特別なきみ 昼飯も終わって夕飯までのちょうどおやつ時。何か焼いてやろうか、なんて思案しながら呑気にパントリーを物色していたところに、幼いけど凛とした声が響き渡った。
「ネロ」
「なんだ、リケ。おやつねだりに来たのか」
「大事なお話があります」
「今?」
「ええ」
キッチンの中にある作業台に備え付けのスツールにちょこんと行儀よく腰掛けて、リケはこっちを真っ直ぐ見る。その真剣すぎる眼差しを適当にあしらうことも叶わず、なんかねえかなと急いでその辺に視線を彷徨わす。
「あ、リンゴあるぞ。ちょっと待ってな、角ウサギにしてやる」
「おやつをねだりに来たのではありませんが、剥いてくれるならいただきます」
向かいに腰掛けて果物ナイフでするするっと剥いたリンゴを皿に盛って出してやると、それを両手で持ったリケが小さい口でしゃり、と齧る。
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