Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    rousokuxxx

    @rousokuxxx

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    rousokuxxx

    ☆quiet follow

    現パロ同棲アレトラ。スパダリイケメン攻に照れて逃げるとはどういうことだ受、そのイケメンは誰が慰めてやれんだよ!お前だろ!?…という他ジャンルの方の叫びと、TLに流れてきた不安定な姿を相手に見せるか見せないか論争を混ぜ込んだお話。同棲したて→数年後

    #アレトラ

    使いたいと思ったタブレットが見当たらない。
    そういえば、昨夜アレインが使っていたような。記憶を辿ったトラヴィスは、部屋の中を探したが、当てにしていたいくつかの場所は、全てハズレだった。

    「なぁ、アレイ、ン。…………」
    トラヴィスはアレインの部屋を訪ね、声をかけた。が、そこにいたアレインの姿を一目見て、すぐに口を噤んだ。
    アレインは、筋トレをしていた。それだけならいつも通りだが、耳にはイヤホン。
    トラヴィスの声は聞こえていないし、気配にも気付いていないようだ。
    ふ、ふ、と規則正しい呼吸をしながら、もくもくとトレーニングメニューをこなしている。
    ああ、これは。
    トラヴィスはそっと部屋の扉を閉めた。
    タブレットは、また今度でいい。

    人たらし、王子様と言われ、常に優しさと強さを持って老若男女を懐柔し、その真面目さと優秀さで荒事を乗り越えているアレインとて、聖人君子でも、完璧超人でもない。
    まだまだ波に揉まれている最中だ、荒波に翻弄される日があるのも、当然のこと。
    そんなときは、取り敢えず身体を動かすのが良いというのが、アレインの持論だった。
    普段から運動は日課じゃないか、と最初は思っていたが、長く共に過ごしてトラヴィスが気付いたのは、そのときは圧倒的に筋トレが多く、強い負荷をかけがちだということと、イヤホンで音楽を聞きながら…要は、他を丸きりシャットアウトすることだった。
    何も考えないようにしているのか、その逆か。
    「ふん」
    トラヴィスはひとつ、ため息をついた。

    アレインがシャワーを済ませてリビングへ入ると、トラヴィスはソファで本を読んでいた。
    ハッとして時計を見ると、思っていたより遅い時間になっている。ずいぶん没頭していたらしい。
    「先に食ったぞ。ほら、お前のも置いといたから」
    「…呼んでくれて良かったのに」
    「へたに声かけねー方がいいかと思って」
    「気を遣わせてしまったのか…悪い」
    「なんで謝んだよ。なんかあったんだろ?」
    「……いや、自分で対処できる範囲だ」
    トラヴィスは、また、呆れたようにため息をつく。
    「抱え込んでんじゃねーっての」
    ソファから立ち上がり、アレインの側まで来ると、不満そうな顔を作る。

    「皆の優しいイケメン王子様を慰められるのは、この世で唯一、俺だけなんだぞ」

    アレインは虚をつかれて目を丸くし、トラヴィスを見た。
    トラヴィスは真面目な顔でアレインを見つめていたが、ふっと破顔して、「違うか?」と口角を上げてみせた。

    「…ふはっ」
    アレインも、つられて破顔した。
    「ああ…その通りだな、トラヴィス」
    「ほら、存分に甘えさせてやるから、来い」
    手を広げるトラヴィスの胸に、アレインは素直に身を預ける。
    トラヴィスの肩に額を付けて、顔を上げないアレインは、きっと、下手くそに泣こうとしているんだろう。
    トラヴィスはアレインの背を撫ぜて、皆の優しいイケメン王子様をただのアレインに戻すため、しっかりと抱き締めた。


    ***

    「………」
    「………」
    ダイニングテーブルの向かいに座るアレインは、終始無言だった。
    チーズを、横に添えていたクレソンと共にフォークで重ねて刺し、作業のように口に運んでいる。
    ちっとも美味そうじゃねえな。トラヴィスはこっそり思う。それ、イレニアさんが送ってくれた、そこそこ良いチーズなんだけどな。
    雑に咀嚼したあと、ワインをぐっと煽って食事を終えたアレインは、小さくご馳走様をすると、「シャワー浴びてくる」と一言だけ言い残して、席を立った。
    「おう」とその背に返すが、たぶん聞こえていないだろう。トラヴィスも食事を終えると、食器を下げて食洗機に突っ込んだ。
    飲み残したワインのグラスを持ち、リビングのソファへ移動する。
    トラヴィスは先にシャワーを済ませているので、あとは寝るまで余暇の時間だ。
    いつもはゆっくり読書をするところだが、さて、今日は、どうやら大事な仕事があるようだな。

    案の定、シャワーを終えて戻ってきたアレインは、無言のまま、トラヴィスの座るソファの、その足元に座り込んだ。
    髪は濡れたまま。
    トラヴィスは自然に、慣れた手つきで、その髪をタオルで拭った。
    用意していたオイルを一滴、手のひらに落とす。もんで馴染ませると、良い香りが広がった。濡れた青髪を撫ぜ、ついでに首も軽く揉んでやる。
    ドライヤーで、ブロックに分けて、地肌から温風をあてていく。ゆっくり、丁寧に。
    そうして、すっかりサラサラになった髪を手櫛で軽く整えて、出来上がり。
    トラヴィスはソファから尻を落とし、ソファとアレインの間にわり込んで座して、寂しげな背中にくっついた。
    腹に手を回す。アレインの手が、そっと重ねられた。

    最近は、無理な筋トレをする姿も、だいぶ少なくなった。
    ようやく甘えてくれるようになった元王子様を、たくさん褒めてやらねば。

    しばらく、背を抱いていたトラヴィスのことを、アレインはチラリと肩ごしに見た。
    お、目を合わせる気になったか。
    目尻が赤い。
    身体を反転させたアレインは、トラヴィスを正面から抱き込む。サラリと頬に流れたアレインの髪からは、良い香りがする。

    「……」
    「うん」
    「…あの狸」
    「はは、うん」
    「悔しい。許さない」
    「うん」
    「俺は負けない」
    「うん」
    「………」
    「俺もいるぜ」
    「…うん…」

    抱き合ったまま、ズルズルと身体を倒したアレインは、巻き込まれて一緒に横になったトラヴィスを見た。
    トラヴィスが、床に散らばるアレインの髪を撫ぜる。
    「せっかくイケメンに整えてやったのに、台無しだ」
    アレインが、力なく笑う。
    トラヴィスは、うまく笑えていないその頬を手のひらで包んで、言った。
    「まあ、でもいいよな。今のお前は、ただのアレインなんだから」
    願わくば、彼の心が少しでも温まり、慰められますように。

    トラヴィスはアレインの頭を寄せると、その髪をわしゃわしゃと、大きくかき混ぜてやった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏💗💗💗🙏🙏💙💜❤💘💖💒💙💜💙💜💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works