『忘れていったものは』 授業が全て終了し下校を告げるチャイムが鳴るとまずはと慣れた手つきで各教室のカギが掛けられている棚から化学準備室のカギを取り出すと足取りも軽く一般的なジャージですら高身長で均整の取れた身体の持ち主が着ると見栄え良く映る。
担当教科は体育であるエルヴィンだったがすっかり通い慣れ本来の部屋の主よりも先に慣れた手つきでカギを開け化学準備室へと入っていく。
何かしらの準備室と聞くと教科専用の教材が乱雑に置かれどちらかというと倉庫のようなイメージがあるがここは家主が掃除好きということもあるせいか以前は物置きだったかもしれないが今では他の教室と見劣りしない綺麗さである。
きちんと並べられた教材。広くはないが自分用に置いたパイプ椅子に腰かけ薬品もあるのだろうがそれよりも仄かに香る紅茶の匂いにささくれそうになる心も落ち着く。
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