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    ナナシ/ムメイ

    @refuge774 @mumei_774
    ゲッター(漫画版と東映版中心/竜隼)書いて一旦投げる場所に困ったのでここに。推敲したのはpixiv(https://www.pixiv.net/users/1604747)に。■→推敲格納済
    なにかあればましまろにどうぞ↓
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    ナナシ/ムメイ

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    漫画サーガ版。號の13年前。竜隼か何かと言えばそう見えると思われ。

    竜馬と隼人の身に起きた事を見ていくと「同じだけど違う」事が多いように感じて。
    校舎/道場の話の流れ、竜馬が隼人を/隼人が竜馬を迎えに行った結果……色々とありますがあれらは何処まで意図的で、彼らはなんだったのかと思います。

    ■ ふたつ、ひとつ ふと気付いた時、自分は何処ともわからぬ場所にいた。建物の中、しんと静まり返った空気の何処からか低く機械音の響く工場のような雰囲気の廊下。随分と広い建物である様子にも関わらず人の気配は無い。
     肌が粟立つほどの恐れに近い何かと、胸が軋むほどの懐かしさ。ここは何処だ、と妙にざわめく重い頭を押さえ、流れるようにそもそも何ひとつとして思い出せない事に気付く。自分の名前さえも。それに思い当たり、ふらついた身体を壁に手をついて支える。
     記憶喪失。
     そんな単語はわかり、この分ならば知識は残したままエピソード記憶だけごっそりと抜け落ちてしまったのかなどと頭の片隅で冷静に考える自分がいる。
     何も思い出せないと言うのに目眩がしそうなほどの速さで思考は巡る。なにか、なにか忘れてはいけないものがあったはずだ。やるべき事があったはずだ。身の内をごっそりと失った空虚感にそんな焦りはあるにも関わらず、まるで雲を掴むように判然としない。
     ……とにかく、こんな場所で立ち尽くしていても仕方がないだろう。僅かな時間の動揺で息まで上がりそうになっていた事を自覚し、鼓動を落ち着かせ、改めて周囲を見渡す。深く吸った空気は、やはりひどく懐かしく感じた。

     どうもここはなにがしかの大型メカニックと絡んだ研究施設であるらしい。ゲッター線、という表記を幾つか見た。物々しい扉の側には除染などの言葉もある警告や注意文が並ぶ。
     ゲッター線。それに関する知識もすっぽりと、不自然なほど綺麗に抜け落ちている。
     知りたい。と、思った。その感覚に既視感を覚えて視界がぶれるような感覚に頭を押さえる。思い出せない。けれど多分これは前から自分の中にあるものなのだろう。
     重く分厚い扉を開けて進めば違う区画のようだった。何かに招かれるように、よく見知った場所のように足は動いた。灰色の通路に自分の足音だけが響く。やはりここには誰もいないのかと思った頃、通路の先、開けた場所に誰かいることに気付いた。

     赤い何かを見上げている男の横顔を見た途端、足が止まった。喉につかえたものが何かわからない。癖のある茶色の髪、意思が強そうな太い眉、活発そうなぱちりと開いた大きい目。知っている。知らないはずが無いとさえ思う。なのに記憶には無い。何かを詰め込んだように胸が重い。
     床に張り付いてしまったように動けない自分に気付いて男が顔を向けた。なにか思い詰めたように険しかった顔が驚くように眉をはね上げた後、その眉根をよせ、訝しげな表情に変わる。
    「どうしてこんなとこ来ちまったんだ、お前?」
     しっかりとよく通る声だった。なにもわからないまま、しかし耳に慣れた声だと感じ、何故か安堵する自分がいた。何を言えばいいかわからず、口を開きかけては閉じる。ようやく動きを思いだした足をぎこちなく進め、男が見上げていたのは巨大な人型のロボットだと通路の先に出て理解した。あれも、知っている。気を抜けばふらついてしまいそうな感覚をまとめあげて男へ歩み寄る。
    「……俺を知っているのか」
     ……お前は、誰だ。ここは何処だ。
     把握できない感情で重い胸から言葉を選んで話しかければ、男が驚いて目を見張り、一瞬ひどく深く傷ついたような、迷子の子供のような顔をした。
     そうしてしばらく考える素振りの後に何か勝手に納得したようだった。
    「起きたらお互い覚えちゃいないだろうが、今度はお前の番なんだろうな」
     お前も俺の時にはこんな気持ちだったのかね? まあ、あん時ゃ俺が思い出すより他無かったけどよ。
     乱暴に頭をかきながらそう話す男の言葉は意味はわかるが理解ができない。説明をして欲しい、と言おうとして見据えてくる瞳に口を閉じた。

    「……あのな、多分お前、今なら『降りれる』ぞ」

     男の目は真剣だった。意味はわからないながら、大事な事を聞かれているとは理解する。
    「どういう事だ」
    「うーん、上手く言えねえんだけど」
     そう言って、男が困ったように作業着の腕を組み首を傾げる。随分と表情豊かな男だと黙って見ていれば問い掛けられた。
    「思い出したいか? お前の事、ここの事」
     間髪入れずに深く頷いた。思い出さなければ、という焦りはまだ胸の内にあった。自分の返答に男は呆れたように深くため息つき、諭すように話し出した。

    「そんな思い出してぇか。ろくな事無いぜ、多分。
     きっとお前はこの先も沢山抱え込んで、死ぬまでひとり戦場から離れられないし、なんなら死んでも戦い続ける事になるかもしれねえ」
     このまま、忘れたまま、戻っても構わないんだぜ。
     そうしたらきっとお前は俺が引っ張りこんだ運命なんか一緒に歩かなくて済む。結婚して、子供作って、親父になって爺さんになって、ささやかな幸せとかいうやつも手にできるかもしれねえぜ? 戻れなくて死んだって、思い出してあんな運命背負うよりマシかもしれねえ。
     ……寂しいだろ、だって。そんなん。

     背中のフェンスに寄りかかりこちらを見つめて訥々と語りかけてくる男の声はいっそ優しかった。無理に思い出さなくてもいいと、その方がいっそ自分には幸せかもしれないと、こちらを思って言っているのもわかった。
     わかりながら、首を振った。
    「思い出せないが……俺は一度はお前と同じ運命とやらを選んだんだろ」
     なら、思い出したい。自分の事を。お前の事を。
     たとえお前が言うようにささやかな幸せとは程遠く、つらい運命でも、俺が選んだのはそれなんだ。
     男を見返してそう答えながら、不思議と確信があった。本当にそうだったとして、俺はきっととっくの昔に腹は括っているのだ。だから思い出さない道は無い。それに。
    「……それに、きっと寂しいのは、お互い様だろ」
     揶揄う様な笑みでそう言ってやれば、参ったなと男は困ったように苦笑してまた頭をかいた。
    「忘れてても、変わんねえんだもんな、お前」
     小さくそう呟き、そして手を伸ばせば触れる距離まで近付いてきた。男の顔をよく見ようとすればわずかばかり目線が下で自分の方が背が高い。うっすらと顎や鼻の上に古い傷があるようだ。
    「まったく、嫌んなっちまうよな。何処までも同じでちぐはぐで、鏡合わせかってんだよ、なぁ?
     ……お前の顔にまで傷付けて揃いにするこたねえじゃねえか、折角モテそうな優男だったのによ」
     そう言いながら男の手が自分の顎や鼻の上を優しく、そっと撫でていった。そうか、自分の顔にはお前と同じような傷があるのか。触れられる感触もその事実も嫌ではなかった。ふと、瞼が重くなり目を閉じる。
    「改めて考えたらいっそ気味悪ぃよな。スピリチュアルがどうとかそうじゃなきゃホラーかなんかみてえでよ」
     温かく少し荒れた肌の感触が離れていくのを追い掛けるように瞼を開けば、苦しそうな嬉しそうな寂しそうな様々な感情を綯い交ぜにして笑うような顔が自分を見つめていた。

    「……それでも、お前がまだそこを選ぶなら、俺にはお前しかいないんだ。離れてたって」

     隼人。


     ……りょう。
     ガクンと、落ちるような衝撃。闇に閉ざされた視界。呼びたかった名前は音にすらならなかった。震えるように唇が動いただけで。
     鈍い意識と指一本動かすのもままならない鉛のように重い身体。張り付いた瞼を引き剥がすように持ち上げる。
    「意識が戻りました」「信じられない」周囲から聞こえる慌ただしい声。規則正しい心電図の音。機械を取り付けられた自分の呼吸音。
     何故あいつの名を口にしようとしたのか、今となってはわからなかった。

     まだ、同じ道の上にいる。きっと。離れていても。

     漠然とした思いは、寂寥感と共にまた胸にあった。
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    Replies from the creator

    ナナシ/ムメイ

    DOODLEアイサガ軸のチェンゲ竜隼。バレンタインとかホワイトデーとかの時期を盛大に逃したけど今出さないと完全に忘れるだろうので。
    適当に色々ぼかしてあるので、「アイサガ隼人の好物はエネルギーバー設定」だけ知ってればチェンゲで読めると思います。(そもそもチェンゲ本編は再会してから時間無さすぎでこんな話やれるはずないのは置いといて)
    好きにしたいだけ今日は元の世界で言うところのバレンタインデーだかなんだか、らしい。
    そんな習慣がこっちにもあるのかと不思議になったが、恋人やら家族やらへの感謝の日みたいなもんがあるって事は、誰かに感謝とか好意を伝えたい人間がそれなりにいたって事だろうし、悪くねぇと思う。

    女からチヤホヤされたいか、と言われれば、性別どうのじゃなく好意を貰えばそりゃ嬉しい。が、好意のフリだけしたご機嫌取りだの媚びだのは昔から遠慮願ってたくらいには興味がねえし、いっそ煩わしい。口にこそ滅多にしねえが。
    もし、愛情の形とか貰えるなら、大事に思う相手からだけで良いし、なんなら貰うより送る方が性に合ってる――それが誰か聞かれたら困るが。

    コートのポケットに突っ込んだままのエネルギーバーを思い出して軽く眉を顰める。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLE1本目→寒すぎて五半をくっ付けたかった。(動機に邪念しかないがまた銀婚式夫婦)
    白狐の毛皮は秋野さんが前に書いたネタから拾いました。手入れすれば長持ちするんだそうで。
    羽織は戦国時代からとか調べはしたけどなんか違ってるかもしれない。

    2本目→でっかーい五右衛門がちっちゃな柘植櫛摘まんでにこにこ半蔵の髪すいてたら可愛いなって

    (言葉遣いは元が割と現代風混じってラフなので細かくやってません)
    ■ 冬の五半╱ぬばたまの動物というのは人が思うより頭が良い。
    息も白む冬の最中、いつの間にやらするりと入り込んだ猫が書き物机の隣に置いた火鉢に背を着け丸まり、ごろごろと喉を鳴らしていることなどもままある。

    しかしまあ、逆に時折、人であっても動物より頭がよろしくないのではないか、と思う時もある。
    半蔵は暫し席を立った間にどこから乗り込んで来たやら、火鉢の傍で身を縮めていたそれに溜息付きつつ呼びかけた。

    「……五右衛門」
    「なんだァ?」
    「冬の間は山越えが危のうてかなわぬから、滅多に来るなと言うたじゃろう」
    熊かと思うて背筋が冷えたわ、と半蔵は帯に忍ばせた短刀を再びしまいながら呟いた。火鉢の前に黒い毛皮の小山が見えた時には本当に熊かと思い一瞬肝を冷やしたのだった。
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    ナナシ/ムメイ

    DONEネオゲ本編後竜隼。
    あの世界の竜馬はどうして研究所離れて、二人は五年間何考えて過ごしてあの後どうしたんだろうとか。

    ネタとしては粗方見終わった直後にはあったんですが、データ二回飛ばした(主な理由)り、書こうとしては原作と根本的な軸や核が色々噛み合わなさすぎることに悩んでこんな時間かかり……。
    原典周りから色々設定引っ張りながらネオゲの本編内容ある程度組み込んでるつもりです。
    ■ もう一度、何度でも五年、という月日は短かったのか、長かったのか。

    ……さっぱりわからねえな。なにもかも。
    そう胸の中で独りごちながら、竜馬は縁側で一人煙を燻らす隼人を眺めた。
    黒いスラックスに白いワイシャツ。ネクタイが外されて見える首元に、今はあの十字架の鎖も無い。

    恐竜帝国の再侵攻、そして六年近くに渡っての戦いの決着からしばし。
    あの日、あの瞬間、中天で輝いていた太陽の代わりのように月が静かに秋の夜闇を照らしていた。
    山中にあるこの烏竜館は、今は自分達以外に人もおらず、まだ手入れの行き届いていない庭の草むらからは澄んだ虫の声が響く。
    長い脚を持て余す様に片膝を立てて縁側に腰を引っ掛け柱を背に寄り掛かる隼人の姿に、竜馬は不意にいつか早乙女研究所のバルコニーで手摺に腰掛けていたその姿を重ねた。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLERe:ハニー小ネタだけど竜隼。そういえば二十周年なのかと気付いたので、記念的に。
    資料未所持で本編だけ見て書いてるのでなんか違っても許して。

    映像や脚本も良かったし単純にポップでキュートでビビッドで派手で外連味があって面白かったけど、「ダイナミック漫画作品における戦闘シーンのお顔これだー!!」感があってそういう所もとても好きです。
    今度こそ二人共に並んで生きてくれ、みたいな祈りを感じるところも。
    ■ CROSSING《Re:ハニー》前半→ハニーとなっちゃん
    原作は漫画版しかきちんと見てませんが、例えご都合主義でも違う世界と人々であってもあの終わり方は嬉しかったです。
    「友」は少なくとも石川ゲッターロボでは本当に愛した存在にこそ向けられる言葉なので、そのニュアンスで。
    後半→「早見」と「誰か」
    説明めんどくさいから極端に簡単に言うと、Re:ハニーはハニーだったけど同時に石川ゲッターロボだったし、早見は竜馬寄りで隼人混じってたよね?って前提で、なら早見にも相方いてもおかしくないよね?っていう。


    =====


    「あのね、なっちゃん」
    「なに、ハニー?」
    「えへへ、んーん、呼んでみたかったんだぁ」
    「なによ、にまにましちゃって。ほら、片付け終わってないじゃない」
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