Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    真央りんか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 41

    真央りんか

    ☆quiet follow

    神ミ 口移しバレンタインキス

    二十年前で十代男子でこの性格なら、バレンタインに自分でチョコレートを買うなんてできなかった。
    今の時世で今の年齢で今の職業で、なんの躊躇いもなく自分で買えるようになったのはいいことだ。

    神在月の家のテーブルの上にいくつも積まれたチョコレートの箱は、どれもバレンタイン用の商品だった。
    「ミッキー、食べてっていいよ。ていうか、全部あけちゃってるから、生チョコとか食べちゃって」
    正直使う当てを明確に思い浮かんでいないものの、年に一度しか出回らない商品を資料としておさえておきたかった。
    かわいいものからゴージャスさを感じるものまで取り揃えられたパッケージたちは、もれなく一度開かれて、中身もすべて撮影済みだ。
    「じゃあいただく」
    普段だったらまず買わないラインナップのなかでも、とりわけ奮発した小ぶりな箱を取って、三木は蓋をあけた。
    三木がピックを手にしてそこで動きを止めたのを、画像を確認していた神在月は気付かなかった。

    「そういえば、おまえ、前にあれやりたがってたな」
    「んー、なに?」
    「十一月」
    「?」
    「十一日」

    カッと神在月の顔に血が上った。
    昨年の十一月十一日。その日は、ポッキーを買ってきた。買ったときには、特に何かを目論んでたわけではない。その商品の日だと目に留まったのが意識に残っていたところに、ずらっと棚に展開されていただけだ。
    ただその日はたまたま三木が来る日で、三木がポッキーの箱を持った瞬間、神在月の思考はポッキーゲームに取り憑かれた。めちゃくちゃに意識しながらも言い出せず、そわそわもじもじ挙動不審が続いたあと、いろんなことがあってポッキーは結局どちらの口に入ることなく、なくなってしまったのだった。
    「いや、もう、忘れて」
    「…忘れてほしいことなんだな」
    「だって、あれ俺すごくかっこわるい」

    言えなかったことも、言えないのをずっと見守られていたのも

    思い出して身をよじっていると、ふーんと答えた三木は少し間を置いてから「シンジ」と呼んだ。
    見れば、ピックに一粒刺して自分の口の前にかざし、

    「やるより見るのが好きなんだっけ、女の子の? ぷっちょ?」

    そういって、チョコレートをくわえてピックを引き抜く。
    見せつけるように唇に挟んだまま、にっと目元が笑う。
    「食べ、たいです、み…きカナエくんの、チョコ」
    神在月の欲望がそのまま呻きとなって洩れると、
    思わずといった感じで三木の口が笑いの形に広がる。笑った息が洩れる。
    チョコを落とさせまいと神在月は一気に距離を詰めて、口を重ねた。
    くわえるように開いた口からチョコを押し込められて、一緒に入ってきた舌を絡めあえば、柔らかなチョコレートは体温であっという間にとろけていく。頭の芯がしびれるような香が口の中に満ちる。フルーティってこういうのかと、ふくよかな香に思考を浸す。攻守反転でねっとりとする残りを押し返し、三木の口の中もチョコまみれにしてやると、唾を飲み込むゴクリとした音が聞こえた。
    そうして互いを行き来しあう内に、チョコはすっかりなくなって、香ばかりが残るころ。吐息の合間に
    「えっち」
    と三木が笑うように囁く。
    「君だよ!」
    と心の中で神在月は叫び返した。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🍫🍫🍫🍫👏👏👏🍫🍫🍫💯❤❤💯☺🙏🌠🌠🌠🍫💒💯💘🌠🌠🌠💖💖💖🍫🍫🍫🍫🍫🌠🌠🌠🌠🌠
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works