ネイル 琥珀は自分の部屋で本を読んでいるサクリの骨の手を見ていた。サクリの骨の手には赤いネイルが塗られており、骨の色合いとよく合っていた。黒に赤いネイルなんてかっこいい、なんて思いつつ、琥珀の身近な人に同じように黒いネイルをしている人を思い出していた。
男でもネイルをするのは当たり前になっているこの世の中、琥珀は自分の爪を見る。ネイルなどやったことの無い爪、よく人から綺麗な手だと言われているが、確か創から手入れを教わって今に至っているのだ。
だが、料理をする琥珀からしたら、ネイルが剥がれて料理に落ちるのではなんて思いつつ、身近にネイルをしている人を見るとどうしても気になってしまう。思わずじっと見ていたからだろう、サクリがこちらを向いて口を開いた。
「あんたもやる?」
なにを、と言おうとした時サクリがふわり、と琥珀の手に何かをした。手を見ると爪にネイルが塗られていた。黒から爪先に段々と青色が塗られており、ほかの爪も同じような柄で塗られていたが、色合いが明るめの茶色に紫色、オレンジ色に青緑色、そして緑色に黄色だった。
見慣れない爪、少し派手じゃないのかと思いつつ、色合いがフレイとリヒト、ディリーに創だと気づき、思わず声を漏らす。
「おぉ……三人の色だ、あとこれは創……?」
まさか四人の色を混ぜるとは思わなかったが、ふとサクリの色がないことに気がついた。
「お前の色はないのか?」
「俺の色は別にいいだろ、ドクロでも入れてやろうか」
そういって笑うサクリ、ドクロはお断りしたいのだが、一箇所だけでもサクリの色を入れたらいいのに、とも思った。サクリの色と言えばなんだろうかとサクリを見る、金色を入れるのはどうだろうかと思い提案した。
「なら金色入れたらいい、一箇所ぐらいいいだろ?」
「金色はお断りだ、黄色が入ってるだろ。あのやかましい奴の」
そういってトントン、と琥珀の爪を指さす。ふと、骨の手の赤ネイルに目が移り、なら、と琥珀は口を開く。
「なら赤いれてくれ。赤ならいいだろ?」
「赤? 赤が俺の色だとしてもお前も赤だろ。自分の色入れてることになるけど」
「それでもいい」
「いいのかよ……」
琥珀の頑固さに折れたからか、サクリは少し考えて琥珀の左手の親指に赤を入れた。四人の模様入りとは違い、赤一色だった。琥珀はそれで満足したのか笑ってサクリに見せる。
「似合うか?」
「さぁ」
仕事が終わったからかそのままサクリは本に視線を戻した、そして琥珀は再度塗られた爪を見る。自分にネイルは似合わないだろうと思っていたが、いざこうして塗られた爪を見ると気分がいいのは何故だろう。
「ありがとな」
サクリにお礼を言った後、執筆作業に戻った。