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    mame

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    爆轟小話(11/7、パス外しました)
    ※プロヒ
    ※同棲軸
    ※劇場版3のネタバレを若干含みます

    10/31イベント無配 大きな紙袋を持って帰ってきた轟に、爆豪はなんだそれと言いかけてやめた。有名海外旅行会社のロゴが大きく入っていたからだ。ここのCMに起用されたと先日言っていた。今日は撮影だったのだろう。

    「なんかパンフレットいっぱいもらったんだ」
    「ハッ。押し付けられたの間違いだろが」
    「そうともいうかもしれない」
    「素直に認めろや」

     本日爆豪は早番だった。そんなわけですでに風呂も夕食も済ませてある。轟も撮影のときに弁当が出たらしく、じゃあ軽く飲むかと轟がシャワーを浴びてくるのを待って、グラスと瓶ビール、先日遠征で行った地方の珍味なんかを出してリビングのローテーブルを二人で囲んだ次第だ。
     乾杯をした直後に起きっぱなしにしていた紙袋をずるずると引き寄せ、轟が中身をテーブルに広げた。それらは4ページから12ページくらいの、旅程金額がずらりと並べられた小冊子だ。20冊くらいはあるだろうか。

    「どれだけ持って帰って来とんだ……」
    「控室に何種類も置いてあってな。眺めてたら担当さんが持って帰ってくださいってどんどん渡してくるから」
     
     爆豪が呆れ混じりにそう言えば、轟がむっと唇を尖らせながらそんなことを返してくる。どれだけ物欲しげな目で見ていたのだろうと轟を一瞥するが、轟の視線はすでにパンフレットに注がれていた。
     これほど持たされるということはおそらく興味津々の表情をしていたのだろう。轟のそういった顔は庇護欲を掻き立てられるのを、おそらく爆豪がこの世で一番知っている。
     轟が広げたパンフレットに視線を投げると、メジャーどころを全て押さえてきてるのではというレベルで網羅されていた。
     ニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、イギリス、北京、韓国、スペイン、シンガポール、タイ、オーストラリア、エトセトラエトセトラ。

    「爆豪と海外旅行してみてえなって思いながら見てたら、こんなことに……俺たちオセオンしか行ったことねえだろ」
    「……轟テメー、あれ一回目の旅行にカウントしてんのか」
    「まさか。え、爆豪はカウントしてんのか」
    「してねェわ! あんなの旅行にカウントしてたまるか!」

     訝しげな顔でこちらを見てくる轟にぐわっと歯をみせ言い返すと、轟が至極真面目に「そうだよな」と頷いた。そうだわ、クソが。
     轟の指先が一冊のパンフレットをつまみ上げるのを、爆豪はビアグラスを持ちながら眺める。持ち上げられたパンフレットにでかでかと書いてあるカタカナは「オセオン」だ。
     表紙に使用されている写真は大きな橋。オセオンのシンボル的なその橋を、轟も爆豪もオセオンには行ったものの全く馴染みがない。爆豪の幼なじみはそこで逃走劇を繰り広げたらしいが、そんなこと知ったこっちゃないわけで。
     轟の瞼が伏せられ、色違いのまつ毛が視界に入った。ぺらりと紙が捲られる音がテレビもついていない静かな部屋にひびいている。
     ビールを口に含めば苦味が口の中で僅かに弾けた。轟は鮭とばを咥えながら、パンフレットから視線をはずさない。そしてゆっくりと小さな口を開いた。

    「とんでもない海外ミッションだったけど、いま考えてみたら爆豪と二人だけで泊まりがけってのは始めてだったなって思って。緑谷たちを追いかけるための電車移動だったけど、なんだかんだ貴重な体験だったよな」

     懐かしさを滲ませた声色に、爆豪はテーブルに頬杖をついた。パンフレットに載っている観光列車に気付いて、ふたりが乗ったものとは違うが、たしかに列車にあんなに乗ったのも、轟とふたりきりの時間を過ごしたのもあれが初めてだったと思う。
     事件解決後、ヒューマライズの本拠地から病院へ運ばれた際、轟と緑谷(と、現地の一般人)のボロボロ具合をバカにした爆豪であったが、爆豪自身も満身創痍で、結局退院許可が出てすぐに事件の後処理をしたら帰国になってしまった。それからすぐにインターンが再開して、大局がはじまり、じっくり轟とオセオンについて話す機会はなかった。
     しかし、あの時間は、案外悪くなかったのも事実で。

    「まさかあんときゃテメーとこんな関係になってるとは思ってなかったけどな」
    「はは、たしかに」

     爆豪も鮭とばを一本とり、口に入れる。入れた時点で良い塩味に気を良くして、前歯でちぎろうとすればすぐに千切れないことに僅かに目を見張る。硬い。間髪いれず轟が「かてえよな」と言ってきたのですぐに奥歯で噛みちぎってやった。

    「三泊四日」
    「え?」
    「正月休みの振替、毎年あんだろ。いけて三泊四日だ。事前に海外渡航の申請入れりゃそれなりのとこいけんじゃねえか」

     鮭とばをがじがじと噛み奥歯ですりつぶして、ビールを飲む。パンフレットから轟がようやく視線を上げ、爆豪を凝視する。色違いの瞳がちかちかと輝く。まるで幼児のような表情に気を良くして、爆豪は轟の空いたグラスにビールを注いでやったのだった。
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