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    mame

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    #絶対に被ってはいけないバソプ千ゲン小説
    罰ゲーム、選曲は三ツ星力ルテットです
    時間軸は石油探索中

    石神村と旧司帝国の情報共有のための定時連絡は役割としては決まっていない。
     一日の作業が終わり、残すは就寝のみという時間。数分間のみの電波を介してのやりとりをする。それだけなので、石神村は千空が自然と固定になったとしても、農耕チームの方ではわざわざ決めなかったのだ。
     だから最初は気にしていなかった。しかしこうも連絡係としてある人物が出てこないとは思ってもみなかったので、千空は少しずつ少しずつ不思議な感覚に蝕まれていった。
     大樹、杠、仁姫、カセキ……と毎晩電話を天文台に持ち込んで石油探索チームで通話を担当する千空の相手は変わる。みんな楽しそうに農耕チームの情報や不足している物資のことなどを千空に伝える。情報の取りまとめがあまりに秀逸で、間違いなくあの自称ペラペラ男が噛んでいることがわかるのに本体を掴めない。ついに本日、通話相手がスイカになったことにより千空はこれがゲンの意図的なものだと確信を得たのだった。理由はわからないが、ゲンは千空との接触を絶っている。
    「なんなんだアイツ……」
     眉間にシワを寄せぼそりと呟いた音が通話相手のスイカに届いたらしい。言葉自体はわからなかったようで聞き返され、なんでもないと千空は低い声で答える。
     気になるからと言ってなんだかわざわざゲンはどうしたと聞くのもおかしな話だ。なにせ連絡係は決まっていない。悶々している内に、スイカがいくつかの報告を始めた。しっかりした説明に受話器を持つ千空の口元も自然と緩む。おそらく伝達を任された情報を全て伝え終わったスイカは、そこでようやく我慢していたのか雑談をウキウキとした様子で始めた。それなりにスイカから懐いてもらっている自覚が千空にもある。はしゃぎながら千空に今日あったことを話すスイカに千空は静かに相槌を打ってやった。天文台の天井から覗く夜空には何光年も昔の光が瞬いている。今日もよく晴れていた。明日もきっと晴れるだろう。
    「千空はこっちにはこないんだよ?」
    「ー、特に予定はねえが……なんだ、スイカ様は困りごとでもあったか?」
     話が一通り終わったところで、不意にそんなことを言われた。尋ね返せばううん、と声が返ってくる。きっと受話器の向こうにいるスイカの被り物は左右に揺れただろうなと千空は思い描き薄く笑みを浮かべた。
    「特別なことはないんだよ? みんないつも通り……でも、ゲンはいつも通りじゃないんだよ」
     突然出てきた目当ての名前に、千空の肩が跳ねた。なんとなく決まりが悪くなるが、天文台には千空しかいない。
    「……なんか気になることがあるのか、スイカ先生は」
     そんな自分を誤魔化すように千空はスイカに尋ねる。ゲンがいつも通りではないとはどういう意味か。なにかゲンの身にあったのか、と思うがおそらくそうではない。少し落とされたトーンは心配の音色というよりも、スイカ自身から出る寂しさのものだ。
    「千空とゲンは、ずっと一緒だったから、千空が隣にいないゲンが変な感じがするんだよ」
     電波に乗ったスイカのストレートな言葉がすとんと千空の体のどこかに落ちた。
     きらりと千空の頭上で、自力で光るいくつかの星が己の存在を主張する。

     ああ、そうか。これはゲンがいなくても、ゲンと話さなくても、それでも滞りなくこの石の世界がうまく回っていることへの違和感か。

     なにせ司帝国との全面対決になるとわかった時からこの方、ずっとあさぎりゲンは千空の隣にいた。約束などなくてもそれが当たり前だった。ーー当たり前と錯覚していた。当たり前ではないとようやっと千空は理解した。ゲンが千空のそばを選んでいたのだ。
     これは厄介なことになったなと千空は自嘲する。つまり接触を絶たれているということは、アイツの便利っぷりにあぐらをかきすぎていた千空へのストライキの可能性もある。そうだとしたら非常にまずい。科学王国リーダーとしても、封印していたはずなのにたったいま顔を出してしまった純情少年としても。
    「そう言ったら」
    「言ったのか、メンタリストに」
     話を続けるスイカに千空は目を丸くする。思わず真っ直ぐ質問してしまい、慌てたスイカにしまったと思う。
    「ダメだったんだよ!? 聞いたゲンもすっごく変な顔してたからやっぱり失敗しちゃったんだよ……」
    「いや、いい。大丈夫だ。むしろ言ってくれて助かった」
     敏感で聡い子だ。そんなスイカに急いでフォローを入れながら千空は思考回路をフルで働かせ始めた。変な顔、とはなんだ。ストライキとか、そういう類のものではないのか。
    「スイカ、お役に立てたんだよ? ゲンが変な顔した理由がわからなくて、千空ならわかると思って、だからこっちにくる予定はないか聞いたんだよ」
    「……」
     なるほど、スイカは自身の投げた話題のゴール地点に綺麗に着地してみせた。うまくゴールにたどり着けていないのは千空だけだ。
     そこでふと思う。もしかしたら、ゲンもそうなのかもしれない、と。あるいは、理解した上での駆け引きか。ぶん回している思考回路を持ってしても、考えるだけ無駄だと悟った。なにごともやってみなければ結果は未知なわけで、どのみち避けられているのだ、捕まえなければどうなるかわからない。
    「スイカ、頼みがあるんだが」
    「うん、なんだってお願いして欲しいんだよ!」
    「明日の連絡係、ゲンを使命してくれ。夕方くらいからフリーの時間作るように言ってくれるか」
    「わかったんだよ〜!」
     就寝前の挨拶をしてスイカとの通話を切る。電話を片付けてから、そっと手作りの天体望遠鏡に手を置いた。そのまま頭上を見上げる。星の位置が動いている。答えをうまく出せない千空がいても勝手に時間は進んでいくのだ。
     思えば出会いもきっかけも、千空とゲンはいびつだった。それを互いに受け入れてしまっていたから、いまこの状況下になって歪さが浮き彫りになった。ならば、一度フラットにして、再び構築してもいいのではないか。
     隣にいるのは当たり前じゃない。別に寂しくもない。仲良しこよしをしたいわけでもない。それでもやっぱりゲンがいないと違和感を覚えるので、明日は定時報告の通話をしたら、ゲンとなんでもない話をしてみようと千空は思った。
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    「なんなんだアイツ……」
     眉間にシワを寄せぼそりと呟いた音が通話相手のスイカに届いたらしい。言葉自体はわからなかったようで聞き 2557

    mame

    DONE #絶対に被ってはいけないバソプ千ゲン小説
    イメージ「真っ赤な空を見ただろうか」
    真っ赤な空を見ただろうか





    「夕日が赤くてきれいだな、で俺は終わってきたわけだけど、千空ちゃんは夕日が赤いのはなんでだろうってなってきてるんだよね~……つくづく別の生き方をしてきたんだなあって思っちゃうね」
     赤色に照らされた横顔はいっそ清々しささえ滲んでいて、そのとき千空はなにを返せばいいかわからず、潮風に吹かれるその横顔をただ眺めていた。ゲンだったらなにか返せたのだろうな、なんて思いながら。



     外にはアスファルトの道が通り、その上を車が走る。車道の端には街灯。建築物には企業が入り、飲食店ができ、住宅街も出来た。あちこちで平らにならした土地の争奪戦が起きては、高層ビル建設の噂が飛び交う。物流の面で陸路だけでなく、空路も海路も早々に整えられた。政界関係者や専門家が多く利用しているが、民間人が使いだすのも時間の問題だろう。
     世界各地で復活者が日に日に増え、日々新しくも懐かしい物が増えている。まだまだ三七〇〇年前の風景には届かないが、それでも石化前の科学知識も技術も復活した今、あとは現実が追い付いてくるだけだ。
     きっと表現するならば『復興中』だ。世界を復興させるための土台 4794

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