葛之葉雨彦:晴眼:雨彦さん誕生日祝い。ライブ中の視界の眩しさについて 結局、混ざり合えば黒くなる。
幾ら身を守ったところで一日中掃除をすれば汚れの臭気は纏わりつく。爪先がはみ出る布団に横たわって目を閉じれば見続けてきた汚れだけが思い起こされる。
清め、払い、片づけて。
それでも身に残る汚れが溜まれば、いずれ。
(見るもの全てが汚れて見えるかもしれないな)
盲になってしまえば掃除屋としての価値はなくなって、己の生きる意味も失われる。
そんな日を慄れながら、夜闇が去るのを布団の中で待ち続けていた。
「雨彦!」
「雨彦さん!」
白くちらつく視界に、二人の顔が見えた。
耳鳴りのように響き渡る歓声が身を包む。巨躯すらちっぽけに思わせるほど広大な会場を埋め尽くす人並みと対峙する雨彦の全身に、光が降り注ぐ。
とりどりの照明、スポットライト、サインライトのきらめき。
混ざり合った色彩は、
(――)
白く、清らかな光。
二人の視線と共に観客の視線も雨彦に注がれ、スポットライトは雨彦の顔に当てられる。
「――おいおい」
眸を細めて低く声を漏らせば、わ、と客席から声が上がる。
「これじゃ、お前さんたち以外何も見えなくなっちまう」
手を挙げて応える雨彦の視界を埋める白は、暁天を思わせる煌めきを持っていた。