それぞれの行動 琥珀は黙ったまま液晶に送られた通知を見ていた。無免連による大型のデモが発生しており、認可はその際に発生した没討伐に専念せよ、と通達が来ていた。そんな時、創が琥珀に声をかける。
「琥珀、行こう」
「……」
琥珀は創の言葉が聞こえていない様子だった、琥珀はチラリ、と自分の影を見る。サクリもこのデモに参加しているのだろうかと。派閥は違うが、サクリとは臨時を組んでいた。こういう時に派閥が違うというものはもどかしいものなのか、と。一方、反応の帰ってこない琥珀に対し、創は琥珀の肩を掴んだ。
「琥珀、変な事考えるなよ。……いつもお前が頼りにしてるアイツは、今回は敵だって思え。そもそも、もしお前がそこにいったら、お前の立場なくなるぞ? ……それだけは回避したいんだ」
「……創」
琥珀はぎゅっ、と手を握りしめた。創の表情は真っ直ぐと琥珀をみつつも、心配そうな顔をしていた。もしここで、自分がそれでも行くと言ったら、創は悲しむだろうなと琥珀は思ってしまう。
創の後ろに居たカインも、フレイも、リヒトも、そしてディリーも心配そうな顔をしていた。そんな顔をされてしまうと、行くということが出来なくなってしまう。
自分は、相棒より立場を選んでしまったのだな、とズキリと胸が痛くなった。
「……創、大丈夫。行かないから、一緒に没討伐に行こう」
「言ったからな、じゃあ移動するぞ。フレイ」
「OK! 俺のエガキナで移動するから!」
そういってフレイは地図を開く、地図を開いてフレイは口を開く。
「示せ! 俺たちが行く場所を! 『地図の示す場所へ!』」
そういった時、地図が光だし、周りにいた琥珀らを包んで消えた。
移動した場所でふと、リヒトは誰かの後ろ姿を見つけた。その後ろ姿には見覚えがあり、確か八重ではないかと。リヒトは少し迷ったが、琥珀の服の裾を掴んだ。服を掴まれた琥珀は後ろをむく。
「リヒト?」
「あ、あの、今……八重さんがいて、えと」
リヒトは八重にニジゲンがいない事を知っていたのだ、ニジゲンが与える想像力がないとツクリテは戦えない。それを知っていた、後ろ姿を見た時、八重の傍には誰もいないように見えたのだ。琥珀はリヒトが何を言いたいのか分かったのか、真っ直ぐとリヒトの目を見る。
「リヒト、八重さんの力になりたいのか?」
「……は、はい」
「……八重さんについて行くってことは、デモの中心に入ることになる。……怪我とかするかもしれない、それでも行くのか」
「……」
リヒトが黙り込んでしまった様子を琥珀だけではなく、フレイらも黙って見ていた。創とカインは少し離れたところで行く末を見る、カインは隣にいた創に聞く。
「創、いいのか」
「俺が出る幕じゃないでしょ、行くか行かないかはリヒトが決めるんだし」
そんな会話をしている中、リヒトは琥珀の手を取り、何かを決意した目で言った。
「だ、大丈夫、です! ……行かせてください!」
琥珀の手を握るリヒトの手に力がこもる、少し涙目だったがリヒトの真っ直ぐな目に、黙っていた琥珀は少し微笑むと同じく強く握り返した。
「わかった、リヒトの意見を俺は尊重する。……けど、必ず帰ってこい。……約束だ」
「……はい!」
「リヒト、必ずだからな、約束、だからな」
隣で聞いていたフレイが思わずリヒトに抱きついた、体が震えており、リヒトはそっとフレイの背中を撫でる。ディリーは鞄の中から手紙を一通取り出すと、それに息をふきかけ、リヒトの周りに小さな鳥のように舞ったかと思うと、すぅ、とリヒトの頭上で消えた。
「リヒト、君に僕からのエガキナを少々。……君のこと、そしてその八重さんの事を守ってくれるはずだから」
「ディリーさん……、ありがとうございます」
リヒトは帽子を被り直すと、慌てて八重を追いかけるために走り出した。その背中を見つめる琥珀、そんな琥珀の背中をバン、と叩いた創。
「ほら行くぞ。……リヒトなら大丈夫だろ」
「……あぁ」
琥珀は後ろを暫く見たあと、そのまま没が出ている場所へ走り出す。どうか八重とリヒトが、そして相棒が無事でありますように。そう願うしかできなかった。
───行動方針───
・琥珀は没討伐に向かっています。今回臨時バディを組んでいるサクリくんが不在のため、自身のニジゲンであるフレイとディリーが琥珀と共に行動していますが、他の創務や認可に手を貸すことも可能です。
臨時バディを組んでいるサクリくんの事を内心心配しています。
・創も琥珀と同じく没討伐に向かっています、カインとは固定バディを組んでいますが、もし想像力が欲しいツクリテには想像力を与えることも可能です。
・リヒトは創務である八重さんを見かけたため、八重さんを追いかけて臨時バディを組むことになっています。治療など出来るため、もし怪我などされたら……。
灯都はピアスを外していた、後ろの方では留壮がにんまり、と口角をあげて話しかけていた。
「灯都、行くのか?」
「あぁ、夜岸も戦うって言ってた。……今度こそ傍で守るんだ」
回想死因の時、灯都は夜岸の傍におらず、ずっと彼を探していた。どこに行ったのか、ずっと心配して。連絡もつかず、見つけた時夜岸の様子がおかしかった事に、疑問を持ち、そして後で話を聞いたことに、なぜ自分はそばにいてあげれなかったのか、と最後まで責めた。
そんな時、無免が大掛かりなデモを起こすと聞いた時、夜岸に聞いたのだ。どうするのかと、夜岸の答えは戦うだった。その返答を聞いた時、灯都は決意したのだ。今度こそ夜岸を守るのだと、大事な親友、そして相棒をそばで。
「ならこの私も協力しよう」
「そう、瑠音は」
「あいつの事は知らん」
瑠音はどこに行ったのだろうか、と灯都は思ったが、あいつはいつもフラフラしてるかと思いそれ以上考えることなく部屋を出た。変装用に仮面を付けたかったのだが、メガネのせいで付けることができない。考えた末、髪型をいつものハーフアップからポニーテールにした。ふと、留壮が何か持ってきて灯都に結び始めた。それは顔かけだった。布でできた目隠し、まるで死人にかける布のようだった。
「それなら眼鏡をかけても大丈夫だろう? 薄い布を選んだが、見えるか?」
「……うん、問題ない」
留壮なりに考えたのか、と思いつつ、灯都はありがたく貰った。行こう、と一言いって飛び出した。
一方、瑠音はCQ×2の診療所にいた。怪我人が多く来るであろうと予測して、医学の心得のある瑠音はCQ×2の手伝いを申し出た。
「ふふ、新薬を試す機会が訪れたね」
ビーカーに入れられたどす黒い液体を見て怪しく笑う瑠音。黒白衣を翻して、準備を進めているCQ×2の元へ行くのであった。
───行動方針───
・灯都は自分の親友で相棒の夜岸くんと共に没討伐などに赴きます。自身のニジゲンである留壮も灯都について行きます。
・瑠音は灯都とは別行動で、CQ×2くんの元で治療を行います。怪しい薬を使うかもですが、大丈夫です。本当です。信じて。
凪は指示された場所に移動していた、一緒に行動していた羽紅は誰かを見つけたのか、姿を消していた。
「おい! ちゃんと戻ってこいよ」
凪は羽紅の背中に向けてそう叫んだが、相手が聞こえたかは不明だった。凪は少し息を吐いて、マキナである刀を握る。
八重もどこか様子がおかしかった、何かを考えているような雰囲気に、凪は引っ掛かりを覚えていた。自分はとにかく、無免を押さえればいい。
「八重さん、俺達も」
「え、あぁ。わかった」
やはりどこか考えていたのか、遠くを見つめていた八重に凪は眉を顰める。いつもの八重らしくないな、と思いつつ凪は深呼吸して気持ちを切り替えた。
───これが終わったら、先輩の墓参りにいかないと。
刀の柄を強く握りしめ、今羽紅がいない現状、八重の背中を守るのは自分だ、と真っ直ぐ先を見た。
───行動方針───
・凪は上司である八重さんと現地に向かっています。八重さんがなにか考えている様子に心配しています。羽紅くんがおらず、八重さんを守るのは自分だ、と自身を鼓舞してます。
ジュードは無免と創務がぶつかっている様子を高いビルから見ていた。ジュードはふと、空を見る。どちらに味方するなんて分かりきっていた。
「……見てるか、ツクリテ」
空に向かって呟いた後、ジュードは創務が多くいる場所めがけて頭上に雲を集めた。
「……『天候よ、大雨になれ』」
ジュードがそう呟いたあと、大雨が降り出した。叩きつけるように創務の頭上に振らせる。そんな様子にジュードは笑う。
「すまないな、俺らにも守りたいものがある」
自分の亡くなったツクリテが居た場所、無免を守るために。そして、自分たちの創作を守るために。
───行動方針───
・ジュードは創務めがけて大雨降らしたり雹やら霰やら振らせたり嫌がらせ行為行います、高い建物の上からします!すごい嫌がらせ。