打ち明けた事 最悪なタイミング、この言葉を表すのなら、このことを言うのだろう。没が出て、討伐したところまではいい。その時同じ認可の人と話しているのを、連理に見られたのだ。連理は他の認可にバレないように立ち去ったが、しまった、と琥珀は思わず頭を抱える。ついこの間、連理が無免であると知ったばかりで、どこかのタイミングで自分が認可だと話せたら、の矢先の事だ。
おそらく、もう琥珀が認可だと相手は察した。連理の事なので、わざわざ琥珀に言う事はないだろう。けれど、少し気まずい。エリーの家でしか鉢合わせしないが、やはりちゃんと言った方がいいだろう、と。
エリーの家にいつもの様に作り置きを作りに来た時、連理と鉢合わせした。琥珀の顔を見ても、相変わらず普段と変わらない態度で話しかけてくれた。
「……黙っててすみませんでした」
琥珀は連理に頭を下げた。自衛とはいえ、ずっと連理に嘘をついていたことには変わりない。一方、連理はそんな様子の琥珀にたいして、意外そうな顔をして口を開く。
「律儀だね、君は自分を守るために選んだんだから、謝る必要は無いよ。むしろ、必要な事だから」
連理の言う通りだ、認可と創務、そして無免は言わずもとな、敵対関係だ。本来なら、琥珀と連理がこうして話しているのもおかしい。琥珀のように、正体を隠すのは当たり前だ。
「……嘘をついてたことに関しては変わりがないので」
「真面目だねぇ、それに……」
連理はにか、と笑って琥珀を見る。
「俺の事、無免って知った時、琥珀くんそれでも態度を変えなかったでしょ。変わらず接してくれた、嬉しかったよ」
「それは、連理さんの事知ってたから……」
初対面でもし無免と知っていたら、と琥珀は言葉が出なかった。会って話して、連理のことを知っていたから、態度を変える意味などないと思っていた。そう言ったら、連理は嬉しそうに笑う。
「知ってても距離を置いちゃう人もいるからね。琥珀くんだから、俺も今まで通りでいれるんだよ」
「……連理さんがそういう方でよかった」
琥珀は思わず笑う、自分の心配していた事はなかった。無免だから、認可だから、と今まで通りの関係では居られないといらぬ心配だった。
少なくとも、これから先、敵対するような出来事がおこらないことを、祈るばかりだ。