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    遭難者

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    遭難者

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    前に書いたやつを手直ししてアップ。しかし手直しになっていない(笑)
    半年以上の自動翻訳との葛藤により、自動翻訳風文章から抜け出せないでいます。
    日ラジドラのテーマソング聞いて妄想したやつです。

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation

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     窓から入る風が心地よい。

     日が沈むにつれ冷たくなっていく空気は、少し体温の上がった体に最適だ。
     「まさか、こんなことになるとはな……」と考えながら、魏無羨は今日もまた天子笑を口にしていた。

     雲深不知処に二人で戻って来て以来、静室で酒を飲むのは当たり前のこととなっている。
     道侶となったことも驚きだが、あの藍忘機がここで酒を飲むのを黙認しているとは、それどころか時には自ら運んでくるようになるなんて…あの頃の誰が想像出来るだろう。

     天子笑の酒壺を見ながら「ぷっ」と吹き出した魏無羨を藍忘機は不思議そうに見た。

     「…?」

     「いや、この酒とは本当に縁が深いと思ってさ。藍湛と初めて会った時も、俺こっそり天子笑を持ち込もうとしてたなぁ~って。」

     「…こっそりしていたか?」

     「してた!それなのにわざわざ見つけ出してあんなに怒るとは…あー、でも必死に怒ってた藍湛は可愛かったなぁ~」


     当時、徹底して規則を守る藍忘機と奔放な魏無羨とは幾度となく対立し、剣まで持ち出すこともあった。共犯に仕立て上げようした時ですら自身が尺で打たれようとも、魏無羨が罰を逃れることを許さなかった。互いに厄介な存在ではあるのは端から見ても明白で、それでも魏無羨は藍忘機にちょっかいを出すのを止めなかったのを周囲の方が不思議に思っていたくらいだ。そんな周りの疑問など気にも止めず、魏無羨は酒や遊びや様々の誘いを持ち掛けては、ことごとく断わられていた。今となっては良い思い出だ。

     いくら断られようとも、表情ない彼の顔を歪ませられるのは自分の言動だけなことに多少の優越感を感じていただろうか───などと当時の日々に思いを馳せながら、魏無羨は天子笑の酒壺を両手で包み、あの頃の拒絶する藍忘機の顔に見立て、こすり回して微笑んでいる。

     「…今は?」
     
     今は断る事の方が珍しくなった藍忘機が声を掛けた。

     「…ん?なにがだ?」
     
     「…今は可愛くないのか?」

     「……」

     「……」

     「ぶはっ!藍湛っ!藍忘機っお前っあっはは!」

     あの藍忘機の口から『可愛い』などと出てくるとは。その上、彼は質問しているのだ、今の自分は可愛くはないのかと。

     「……」

     「はははっはぁ…あの含光君がっ…可愛くなりたいの?まったく…息できないじゃないかっふはっげほっ」

     笑いすぎてむせかえる背中を夫にさすられ、魏無羨は喉を潤し落ち着こうと酒を口にするも笑いは止まらない。そのことは気にも留めず、首に手を回し、引き寄せ口付けた。いつものように深くしようとするも、込み上げる笑いが勝る様で思うようにいかない。

     「ぷはっ!藍二哥哥お前は可愛いよっ!まったく。こんなに可愛い奴だって知ってるのは俺くらいだよ!………いや待てよ、擇蕪君は知ってそうだし…もしや藍先生も…」

     藍忘機が魏無羨と共に行動するようになってからの変わり様は明らかで、皆を驚愕させたが、人を寄せ付けなかった藍忘機が、今や周りに人がいないことの方が少なくなった。『可愛い』などとは口にするのは魏無羨くらいだが、最近では思追も気付き始めている。

     「…これは藍家の弟子達や姑蘇中にばれるのも時間の問題だな…俺だけが知ってるのも悪くなかったのになぁ……………藍湛?」

     背中をさすっていた手がいつの間にか止まっていた。俯き、髪で隠された顔を魏無羨が覗き込む。

     「…えっ藍湛、まさかあれで酔ったってゆうのか?!」

     目を閉じ、かすかな寝息が聞こえる。 先ほど確かに酒を飲んでそのまま口付けたが、藍忘機が口にした量など、嘗める程度だ。

     「おいおい…どこまで弱いんだ含光君!!さすがにこれは俺が酔わせたんじゃないよな?そう!事故だ!だから……なにがあっても後で怒るなよ?」

     聞こえない念を押しながら、魏無羨の顔がニヤけている。ここからは、自分だけが知る彼が現れる。

     「さて、何をしようか!そうだな~…また何か聞き出そうか。それとも~……」

     あれこれ思案していると藍忘機の睫毛が揺れ、瞳が開いた。 酒が小量であったからか、寝ていた時間が短い。
     焦点が合わないまま藍忘機は机の上の酒壺を持上げて軽く揺らした。自ら酒を飲むことのない彼の意外な行動に、魏無羨は声を掛けるのを止め、観察することにした。
     揺らした酒壺からは音がしない。それがわかると、次はふらふらと歩出す。
     さすがに雲深不知処で壁に落書きやらはまずいと焦った魏無羨だが、酔っぱらいは何やらごそごそと漁りはじめ、外に出る気配はなさそうだった。
     再び歩き始めたその手には天子笑と白い杯を持っており、そのまま窓辺へと向かった藍忘機は白い杯に酒をそそぎ、縁にそっと置く。外に目をやり立ち竦んでいる彼の髪を風が揺らす。美しさに息を呑んだ魏無羨だが、遠くを見つめる彼を見ながら妙な焦燥感に駈られた。

     「藍湛!」

     呼ばれた声に驚き振り返った藍忘機は「…。」何か呟き、先ほど置いた杯を持ち魏無羨のもとに戻って来た。虚ろな瞳以外、いつも通りの無表情だ。

     「なぁ藍湛……なにしてたんだ?」

     「……」

     「なんで酒をあんな所に置いたんだ?」

     「……」

     「教えてよ。質問に答えてくれたら、また俺と遊べるかもよ?」

     虚ろな目が一瞬輝く。

     「なんで酒をあんな所に置いたの?」

     「……ここにいる時はいつもそうしていた。」

     「へぇ…じゃあ何で今日はやめたんだ?」

     「……」

     「藍湛~」

     俯きかけた彼の目を追いかけ、無理矢理合わせる。 答えたく無さそうだが、『遊び』がかかっている。

     「…………もう必要ない。」

     「もうする必要がなくなったのか?」

     「うん。」

     「へぇ…いつからしてたの?子供の頃から?」

     「……違う」

     「そうだよな、そもそもここは酒は禁止だし。じゃあ…1年前?」

     「……」

     「3年前?、5年前?」

     「……」

     「…もしかして…10年ちょい前くらいから…とか?。そうだろ?」

     「…………うん。」

     なぜ天子笑が静室にあるのか、誰の為なのか、今の魏無羨は考えなくてもわかっている。 藍忘機の思い人は酒好きで、天子笑を気にいっていた。
     しかし、何故いない人の為にあんなたくさん隠していたのか。

     ────藍湛は、あのように過ごしていたのだろうか…。『俺』を思っている藍湛はあんな風に見えるのか…

     思いがけず自分がいない時間の藍忘機を見たような気がした。

     藍忘機の腕を引き、抱きしめる。驚き身を引こうとした体を更に力を込めて抱きもどす。


     「逃げないでよ。『俺』が居るのはここだろ?…藍湛…そうやって俺を弔ってくれてたのか?…」


     胸元に顔をうずめると、少し速い心音が聴こえる。魏無羨を思いずっと動いていた心臓の音だ。

     「………違う。」

     「え?」

     「………」

     「………」

     「…弔いとは…違う。」

     「は?」

     「………天子笑の匂いに誘われて、君が現れはしないか…と……」

     言いながら、瞳に光が戻って来た。

     「私は……魏嬰?」

     眠っていた時間が短かったということは、酔っている時間も短い。話ながら徐々に目覚めた藍忘機の胸元に上目遣いに睨むような顔をした魏無羨がいた。

    「魏嬰?どうした?」


     ────感傷に浸っていた時間を返してほしい。しかも今、すごくいい雰囲気だったと思うぞ…。



     「魏嬰?」


     「………ひどいはなしを聞いた。」

     「…?」

     「あの気高い仙門名士の含光君が、まさか罠を仕掛けて、愛くるしい兎を取って食おうとしてたなんて…」

     「?!……そんなこと、した覚えはない!」

     「好物を仕掛けて、俺を誘き寄せて捕まえようとしたんだろ?罠じゃないか!」

     白い杯を指さして魏無羨が言った。

     「…これは?!……」

     指差された杯を凝視し、藍忘機の眼が見開く。

     「なんてこった!!模範になるべき含光君が!罠をしかけたり、そういえば紙銭もくれなかったよな」

     「…それは……」

     「弔ってもくれなければ、あの世で遊ぶ金もくれないなんて!!先祖の僧侶様が泣くぞ?!」

     「っ!?…」

     「はぁ~。まったく……俺が別の世界に行くのも、成仏することもさせたくなかったのか?小さい事件にまで首突っ込んでさ…会えなかったらどうするつもりだったんだ。」

     自分がいない間、一体どのように過ごしていたのか。魏無羨はあえて聞くことはなかったが、気にならない訳ではない。藍忘機が何故どんな事件にも姿を現したのか。美しい手の指先だけ何故こんなにも荒れたのか─────…

     「見つかるまで探すだけだ。」

    魏無羨に『会えなかったら』と言われ、藍忘機の眉は少し動いたが、彼の答えは明確だった。

     「…藍湛…お前なぁ‥‥」

     「それに、君は騒がしい。」

     「…へ?」

     「君はよく人をからかって、驚かして、迷惑をかけて楽しんでいた。禁言術にかかっていても五月蝿かった。君がおとなしくしている訳がない。…必ず見つける。」

     「……ぷっ…ははははは!!確かに!!昔からお前は俺を探しだすのが上手かったしな~見つかって大体怒られるか小言言われるか…あっでも、ちゅーもあったな?」

     「!!」

     思いがけないことを持ち出され、ひるむ藍忘機を余所目に、魏無羨は笑いながら先ほど窓縁に置かれていた白い杯を手に取り、一気に仰ぎに飲む。

     「さぁ含光君!!夷陵老祖はお前仕掛けた罠にかかったぞ!煮るなり焼くなり縛るなり、お前の好きにしてかまわない。」

     一瞬ひるんだ藍忘機だが、魏無羨の言葉を聞き、首筋に顔を埋め抱き締め…かけたが、ピタリと止まった。

     「…魏嬰。確かにあれは……罠だったかもしれないが、私も何か君の罠にかかったような気がする。」

     「はぁ?俺は何も仕掛けてない!かかったとしたら、お前が勝手に俺の魅力に引っ掛かっただけだろ。」

     「それは…うん。確かに。」

     否定する気配はまったくないようだった。

     「藍湛っ…ははははは俺の夫は夫思いの良い夫だなぁ」

     再び動き出そうとする藍忘機を魏無羨は遮り、手を取る。 指先に唇を寄せ、背中に手をまわし、力いっぱい抱き締めて……思い出した。

     ────そういえば、質問に答えてくれたお礼をしていない。次の機会には彼が絶対に勝てる『遊び』をしてやろう!




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