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    妖怪ろくろ回し

    ほぼほぼネタ箱。
    夜叉姫は先行妄想多々。

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    妖怪ろくろ回し

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    せつなととわ(妄想)

    ##半妖の夜叉姫

    *


    「パ……パパ!」
    「?」
    「パパって! 呼んでもいい!?」
     見慣れぬ服を着た娘の片割れは興奮したように紅潮した顔でそう叫んだ。
    「ぱぱぁ?」
    「……父親、という意味らしい」
     もろはの疑問にせつなは丁寧に教えてやる。
     育ての親である『草太ぱぱ』なる人物はそれ自体が名前かと思っていたが、どうやら違うらしい。『ぱぱ』という呼称は子供が甘えて父親を呼ぶための──せつなの母親が亡き彼女の父を『おっとう』と呼ぶのと同じ。
     その音自体全くもって聞いたこともないが、『あの時代』ではそう呼ぶ子供たちは多いそうだ。
    「草太ぱぱは草太ぱぱで、殺生丸が本当の『ぱぱ』か」
    「おそらく」
     せつなの父親でもあるんだろう? と聞いても彼女は知らん顔。
     どうせ記憶もないし、例え記憶があったとしてもとわのようにはしゃぐ気にはなれない。せつなにとって『家族』と言えそうなのは、退治屋の仲間たちだ。身寄りのないせつなを温かく受け入れ、出自も分からぬ無愛想な娘を仲間として共に妖怪と戦ってきてくれた、彼らのこと。
     どれほど似ているだとかなんだとか血の匂いが同じだと言われようと──とわと同じで──突然現れて実の血を分けた家族だと言われたって、信じる術はない。
    「平和なもんだな」
    「……」
    「せつなはいいのかよ」
    「……」
     姉・とわもまた父親に関わる記憶はない。
     愛を注いで育ててくれたのは草太パパと萌ママ。愛しの妹は芽衣。殺生丸に育てられ、妹のせつなと共に育った記憶はどこにもない。それでも彼女は同じ髪色をした純血の妖怪に縋り、父親であることをどうか認めてほしいとでも言わんばかりに迫る。
     双子とは言うが、性格はどちらかといえば正反対。髪の色も髪質も、言ってることは同じであっても言い方は表裏。
    「どういう訳があったって、父親は父親じゃねぇか」
    「父親だからといって無条件で懐くはずもない」
    「匂いとかも覚えてねぇの?」
    「覚えいたら……きっと こんなところで突っ立ってはいない」
    「それもそっかぁ」
     パパ!
     と嬉しそうに妖怪に目を煌めかせるとわの尻には不可視の尻尾が見える。ばたばたと非常に嬉しそうに振り回す、せつなのそれと似た真っ白な毛が見え隠れする。そんなに嬉しいもんなのかなぁ、ともろはは興味なさそうにそのうち立ち上がり、「飯探してくるわ」と言って森の奥へと消えていく。
     手持ち無沙汰になったせつなは気まずそうに辺りを見回したが、すぐに殺生丸がとわにくるりと背を向けて去っていく姿が目に入る。
    「あっ……」
    「……やめておけ」
    「でも、せつな」
    「妖怪と人間は心のつくりが違う。お前の……草太ぱぱと同じ反応を求めるほうが筋違いだ」
    「……違う、か。でも 本当のママは人間なんでしょ? 」
    「我々が半妖なら当然だ」
    「…………分からないな」
    「父親のことが、か?」
    「うん。せつなはそうは思わない? 何を考えてるのか……さっぱりだよ」
    「当然だろう」
    「えっ」
     相手を誰だと思っている。
     せつなは息を吸い、青い空を見上げた。
    「お前の記憶にも父親が姿がないと言うなら……他人だろう、例え親娘だろうと」
    「他人……」
    「私からしたお前が他人であるのと同じだ」
    「! そんな せつな……」
    「ならどうして初めて見る相手を家族だと疑いなく言い切れる?」
     そんなことでは生き残れない。
     せつなは冷たく──しかし、どこか哀れみを含んだ言葉で姉を諭した。
    「……でも お父さん、だよ」
    「本当とは限らない。お前は誰かの言葉だけを信じるのか?」
    「せつなは 信じてないの」
    「信じない。誰かの言葉だけを真実だと決めつけるのは愚か者でしかない。自分の目で見て確かめたものしか、私は信じたりはしない」
     妖怪の気配は遠ざかって行くと同時によく知った匂いが同じ方向へと移っていく。もろはだ。
    「それでも私は……信じたいよ」
     とわの声は小さく、せつなの耳へと届くよりも先に空へと消えていった。
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    妖怪ろくろ回し

    MOURNING弥勒と翡翠*


    「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」
    「知っているのですか、父上」
    「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」
     サク、サク。
     せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。
     そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。
    「奇怪な味だ」
    「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」
     隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。
     甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。
     仲 1338

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING殺生丸と両親*


     殺すも生かすも心次第。
     然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。
    「皮肉な名前をつけたものだ」
     故に、殺生丸と。
     命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。
    「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」
    「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」
    「むぅ」
    「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」
    「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」
     少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。
     そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。
    「それに、 1429

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