水平思考「この問題難しいな」
「質問、ほかするのあったっけ」
画面を睨みながら話をしている織弥とれいと。彼らは今、「ウミガメのスープ」と呼ばれている水平思考ゲームをしていた。水平思考ゲームは、とある問題に対して、回答者は出題者に【YES・No】で答えられる質問をしていき、その返答で問題の回答を推理していくというゲームだ。因みに、ウミガメのスープのタイトルの由来は、その水平思考の問題の一つ、有名な問題だ。
今は織弥と一緒に水平思考をしていた。中々問題が難しく、何個か選択肢が挙げられているものをあーだこーだと話しつつ、選んでいた。
なぜこの二人が水平思考を遊んでいるのか。その話をしよう。
れいとは水平思考にハマっていた。ネットで動画を見たり、一人で遊べる水平思考をしたりしたのだが、誰かとしてみたい気持ちもあった。けれど、大抵難しそうだから、と言われ断られ続けていた。それもあって、最近は諦めて一人でずっと遊んでいた。携帯ゲームでも水平思考が出来るのもあり、それを買って遊んでいた。
最近は水平思考も有名になったのか、れいとが見始めた頃より動画も増えていた。それに対して嬉しく思いつつ、れいとはいいなぁ、と呟く。誰かとするのは楽しいだろうな、と。
誰かとしたい、けど、大抵断られる。
そういえば、とれいとは思い出したように顔をあげる。一人いる、遊んでくれそうな人が。けどその人とはほぼ会話がしたことが無いのだ。れいとは人見知りがあり、よく話すのが自分とユニットを組んでいる二人だけという有様。
話しかけるべきか? とれいとは悩んだが、結果的に当たって砕けよう、と思い恐る恐る、と言わんばかりにその人──溝呂木 織弥に話しかけた。相手はよくクイズが好きで得意なのを知っていた。クイズが好きなのなら、もしかしたら水平思考を知っているのでは? と思ったのだ。相手はほぼ話したことの無いれいとにどこか怪訝な様子を感じとれた。
やっぱりその反応するよな、とれいとは苦笑いしつつ、話しかけたのは自分なので、れいとは緊張しつつ話しかける。
「あ、えーと……織弥くんって……水平思考……や、やる?」
「……水平思考? あれだろ、質問して解くやつ」
「そう! それ!」
れいとが興奮したように答えたからか、やや驚いた様子の織弥。相手の反応にやばい、と思い慌てて言い繕う。
「え、えと、僕、水平思考好きで……けど僕の周り知ってる人誰もいなくて、織弥くん知ってたら……遊びたいなぁ……な、なんて……」
いきなりあまり話したことの無い相手と遊べるだろうか、とチラリ、と織弥を見る。織弥は少し悩んでいた様子だったが、口を開いた。
「……別にいいよ」
「……え、ほんと……?」
「うん」
このような流れで、織弥と水平思考をすることになった。お互い人見知りだからか、最初は緊張のしすぎでぎこちなかったが、回数を重ねていくと打ち解けていた。何回か水平思考をした時に、ポロリ、とれいとは言葉を零す。
「今まで知ってる人居なかったから……。動画みてたり、こうして一人で遊べるやつでずっと遊んでたや」
「マジ? 簡単なのにね、今度布教しようぜ。初心者でも簡単に解ける問題用意して」
「うん!」
今まで言われなかった言葉に、れいとは純粋に嬉しかった。ずっと断られていたからか、こうして誰かと遊べる事に、やはりあの時声をかけてよかった、と思えるのだ。
実は織弥には話していないのだが、自分で作ってみた問題はあるのだ。けれど、自信が無いためスマートフォンのメモ帳で日の目を見ることなく眠っている。他の問題を見ると、自分で作った問題がどうも色あせたように思うのだ。
「今度配信で水平思考しようかな、ゲストにれいとくん呼ぶわ」
「えっ、マジ?」
「マジマジ、大マジ」
そう笑う織弥に釣られ、れいとも笑った。ふと、その時に脳が閃く。慣れた手つきで質問を選び、織弥に見せた。
「……あ、この質問どう?」
「……あ! いい質問だってよ!」