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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    エガキナ

    結成小説
    この度はありがとうございました!

    ##エガキナ

    光のその先へ 鈴鹿に自分が描いた青空の絵を渡した。鈴鹿の言う自分の絵は人を救う、という意味はまだよく分からなかったが、それはリヒトの心の中で、すぅ、と溶けるかのように染み渡っていく感覚があった。その後だった、鈴鹿の口からでた言葉が、飲み込めなかった。
    「俺と組まないか」
     組まないか、その言葉の意味をリヒトは充分知っていた。自分を書いた作者である琥珀と無免連であるとあるニジゲンと臨時バディを組み、琥珀の親友である同じく作家の創と、創が書いた作品の主人公であるカインがバディを組んでいる。
     この世界では琥珀や創、鈴鹿のようなツクリテと呼ばれる創作者と、リヒトのような作品から出てきたニジゲンが組んで没を倒す。
     鈴鹿の言葉をその通りに受け取るのなら、自分と組みたいということだ。けれど、リヒトは困惑するかのように、目を逸らし自分の手を握る。

    「……え、僕、ですか」
    「お前と組みたい」
    「……僕は……」
     弱いですよ、と小さく弱々しく呟いた。自分と同じ作品の主人公であるフレイのように、堂々として困難を乗り越える勇気はない。カイン冷静で恐怖など跳ね返す度胸もない。無免のあのニジゲンのように、圧倒的な強さもない。あの三人みたいになりたくても、なれないのは分かりきっていた。最初から諦めていたところもあったのだ。
     そもそもだ、組むならフレイの方がいいに決まっている。なんで、自分なんかに、と思わず俯いてしまう。考えれば考えるほど、泣きそうになってそれを隠すかのように、手で帽子のツバをぎゅっ、と握る。
     そんな時、鈴鹿がしゃがみこんでリヒトの顔を覗き込んだ。リヒトは驚き、思わず後ろに下がってしまった。情けない顔を見られたくなくて、けれど真っ直ぐと見てくる鈴鹿から目を背けれなくて、何を言えばいいか分からなく、口を閉ざしていると、鈴鹿が言った。
    「これはずっと考えてたけど、俺が背中を預けれるとしたら、リヒトしかいないんだ」
    「……僕、が……?」
     鈴鹿の言葉に目を見開く。てっきり、琥珀か創だと思っていたのだ、その立ち位置は。けれど、鈴鹿はリヒトしか、と言った。

     ───こんな、弱い自分に?

    「……僕は最終巻から顕現したフレイ、最終巻の僕、外伝の『Licht』の僕でも、続編の僕みたいに強くもないです。初登場したばかりの、弱い僕ですよ。そんな僕に……背中預けれるって、思って、くれてるんですか……」
     いつの間にかボロボロと涙を流しながら、言葉を詰まらせつつ目を擦る。目を擦りながら、不甲斐なさでまた下を向く。誰だって、強いニジゲンと組みたいだろう。リヒトは顕現してからずっと、劣等感を味わっていた。
     自分が顕現した時には、すでに琥珀には臨時で組んでいる無免連のニジゲンがいて、自分より少し先に顕現したフレイは最終巻から顕現したため、一巻から顕現したリヒトにとっては、同じフレイでも知らないフレイのように感じて、顕現してから読んでいたが、外伝の自分と続編の自分との差を感じて、落ち込んでいたのだ。
     なんで自分はフレイと出会った頃の、一巻から顕現してしまったのだろうか、と思っていた。魔法は一個しか使えない、外伝と続編の自分は沢山の魔法を扱えてるというのに。没との討伐だって、毎回怖くてたまらなくて、足を引っ張っている自覚はあった。
     『自戒予告』の時なんて、自分からかつて創務省にいた"あの人"に頼んで、自分が変われるかもしれなくて臨時を組んだというのに、結局怖くて咄嗟に行動が出来なかった。
     なにか迷ってるように見えていた彼に、貴方の道を自分の光で照らす、など偉そうな事を言っておいて、その後彼が彼の部下と共に、創務省を辞めたことなど知らなかった。後から知った時、照らせなかったんだ、自分は何も変われなかったんだ、と改めて自分の弱さに落ち込み、ますます劣等感を抱くようになった。

     こんな劣等感にまみれた自分に、鈴鹿の背中を守れるのか不安で堪らなかった。不安の現れなのか、手が震えてしまう。怖い、どうしよう。もし守れなかったら、鈴鹿はただのツクリテではない。琥珀にとってとても大切な人なのだ。だからこそ、もし何かあったら、と頭の中で色んな感情が回る。心臓の音がうるさく、それ以外の音が何も入ってこない。
     その時、リヒト、と鈴鹿が声をかけた。不思議と、鈴鹿の声は心臓の音をかき消すかのように、聞こえた。恐る恐る、と顔を上げると、鈴鹿がじっとこちらを見ていた。
    「強い弱いじゃない、俺がそうしたい。……それだけじゃダメか?」
    「……」
     鈴鹿の目に迷いなどないとすぐに分かる。本当に自分の事を考えて、信じて託してくれている。こんな、没を目の前にして恐怖で竦んでしまうような自分に、ここまで信じてくれている。
     自分の名前は光という意味だと、琥珀から教えてもらった。誰かにとって、リヒトの光で救えるように、と考えて名前を決めたと。琥珀からその話を聞いた時、ずっと自分の名前は相応しくないと思っていた。
     けれど、本当に自分が誰かを守れるのなら、自分という光で照らせるのなら、目の前の鈴鹿の背中を守れるのなら、迷ってる場合ではない。リヒトはいつの間にか震えが止まっていた手で、鈴鹿の手を優しく包むように握る。琥珀より大きい手だ、大きくてごつごつとしていて、自分の手より大きい。自分の手は小さいけれど、守りたい。この人を。鈴鹿だけじゃない、色んな人を必ず守りたい。
    「……僕の光で、鈴鹿さんを守ります。鈴鹿さんが僕に言ってくれたように、僕、頑張ります。……これから、よろしくお願いします」
    「……あぁ、よろしく」

     鈴鹿が笑う、微笑んで笑う様子にまた泣きそうになった。本当に自分は泣き虫だ、と思いつつ、ふと気になっていたことを聞いてみた。
    「あ、あの。話が変わるんですけど……。……鈴鹿さんにとって青はなんですか」
     絵を渡した時、なぜ青空を描いたのかと鈴鹿から言われたのだ。どことなく、鈴鹿にとって青というのはなにか特別な意味でもあったのだろうかと思ったのだ。一方、突然の質問にどこか拍子抜けをしたような表情をした鈴鹿は、そのまま口を開く。
    「……俺は、青が嫌いだったんだ」
    「……だった……?」
    「俺が持ってなくて、とある奴だけが持ってて、あいつが見てた色だから」
    「……」
     なんとなく、誰のことを言っているか分かった。けれど、言わなかった。この人は、青になりたかったんだ、と。自分も、似たような気持ちを持っていたから。誰かのようになりたくて、無理だと思い知って。「確かに俺にはなかった。けど、世界を作るのに欠かせない色で、欠けてはいけない色だな、って」
    「……あ、あの」
     リヒトはぎゅっ、と鈴鹿の手を握っていた手をさらに強く握った。

    「……鈴鹿さんにとって、とても大切な色なんですね。三人を繋ぐ特別な色で。……だから、あの、僕の絵に対して、人を救えるって言ってくれたこと、凄く嬉しいって、改めて感じて……」
     まるでその特別な色に、自分が加わってるような感覚で、胸が暖かくて、涙が勝手に溢れ出る。今日の自分は泣いてばかりだ、と手で拭う。鈴鹿がタオルを持ってきてくれ、お礼を言ってそれで目元を拭いた。
     もう泣いてばかりはいられない、これからも劣等感を抱くことはあるかもしれない。
     けれど、鈴鹿を、鈴鹿だけではない大切な人も、色んな人も。そしてその先を、未来も何もかも自分の光で照らして、守れると決意があるのなら。

     ───前を向きたい。必ず、光のその先へと、導きたい。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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