう答えた椥は治療をしてもらうとさっさと病院を後にする。冷静すぎでは? と狼狽えているイルを横目に椥は口を開く。
    「言ったって何も変わらないだろう、視力が低下しているだけで失明している訳では無いからな。それに、俺の目になるんだろう?」
    「……なるけどぉ! 冷静すぎ! カッコイイ!」
    「俺はもう帰る、誰か探してるんだろう。やたらと周りを見ていたが」
    「えっ! ……えへへ……」
    「それじゃ」
     イルの返事を前に、椥はスタスタと歩いていく。バレていたか、とイルは頬をかく。そう、イルはアルマをずっと探していた。もし怪我をしていたらと辺りを探していたが、見つからなかった。もしかして、と嫌な考えが頭の隅から離れてくれない。
    「……返事聞いてないのにな……」
     ポツリとそう呟いた。そしてため息を吐いたあとに前を向いたその時、身に覚えのある後ろ姿が目に入った。アルマだ、見間違えるはずがないと思わず小走りになってしまう。
    「アルマ……?」
     声をかける。自分が思っていた以上に声が震えてしまった、安心の現れだろうか。病院内にいなかったということは、少なくとも怪我はしていないと思うと、ほっと胸を撫で下ろす。声をかけられ、後ろを向いたアルマは涙目になっていた。もしかして何かあったのだろうかとイルは少し焦りつつも、口を開く。
    「どうした?」
    「……」
     アルマは涙目のまま、顔を伏せ自分の服をぎゅっと掴む。
    「アルマ?」
    「あのね、イル君に話したいことがあって」
     そう言ったアルマの声は震えていた、泣き出してしまいそうに。服を掴んでいる手にも、力が入っていたが震えていた。
    「いいよ、聞くよ」
     イルは優しく声をかけた。そして、空いている手でアルマの手を優しく握る。これで少しでも安心できるなら、と。
    「イル君の事を探していたら、また頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃったんだけど……でも、どうしても伝えたくて」
    「ゆっくりでいいから」
    「あり、がとう。あのね」
     そう言うと、アルマは深呼吸をしつつ顔を上げる。目には涙が溜まっており、こぼれ落ちる。
    「今回の戦闘で、死傷者が多くでたって聞いて真っ先にその中にイル君が居ないで欲しいって思って」
     それは自分も同じだ、とイルは思いつつ声に出さなかった。自分も、その中にアルマがいて欲しくなかったし、重軽傷者の中にもいて欲しくなかった。この前の様に、アルマと一緒に戦闘をしたわけではなかったから尚更だ。長い夜が終わるまで、そして目の前のアルマを見るまでは無事など分からなかったから。
    「恋とか、好きとか本当はまだ自分じゃよく分かってないんだけど、私はイル君ともっとお話がしたい。……もっと沢山お話して、私の事も知って欲しいし、イル君のことも話して欲しい。……この気持ちが、恋だったらいいなって思ったの。こんな私でも、イル君の隣に、いてもいいかな」
    「……」
     最後の言葉が消えそうなほど、儚く聞こえた。アルマの涙が自分に移ったのか分からないが、じんわりと目頭が熱くなるのを感じた。もしかしたら、自分も涙目なのかもしれない。アルマの言葉が嬉しくて、胸がじんわりと暖かいのだ。イルは、アルマの手を優しく握ると、口を開く。
    「……まずは、アルマが大きな怪我をしてなくて、ホッとした。アルマが怪我をしていたらどうしようって思ってたし……最悪な考えも頭の片隅から離れてくれなかったしね」
    「……うん」
    「……恋の形に正解とかないと思うんだ、だからアルマのその気持ちも答えも、ひとつの形って思うと……すごく嬉しくて……上手く言えないんだけどさ、俺ももっとアルマと話したいし、ずっと隣にいたいよ。覚えてる? アルマがさ、俺が笑うの増えたって嬉しそうに言ったこと」
    「……覚えてる」
     その話は、イルがこの島に来てしばらく経った頃だ。まだその時のイルとアルマは学生で、放課後に一緒に食べ歩きをしていた時、アルマがふと言ったのだ。最近笑うようになっている、と。その時のイルは自覚は無かったが、アルマが嬉しそうに笑ってるのを見て、つられて笑っていた。
     あのアルマの嬉しそうな顔に一目惚れしたのかもしれない。あの時の自分は全く自覚をしていなかったから分からなかったが、今なら言える。あの頃からアルマの事が好きだったんだ、と。
    「あの時のアルマの笑顔も、素敵だったんだ。この島に来て俺は変われたし……それに、もっとアルマの笑顔が見たいなって思えたんだ」
    「……イル君」
    「こんな私でも、って言わなくてもいいんだよ。……ずっと、俺の隣にいて欲しい。……アルマはよく分かってないって言ったけど、俺に恋を教えてくれたのはアルマだよ」
     あの村にずっと居たのなら、ずっと知らないままでいただろう。相手の事をずっと考え、怪我をしていないか心配をし、相手の事を想って泣いてしまいそうになるほどに気持ちを伝えられるなど。
    「もっとたくさん話したいな、今日は綺麗な青空だねとか、風が気持ちいいとか……当たり前だと思うことでも、アルマと一緒なら違う景色に見えるんだろうな。一人で見るより綺麗なんだろうなって。あ、美味しい物も食べたいし、アルマと一緒ならもっと美味しく感じるし! ……俺、アルマとずっと一緒にいたい! ……アルマ」
     そう言うと、イルは一呼吸置いた後、
    「大好きだよ」
     とイルはアルマの目を見て言った。
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