【くわぶぜ】風の朝【リクエストSS】はっはっはっはっ。
自分の軽快な呼吸音が、耳の奥へと響いてくる。
聞こえるのは自分の規則正しい呼吸と、穏やかなさざ波、それからわずかな海鳴りだけだ。
春の兆しの見え始めた日本海は穏やかで、早朝のうっすらとあけかけた朝日を受けてゆらゆらと揺らめいていた。
そんな海岸を俺は軽快に砂を蹴って走っていく。スピードは速くなく(桑名に言わせればバカ速いらしい)、春に向かって進みゆく周囲の景色を楽しみながらの早朝ランニングだ。
2kmほど続く長い海岸を2往復すれば約8km、休日の朝のモーニングルーティンにはうってつけと言えるだろう。
とはいえ、桑名には朝からこのコースはきついらしい。今日も一緒に走り出したものの「もう君にはついて行かれない!!」とか、別れ間際の女子のような捨て台詞を吐いて、1kmほど一緒に走っただけでスタート地点にしている海水浴場へと戻っていってしまった。
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