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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声17

    ##宇奈七

    その次の日のことだ。
     ホテルの部屋に付いていた固定電話が鳴った。受話器を取るとフロントからで、俺に電話が来ているから繋いでもよいか、とのことだった。
     依頼者との連絡にホテルの電話を使う契約はしていない。日本には俺の知る人間もいない。「人違いでは?」と尋ねると、相手はワカモト・カオリという俺の知り合いだと名乗っているという。俺は尚も躊躇っていたが、長い金髪の女性だと聞かされるとすぐに承諾の返事をした。
    「まあ、なんて不機嫌なお声。もしかして、寝起きでいらっしゃった?」
     何の用だ、という俺の言葉に対する返答である。相変わらず甘ったるい声をしていた。
    「ちょっと、困ったことになっていますの。あなた、とってもお強いから、力になってもらえないかと思いまして」
     話を聞くと、またしつこくあの中年の男に追われているらしかった。それを追い返して欲しいというのだ。
     殺しではない仕事は受けないことにしていた。相手が生き残れば、俺の名前や身元が割れる可能性が強まる。殺すのではなく、追い返すだけだというのなら、俺よりも警察などの方が適任だろう。
     そう答えようとしたときだった。
    「それとも……あなたには、実力を存分に発揮できるお仕事を頼んだほうがいいのかしら」
    「……何だと?」
     結果、彼女を追っていた男は死んだ。大型トラックの前に突然飛び出してはねられ、全身を強く打って死亡。運転手は業務上過失致死の疑いで逮捕。──表向きには、そのように処理された。
    「素晴らしいわ。あなた、こうして取り繕うこともできるのね」
     ホテルのカフェでテレビを見ながら、彼女は手を組み合わせてうっとりと言った。
    「ねえ、是非お礼をさせてくださいな。特別な思い出を作ってさしあげてよ」
     彼女に握られた手を、俺は軽く力を入れて振り放した。
    「報酬は金で受け取る主義だ。払えないなら、今後もう二度と俺に接触するな」
     俺は立ち上がり、カフェを出た。
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    まろんじ

    PROGRESS星の声12目が覚めた後、医師や看護師たち、コーキノとマヴロから聞かされた話を統合すると、こうだ。
     俺は、アスプロが死んだと聞いた途端、何も言わずにナイフを取り出した。最初は胸を、そして腹や脚や、顔や首、とにかく体中をナイフで刺して傷つけたという。
     途中から何事かの言葉を泣き叫んでいたが、コーキノとマヴロは俺を抑え込むのに必死で、よく聞き取れなかったと言っていた。「オル──何とか、と言っていたが」とコーキノが何か聞きたげにこちらを見ていたが、俺はただ俯いていた。
     この自殺未遂により、俺は視野の半分ほどを失っている。見えている部分にも負担がかかり、何十年か後には見えない部分の方が多くなる可能性が高い。
     それから──。
    「子宮の損傷が激しく、手術を行いましたが……」
     腹の子は死んだ。いや、俺が殺した。
     俺は黙って話を聞き、それから感謝の言葉を述べた。医師たちが、俺の病室を出て行った。
     ──どうして、生き残ってしまったのかな。
     そう思わないではいられなかった。
     自分だけ──一人だけ生き残って、何の意味があるというのだろう。四騎士はあの任務を最後に解散が決まっていた。俺の、本来ならば俺と 1375

    まろんじ

    PROGRESS星の声17その次の日のことだ。
     ホテルの部屋に付いていた固定電話が鳴った。受話器を取るとフロントからで、俺に電話が来ているから繋いでもよいか、とのことだった。
     依頼者との連絡にホテルの電話を使う契約はしていない。日本には俺の知る人間もいない。「人違いでは?」と尋ねると、相手はワカモト・カオリという俺の知り合いだと名乗っているという。俺は尚も躊躇っていたが、長い金髪の女性だと聞かされるとすぐに承諾の返事をした。
    「まあ、なんて不機嫌なお声。もしかして、寝起きでいらっしゃった?」
     何の用だ、という俺の言葉に対する返答である。相変わらず甘ったるい声をしていた。
    「ちょっと、困ったことになっていますの。あなた、とってもお強いから、力になってもらえないかと思いまして」
     話を聞くと、またしつこくあの中年の男に追われているらしかった。それを追い返して欲しいというのだ。
     殺しではない仕事は受けないことにしていた。相手が生き残れば、俺の名前や身元が割れる可能性が強まる。殺すのではなく、追い返すだけだというのなら、俺よりも警察などの方が適任だろう。
     そう答えようとしたときだった。
    「それとも……あなたに 813