神名鳥本丸の山姥切国広と修行の終わり 神名鳥の山姥切国広は、修行の期間を延長している。きっかけは、国広が1997年の上野に訪れた時に起きたとある些細な事故だ。
それは歴史にも残らない、だが当人からすればとても大きな出来事だった。山姥切国広は考え事による前方不注意でとある男性とぶつかり、そのまま転倒させてしまったのだ。
男性の名は鉄蔵。70代のおじいさんだ。症状は尻餅による脊髄の圧迫骨折である。修行も佳境といったところで、帰還時期も見えはじめていた国広であったが、この事故の後すぐさま政府と連絡をとった。病院への付き添いと、この老人の怪我が完治するまでこの時代に滞在する旨を申し出たのだ。
鉄蔵は、子供もおらず、同じく高齢の妻・幸恵との二人暮らしである。体が不自由になった夫の介護は、腰の悪い妻だけでは厳しいものであった。
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