人曦×人魚澄③「人間が術を使うなんて初めて聞いた」
「?人魚も術をつかうのですか?」
「あぁ。俺たち人魚が使うのは水に関する術だ。水流を操ったりとかな。一応、例外に近いが変化もできるぞ?今は怪我のせいか、簡単なものしか使えないがな」
ほら、と言って江澄が人差し指をくいっと曲げると湖から水が球体になって出てきた。それは江澄の掌の上で魚の形をとったと思ったら彼の手から離れて藍曦臣の周りを泳ぎ出す。やがて魚は鳥となり、羽ばたき始める。鳥は二頭の馬となり宙を駆ける。二頭の馬はひとつに纏まり虎となった。水でできた虎は湖の方へ駆けて行くと魚に戻り、湖へと還っていった。
「凄い…。」
「気に入ったのか?これはな、ほとんどの人魚が修行を始めた頃に習うものだ。こうやって水と自己の協調を行うことで、水をよく知るんだ。」
950