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    rousokuxxx

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    rousokuxxx

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    冬×ノスタルジー×寒さと温もり
    クリスマスがあまりアレトラに響かなかったんだけれど、スノードームとトラヴィスに何故だか親和性を感じたので。
    いつも通りの、雰囲気だけのあれです。
    現パロ。同棲。成人済み。

    #アレトラ

    スノードームガラスの中の、透明な世界で。

    くるり、ゆらり、はらはら
    くるり、ゆらり、はらはら

    ゆっくりと、ゆっくりと、降り積もって、そしてまた。

    くるり、ゆらり、はらはら



    店のウインドウに並ぶ、スノードームを、トラヴィスはぼんやりと眺めていた。
    この季節になるとよく見かけるそれは、大小様々、細工も様々。
    賑やかな音楽と、キラキラした装飾、輝くイルミネーション。そんなものに囲まれた、コロンとした形のそれに、しかしトラヴィスは、物哀しいような、寂しいような、ノスタルジックを感じずにはいられなかった。
    くるり。返すと、雪を模した粒が舞い、戻すとゆらりと揺れながら、はらはら降りてくる。ゆっくり、ゆっくり。
    その動きがそんな印象をもたらすのだろうか。
    ガラスの中では、飾られた木に、街を模した家々、微笑む人形などが入っていて、いかにも冬を楽しんでいる様子なのに。
    それに、トラヴィスの出身は、雪など滅多に降らない地域だ。雪が降るときは大体悪天候を絵に書いたような雨混じりの吹雪だったし、積もっても泥に塗れた氷のような雪しか知らない。ゆらゆらと降る雪にも、真っ白な雪景色にも、郷愁を感じる謂れなどないはずだ。
    くるり、ゆらり、はらはら
    返すたびに、球形のガラスの冷たさが指に残って、透明な世界に、舞う雪が積もる頃には忘れ、また返そうとして冷たさを思い出す。指が、冷たい透明を、なぞる。
    「トラヴィス!待たせたな」
    後ろからかかる声に、トラヴィスの意識はスノードームから離れた。
    トラヴィスの隣に立ったアレインは、ちらりとトラヴィスの見ていた棚を見て、「綺麗だな。好きなのか?」と聞いた。どうやら商品を選んでいたと思ったようだ。
    「いや、そういうわけじゃない。行くぞ」
    賑やかなディスプレイに囲まれて、おかしな感傷に浸っていたなどとは言えず、トラヴィスはアレインを促すことで、その場を誤魔化した。


    「雪か…そうだな。街から少し行けば、積もっている地域もあったぞ」
    「ふぅん。土混じりとかじゃなく?」
    「トラヴィスの生まれたとこは、雪が降らないんだな」
    だから、寒がりなのか?ソファで膝を抱えて座るトラヴィスに、マグカップを渡すアレインは、口にはせずにそんなことを思った。
    アレインも同じものを持ってソファに座ると、トラヴィスが身を寄せてくる。ふふ、ほら。それだけで、アレインはもう温かい。
    ホットココアにウイスキーを垂らしたものを、ふうっと、ため息のように息を吹きかけて、代わりに、湯気に混じった洋酒の芳香をいっぱいに吸い込む。
    甘い香りで満たされたなら、もう一度そっと吹いて、カップに口を付ける。
    「うま」
    「今夜は冷えるよな」
    サイドテーブルに置いたキャニスターから、トラヴィスはマシュマロをひとつつまんで、ココアにそれを浮かべた。じわりと溶けて、ほぐれていくマシュマロの輪郭。
    アレインも要るか?と問うと、アレインは自分の口でそれを受け取った。そして、そのまま顔を近付けて、トラヴィスの唇に、咥えたままのマシュマロを押し付ける。
    むに、という感触と、甘い香り。
    トラヴィスが口を開けてそのマシュマロを食べようとすると、マシュマロはふっと離れて、アレインの口の中に入っていってしまった。もぐもぐ。
    「ご馳走さま」
    「おっまえ…」
    マシュマロも、アレインの唇も、与えられると疑わなかったトラヴィスは、悔しそうな顔をする。悪戯が成功して、ふはっと笑ったアレインに、噛みつくようにキスをした。
    「ははっ、悪かったって、こら、トラヴィス!」
    「うるせぇ、寄越せ」
    熱いマグカップを持ったまま、攻防が始まる。なんとか中身を零さずに守られたマグカップは、サイドテーブルに一時避難させられた。


    「トラヴィス!外!」
    キッチンでマグカップを洗っているトラヴィスを、リビングのアレインが慌てた声で呼んだ。見やると、窓の外を指しながら、輝いた瞳。
    アレインの隣に立ったトラヴィスは、ふたり並んでぎゅうぎゅうになりながら、窓を覗いた。
    「雪だ」
    藍色の窓枠に、大粒の雪が、空から舞い降りてきていた。
    風のない空から、ゆっくりと。
    ゆらり、はらはら
    それはまるで、スノードームのように。
    こんな風に雪が降ること、本当にあるんだ。
    珍しい雪の空模様よりも、その降り方に、トラヴィスの意識は奪われた。

    ゆらり、はらはら
    粒の大きな雪は、空気の抵抗を受けて、ふうわりと。まるで落下傘のように、ゆっくり、ゆっくりと落ちてくる。
    そして静かに地に着いて、大地を白く変えていく。
    冷たいのに。柔らかそうだ。

    ゆっくり、ふうわり
    ゆらり、はらはら

    ガラス越しに見る、透明な世界。
    ああ…ガラスの中にいるのは、今は、自分だ。

    「綺麗だな」
    隣からかけられた声に、トラヴィスはハッとした。外から隣に視線を移すと、そこには柔らかくてあたたかな、笑顔。
    ……そうだ、お前も一緒だったな。
    「ああ」
    返事はぶっきらぼうなものしか出なかったが、胸の内から込み上げてきたどうしようもない感情そのままに、トラヴィスは破顔した。
    アレインはその表情を見て、ゆるく瞳を張った後、同じく破顔した。トラヴィスの、遠くを見ていた瞳が、いま自分を見ていることが、たまらなく嬉しかった。


    雪が音をかき消した、ひどく静かな世界で。
    冷たいガラスの、透明な世界で。

    ゆらり、はらはら

    その中にはふたりきり。

    ゆらり、はらはら

    お前と同じ世界に
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