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    mame

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    mame

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    出ロデ 遠距離恋愛中の付き合ってるプロヒ×パイロット

    「身体に良いものは値段が張るんだよな」
     スーパーでカートを押す出久の隣で、ロディがそんなことを言った。ロディの視線はというと陳列棚に並べられたオーガニック食材へ向けられている。そのうちのひとつの野菜を手に取り、眉間に皺を寄せるので出久も足を止めたロディの隣で足を止め、ロディの手の中にある野菜をみやる。
    「……そんな意識で見たことなかった」
     一見して普通の玉ねぎであるそれは、入店直後に山積みにされていた玉ねぎの三倍の価格で、出久はなるほどと思う。ポップを見ると無農薬、通常の玉ねぎの5倍の栄養価と謳われていた。
    「俺もこの職を本気で意識し始めてから健康とか栄養価とか気にし始めたから、気付いたのは最近だけどな」
    「確かにそうだよね、オーガニックて手間暇かかってるもんなあって思ってたから自然に受け入れてたけど、身体に良いものを作るためにそういう手間暇をかけてるわけだから値段とその兼ね合いはイコールになるのか」
     ロディの横顔にそう言えば、ロディはこくりと頷いた。
    「まあ安くて身体に良いものもそりゃあるし、食材も作り手次第でどうにでもなるけどさ」
     玉ねぎを元あったところへ戻し、ロディが再び歩き出す。出久もそのロディの隣を歩いた。ちなみにカートにのってるカゴの中には玉ねぎが入っている。もちろんと言ってはなんだが、山積みされていた方だ。
     ロディが作る料理は美味しい。そして彩りも豊かだ。
     カゴの中には玉ねぎの他にもすでにトマトにブロッコリー、そして卵なども入っていて、改めて考えてみたら効率的に栄養をバランスよく取れる食材だった。
     パイロットという職業は身体検査が厳しい、というのはロディに聞いて初めて知った出久だ。確かに操縦中になにかあっては大変なことになるので、考えてみれば当たり前と言えば当たり前のことだが、言われなければその当たり前にも気づかないということはよくある。だから食事の彩りを出久がすごいね、と言った時にパイロットだしなと言われて目から鱗だったのだ。お金に余裕が出てきたから気をつけられるようになってきた、とその時ロディがさらりと言っていたのをなんとなく聞いていたが、いま、本当の意味でやっと理解した。なるほど、確かに身体に良いものは高い。余裕があるからこそ身体に良いと言われる食材をわざわざ選んで買えるのかもしれない。
     鮮魚売り場にやってきたロディは棚から、広告の品! と赤いシールが貼ってある白身魚が入ったトレーを手にとる。賞味期限やグラム数なんかを真剣な眼差しでみて、出久が押すカートに入れた。
    「そもそもここなんかに売ってるやつは、検査もクリアしてきてる食材だし、安くても安心だけどな」
    「確かに。安かろう悪かろう、ではないよね」
    「ああ。……ただ」
    「うん」
    「安くて身体に悪いもんってうまいんだよな……」
     鮮魚売り場を過ぎて、ロディは常温の陳列棚があるコーナーへ足を踏み入れた。ずらりと並んだ袋麺のコーナーだ。顎に手をやり、先程鮮魚売り場で見せていた表情よりもさらに真剣に5袋1パックの塩ラーメンを見つめ、その隣にある期間限定という塩とんこつラーメンを見つけ、眉間に皺を寄せた。食品を扱う場所だから、とロディの髪の毛に隠れているピノがこっそりとロディと同じように吟味するように袋ラーメンを見ている。そんなロディとピノに出久はふにゃりと笑うしかなくて、自身の職業も健康に気をつけなければならないのをわかっていながら、出久は「ねえ、ロディ」と声をかけた。
    「キャベツ入れたらどうかな」
    「採用。アジタマ、速攻で作ろう」
     どうやら出久の提案はロディの中で名案になりえたらしい。細く長いきれいな指でぴっと出久を指差してにやりと歯を見せたロディの頭の中はすでに帰宅後の調理手順が組み立てられているようだ。
    「あ、あの塩味のやつ? 僕あれ好きだなあ……って、え? 今日ムニエルって言ってなかった? この魚どうするの?」
     カゴの中にある白身魚のトレーを手に持ち、出久が首を傾げるとロディの唇がひき結ばれる。
    「……明日の朝メシにする」
     どうやらロディの中で苦渋の決断になったらしい。それを出久は、あははと笑って、どっちを買うの? とロディが悩んでいた二種類の袋麺を手に取る。両眉の間に深い深い溝を刻んだロディが、こっち、と期間限定の袋麺を指さした。
    「ふふ、じゃぁ今日不摂生する分、明日の朝の味噌汁にはいっぱい野菜入れよう」
    「味噌汁って便利だよな……何入れてもいいって日本人の大発明だって……」
    「それもそんなふうに考えたことなかったよ」
     いつもの塩ラーメンを棚に戻して、ロディが選んだ袋麺をカートに入れる。またカートを押し始めれば、今度はロディが出久のあとを追ってきて横に並んだ。
    「キャベツあったっけ」
    「知らねえよ、デクんちの冷蔵庫だろ」
    「ロディのが把握してるんだよね」
    「おいおい、少しくらい自炊しろよな」
    「ロディがいる時おいしくて身体にいいもの食べ溜めしてるから大丈夫」
    「今日ラーメンなのに?」
    「身体に良くはないかもしれないけど、食べたい時に食べたいもの食べるのは心にいいと思うんだよね」
    「言えてるな」
     ふはっと吐き出す息と一緒にロディが出久の隣で笑う。向かうは野菜コーナー。山積みにされたキャベツ売り場で、一番身体によさそうなキャベツをふたりで選ぶのだ。
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