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    rousokuxxx

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    rousokuxxx

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    書き上げられる気がしないので供養。冒頭のシーンと、色んなキャラを書きたくて着手し、オチも考えてあったけど、転がいつまでもうまくまとまらなくて頓挫。つまり途中で終わってますし見直しも諦めたスクラップです。契約済、デキてないアレトラ。よくある受けが怪我しちゃう話。

    #アレトラ

    「では、軍議を始めよう」
    軍議用の天幕に集まった面々を見て、アレインは号令をかけた。
    次の地域へ進軍するため、それぞれが集めた情報を共有し、攻略法を相談する。アレインを筆頭に、ジョセフ、クライブがまとめ役を行い、斥候部隊を動かしているトラヴィスをはじめ、状況に応じて呼び出された兵等々が顔を合わせる。

    「…それでは次に、此度の陣営について、トラヴィス、斥候部隊からの意見はあるか?」
    軍議の中、アレインはいつものようにトラヴィスの意見を求めた。
    「あー…今回は、ジョセフさんから説明がある」
    しかしトラヴィスの歯切れは悪かった。遮るようにジョセフが説明を始める。
    「僭越ながら私めから。本拠地の近くに砦があり、そこを先に攻めるのがよろしいかと。地形はフラウが見てきてくれましたので、こちらの地図からしますと…」
    ジョセフの説明は完璧だった。ひと通り聞き終えて、アレインは頷く。
    「そうか、わかった。みな、いつも協力ありがとう。…ところで、トラヴィスはどうしたんだ?」
    「…!」
    「ど、どうって何だよ。俺はここにいるだろ」
    「ふむ…具体的な問いではなかったが、わざわざ『ここにいる』とは、どういう意味だろうか」
    アレインはニヤと口角を上げたが、その目は笑っていなかった。
    トラヴィスが目を泳がせる。
    「……あ~もう!だから無理だって言ったんだよ!殿下を騙せるわけないってば」
    観念したと両手をあげてそう言うと、トラヴィスだった者はオーシュに姿を替えた…いや、戻した。
    「変化術、見事だったよオーシュ」
    「見破られるんじゃ、褒めてもらっても意味ないんだよ。言っとくけど、僕は頼まれてやったんだからね!」
    「何か理由があるんだろうと様子を見ていたが…トラヴィスは、どうしたんだ」
    「殿下、どうかお鎮まりください。殿下にご心配をかけたくないがゆえのこと」
    ジョセフが、努めて静かな声音で、宥める。
    そんなに自分は憤って見えるのか、と内心思ったが、それよりも、確認したい。
    「トラヴィスに何かあったのか」
    「…彼はいま、治癒用の天幕で休息しております。ヤーナ殿とシャロン殿がついておりますので、ご安心を」
    観念したように、ジョセフが伝えた。
    「……そうか」
    いまの声音はどんな声音だっただろう。
    ヤーナとシャロンが診ている、ということは、それすなわち、重傷を負ったということではないか。
    詳しく聞き出したい気持ちも、今すぐにでも様子を見に行きたい気持ちも、アレインはぐっとこらえて、軍議の続きを促した。
    指揮官を保ちきれていない自分に、アレインは苦虫を噛むような気持ちになった。


    ***

    「トラヴィス!」
    「おや、バレるのが早すぎないかい。まったく、あの坊やは」
    何とか軍議を済ませ、その足でアレインは治癒用の天幕へ向かった。ジョセフの、何か言いたそうな視線には気付いていた。
    天幕に入ると、入口近くにはヤーナひとりがいた。アレインは天幕の中を見渡し、トラヴィスを探す。
    「ヤーナ!トラヴィスは」
    「大きな声を出すでないよ。奥にいるさね」
    「どういった状況だ」
    「…大きな傷を負っていてね。止血は出来たが、熱が出ている。シャロンが回復をかけているけど、血を失いすぎたのと、この感じだと毒も受けているかもしれないね。あたしがいま解析しているから、解毒剤が出来るとしたら明日の朝頃だ」
    「明日の朝…」
    「いまは話が出来る状態じゃない。お前さんに会わせるのも、オススメしないが」
    「…顔だけでも、見ていってはいけないか」
    ヤーナはやれやれといった風にため息をついた。この王子がなかなか頑固なのはもうよく知っている。無言のまま、仕切りの奥を顎で示した。
    アレインは奥へ進み、灯りを遮るように深い幕で覆われた部屋に足を踏み入れる。
    寝台の横に座していたシャロンが、緊張した面持ちでアレインを見た。
    寝台に横たわっているのは、トラヴィスだ。白い顔色にどきりとする。
    「…トラヴィス」
    いつも身につけている武具や装備は外され、上裸に、布が当てられている。
    傍らに置いてある布には血が染みており、その量から、相当の血を失ったのだとわかる。
    「回復をかけておりますが、まだ目を覚ましません」
    横に控えたシャロンが言う。疲れの色が見えているので、何度も回復をかけたのだろう。
    そっと、トラヴィスの手を握る。白い肌色とは裏腹に、ひどく熱かった。

    「アレイン」
    後ろから声がかかった。
    アレインはゆっくりと振り返る。
    「ベレンガリア…」
    「お前の方がひどい顔だな」
    声の主が苦笑した。いま、自分はどんな顔をしているのか。
    ベレンガリアはアレインの隣に座し、トラヴィスの顔を覗き込んだ。舌打ちが聞こえる。
    「馬鹿な奴…また、人のために傷付きやがって」
    ベレンガリアの声は泣きそうにか細く、苦悶の表情をしていた。
    「人の、ため…」
    アレインが呟く。
    ベレンガリアはちらとアレインを見、ため息をつく。
    「アンタが知る必要はない。この馬鹿が、勝手にやったことだ」
    そうして席を立つと、ベレンガリアは踵を返して天幕を出ていった。ヤーナと話しはじたのであろう声が、遠くに聞こえる。


    トラヴィスが怪我をすることは、珍しいことではない。
    敵陣営に乗り込み、情報を得るという仕事に、危険は付き物だ。
    怪我をして動けなくなったことも、毒を受けたことも、敵に囲まれて何日も身を潜めていたこともある。
    身軽で、避けるのが得意なトラヴィスだが、体力のある方ではない。装備も最低限で、一度攻撃されると、深手を負うことも多い。
    でもここまで酷いのは、アレインが知る限りでは初めてだ。

    ***

    天幕の前には、どっかりと、ブルーノが座り込んでいた。
    アレインを認めると、じっと眼を鋭くさせる。
    「…ブルーノ」
    「ダぁメだ」
    ブルーノは、アレインが何か言うより早く、アレインを遮った。
    アレインは、ブルーノの静かな牽制に少し怯み、しかし引かない。
    「なぜなんだ、ブルーノ。どうして、トラヴィスに会わせてくれない」
    トラヴィスが目を覚ましたと、二日前にヤーナに伝えられた。
    早速見舞いにと思ったが、報告のその口でヤーナに止められた。その日は一応従ったものの、気になって天幕に足を運ぶと、何故かブルーノもこの様に、主にアレインを止めるために、天幕の前に居座って見張っている。
    容態が思わしくないのだろうか。
    心配でたまらないアレインは、止められても、少しでもトラヴィスの状態が知りたくて、治癒用の天幕に数度足を運んでいる。
    「ブルーノは会えたんだろう?」
    「ダぁぁメぇだ!」
    ブルーノは、頑なに、会えない理由も教えてはくれない。口止めされているようだ。
    「…わかったよ。なら、少しでもいい。トラヴィスの様子を、教えてはくれないか」
    ブルーノは少し考える様子を見せた。
    口止めされている範囲から逸脱した質問だったのだろう。
    しかし、ブルーノの返事は、アレインの期待するようなものではなかった。
    「死には、しねぇよ。アイツはあれで頑丈だからな」

    ***

    「今夜の夕餉か、ロルフ」
    獣を捌いているロルフに、精が出るなとアレインは声をかけた。
    「これは王子」
    ロルフは小刀を動かしていた手を止め、布で血を拭うとアレインに向き直る。頭を下げようとするのを制した。
    「鹿と…鶏か?」
    「ああ、これはですね…」
    「薬にするのよ」
    ロルフが説明しようとしたところで、アレインの後ろから声がかかった。
    そこには、皿のようなものを持ったタチアナがいた。
    「私が頼んだの。ありがとう…ここに入れて頂戴」
    タチアナは、それをロルフに差し出すと、ロルフは頷いて、また獣を捌く作業に戻る。
    「薬?」
    「鹿の肝と、鶏の髄。それに薬草をいくつか…血を戻すための薬になるわ」
    アレインはハッとした。トラヴィスの薬だ。
    「肉は使わないから、皆で食べて。アレイン、貴方もよ…ここ最近、顔色が悪いから。きちんと食べなさい」
    そういうと、タチアナは裾を払って、去っていった。
    「…鹿の肝には、毒を癒す効果もあります。森ではよく知られております」
    アレインを気遣ってか、普段は口数の少ないロルフも口を開いた。
    「特に万病に効くと言われている、若い鹿を狙って討ちました。高く跳ねる、精のある鹿でした。きっと、力をくれるでしょう」
    「…そうだな。ありがとう」

    トラヴィスに会えないまま、三日が経った。
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