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    haru00305656

    @haru00305656

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    haru00305656

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    うほ!!!!!!!!
    パンピーしてるヤツをあの空間に無理やり拉致って正気失わせて殺すだけの話書いた!!!!!!!

    わい割とパンピーしてるイカレ野郎ハオ!!!!

    平凡_____可もなく、不可もなく。
    ___平凡で、ありふれた、平均点のような人生。

    一言で“俺”を表現するならば、それが正しく“正当回答”だと言えるだろう。 些細なことを間違えた事は幾度となくあったが、それでも学業としても人間としても落第することはなく。フラフラと遊びつつも、義務教育を平凡に終え、高校でも平均の少し上をキープし、薄っぺらい友人関係をまるで義務のように築いて、親の顔が潰れないくらいのそこそこ名の知れた企業へと就職し。
    このまま特に生きていくことに不自由も苦痛も何の不満もなく、あと数十年と生きていけばいわゆる“普通の人間”の一生が出来上がるってわけだ。

    まぁ、(...つまんねぇな。)とは思うが、人間の一生高々80年だか100年なんてそんなもんだ。

    ......文句を垂れていても仕方がない。

    “平凡”が嫌なら自分からその生ぬるい場所を脱すればいいだけだ。...が、これがまぁメンドクセェったらありゃしねぇ。
    だから、俺は明日も明後日も明明後日も数年後も数十年後もこの“平凡”を続けていくつもりだった。

    ________無理矢理、このありがた迷惑な“平凡”を断ち切られる寸前までは。


    「っっ!!?...ここ、何処?...w』

    ...ふと気がつくと、そこは一面純白が全てを支配し凌駕する見知らぬ場所に居た。まるでまっさらな白紙を四方八方隙なくムラなく貼り付けたような。真っ白い箱ん中に閉じ込められたような。見覚えのない、正真正銘見知らぬ場所。“閉じ込められているような”と言うものの、閉塞感も圧迫感もない。
    『真っ白い空間に入れられると人間は正気を保てなくなるらしい。』という噂をどこぞやで耳にしたが、今のところ特に正気を保てなくなるような感覚もなく。

    ...何も、ない。
    ......何も。
    ______本当に、何も無かった。不思議なくらいに。

    不安だとは思うが、不安がっていてもここで立ち往生していても仕方がない。
    起こってしまった事はもうどうしようもないし、今まで驚くほど“何もなかった”この平凡すぎる人生にぽっと出で超常現象が起きたのならそれもまた一興。
    ...どうせ帰ったところで待っているのは面白みの一つもない人生だけだ。
    運良くまた現実世界に帰れればそれでいい。
    “正気を保てなくなるような感覚もなく“というのは嘘になってしまった。
    訂正するとすれば、心の奥底から湧き上がるような衝動と高揚感と味わったことのないような興奮が蠢いている...といったところか。
    例えるならば、幼い頃図画工作の授業にて自分の背丈ほど大きく感じる画用紙に好きに絵を描いていいと言われた時のような気持ちにとても近くて。

    俺は一つ大きく伸びをして、そわそわとあちこちを見回すのをやめて一歩二歩とそのデカすぎる画用紙に足跡をつけ目的もなく彷徨い始めた。


    「本当になーんも無ぇな...ww」
    なんて、彷徨い始めたはいいが特に進展もなく、いよいよ気でも狂うかと今正気を保っている自分自身に別れの餞でも手向けてやろうと考え出した頃。
    一面どこまでも白く続いている空間に、突如人が倒れているのを発見した。

    ((俺以外にもこんな所に迷い込んだヤツが居るのか?))
    ((...誰が?どうして?どうやって?何のために?))
    ((そもそもこれは拉致られた...ってことになんのか?w))

    最初にとりあえず人を発見した喜びと安心感が生まれ、一拍遅れてそれらを飲み込む数多の疑問とその発見した人間が倒れておりもしかしたら死んでいる可能性だってあることに流石に焦りを覚える。

    「......」

    このまま素通りするのは目覚めが悪いし、この空間について少しでも知識が欲しい。
    ...まぁ、“生きていれば”だけれども。
    でも、そんな綺麗事は置いといて....。
    こんな所でもなきゃ死体なんて一生拝めるモンじゃねぇなw
    .......なんて。

    ____人としてあるまじき欲望が鎌首をもたげる。

    俺は、今までずっと封殺し続けてきた欲望や好奇心が理性を振り切って膨れ上がっていくのを自覚しつつも、それらの都合悪いこと全てをこのイカれた空間のせいにした。

    「...おーい...どうしましたー??」
    「...大丈夫っすか...こんな所で倒れてるなんて...。」

    人間の正気を剥ぐ純白に当てられて、『もしかしたら初めてこの目で“死”というものを拝めるかもしれない』なんて人間として邪悪としか言いようのない欲望に眩んで駆け寄ったという事実に蓋をして、破れかぶれになりはじめた正気を再び被り直し話しかける。

    「.,.反応が無ぇ...生きてる...大丈夫....」
    「....死んで...ねぇよな...普通に寝息聞こえるし...。」
    「...寝てるだけ、だよな...」

    小さな寝息が聞こえるくらいまで駆け寄って、死んではいないようだと安堵感と共に軽い興ざめを自覚しながら、着ていた上着をその人物にバサッと掛けて自分も隣に座り込む。
    別にこの空間に来てから疲れも空腹も感じはしないが、それでも今の今まで普通に人間として生きてきただけあって立ちっぱなし歩きっぱなしだったと思うとそりゃ座りたくもなるし、自分の正気が失われつつあることなんて嫌でも分からされて少し落ち着きたかった。

    ((隣に寝てるヤツが起きるまで、俺も休憩時間にするかw))

    ほんの少しの休憩時間だ、と自分自身に対して建前を言いつつ。
    ...本音は、こんな何もねぇイカれた空間のなかでポツンと優雅にお昼寝をしくさっているこの男に興味が湧いたから、少しおちょくってみたくて...。起きる様子は依然ないが、目覚めるまで待ってちょっと世間話でもしてみようかと思ったのだった。
    どこか眠り浅げで、魘されているのか眉間には数本の皺が刻まれているのを見て腹ん中で下衆な感想が一つ二つと浮かび上がる。
    ((そりゃこんな四方八方白に囲まれた空間じゃあ眠りも浅くなるわなw))
    ((しかもベッドも布団もなく雑魚寝とか起きた時体痛くなるやつじゃねぇかw))
    ((....ちょっと申し訳ねぇけど起こした方がいいのか?))
    ((....いや、こんな所で呑気に寝てる人間だしほっといて大丈夫だろ。))
    ((......起こしたら起こしたでありがた迷惑ってやつか...。))
    自分だったら寝てる時他人に起こされるのは癪だな、と考えて数秒悩んだ後に『やっぱ起きるまで待つか。』と胡座と頬杖ついて軽い眠りに入る体勢を作る。
    ...そういえばここに連れてこられる前の時間帯は夜だったな、と。
    しかも、ある程度その辺の居酒屋で酒をひっかけ立派な千鳥足で帰路についている頃だったな、と。
    寝る体勢を作って直ぐに大きなあくびが出たのをきっかけに思い出して、そのまま眠気に抗うことなく夢の世界にに落ちていく。

    ...1番平和なのは、このまま眠って起きた時には現実世界に帰っていることだ。

    ____あわよくば、このまま眠って二度と目覚めませんように。

    降って湧いた希死念慮に身を任せるよう瞳を閉じた矢先に、隣の人間が目覚めた気配で叩き起される。
    ...用のある人間がようやっと目覚めたのなら、俺の中にあるチンケな希死念慮よりもそっちの方が優先順位は高い。

    『...あぁ、ようやっとお目覚めかw』
    『...おはよぉーございますw』

    とりあえず失礼はないように、敬語にはしつつ。
    でも、その頃にはもう.,.いつものなるべく人を小馬鹿にしたような笑いを含ませないようにしようとする理性なんてなくて。

    ...気に障るような半笑いな煽り口調が飛び出てしまった。

    あぁ、どうしよう...と思うより早く。
    ____気にすることなく隣の人間は煙草を取り出し。

    まるでいつもの事だと言わんばかりに火をつけ息を吐き出した。

    ,..そのまま会話が繋がることなんてなく、居心地の悪い数秒間が広がっていく。

    『...あの...俺歩いてたらこんな所に倒れてたみたいなんですけど....』
    『...大丈夫っすか...w』
    『...ここに連れ去られて体調悪いとか....ないですか,...w』

    ...数秒間の沈黙の後、俺が耐えきれなくなって口を開いた。
    他人行儀のような、そのクセ馴れ馴れしくて癪に障る煽り口調のような。
    なるべく外では出さないようにしようと思って小さい頃から矯正し、ようやく“普通の”敬語になったと喜んでいたのにその忌々しい口調が口からついて飛び出てしまった。
    あ、と思うより早く...。
    首をすぼませて怯えるよう上目遣いしたその矢先に、隣の人間は俺を“信じられんような”目で見てみるみるうちに鳥肌を立てていく。

    ____やってしまった。

    ...少しでもご機嫌を伺いたくて、奴が寝ている時に掛けた俺の上着をふわっと剥ぎ取って、再び恩着せがましく肩にかける。

    『今どき寒いし、...』
    『...その、風邪とか...大丈夫っすか...』

    内心、殺してくれと願いながらややぁと会話を繋げ反応を待った。
    ...果たしてこれは、本当に会話と言えるのだろうか?

    「だ、大丈夫だ....。」
    『...風邪の引き始めとか....』
    『まだまだ冬のピークだし、某病とかまーた流行ってるし....』
    『...他人と会話をするのが嫌になるご時世っすよね..、いやぁ、世知辛い。』
    「え,...、そうだな..,。」

    ...会話のぎこちなさが、俺の首をギチギチと締め上げる。
    もう、...耐えきれなかった。

    『.,.あー...俺、出口探してきますw?』
    『出られないと、その...困るでしょうし。』

    早々に逃げ口上だけ口にして、立ち上がり次第1歩2歩と距離をとって背を向ける。

    .....あんなに居心地悪く、理解不能な間は体感したことがなかった。


    まるで何かに追われるよう走って走って走って。気がついたら、不自然に一つの扉が待ち構えていた。
    ...それは、さながら俺を導いているように...俺が居心地悪くなって逃げ出すことを分かっていたように、俺の前に立ちはだかって。“逃げ場所はここにある”と言わんばかりに..誘い込み意識を吸い込んでいく。

    “俺は、ここに来るべきではなかったのに、来てしまった。”
    “今、すぐにでも...ここから立ち去らなければ。”

    目に見えぬ何ぞやの圧力に負けて、その扉についているドアノブをひねりその中に吸い込まれていく。
    扉を開け放ったその先には、全く異なる見た目世界観空気感に紅茶を嗜む存在が...居た。
    その存在は...一瞬だけ細く瞑った瞳を開け、燃えるような紅を見開くと、また何事も無かったかのように瞳を閉じた。

    「...やぁ...。せっかく来たのなら、ゆっくりしていきなよ。」


    その一言に何故か異常な程の安心感を覚え、催眠術師に操られるように空いている席へと誘われて、ストンと腰を下ろす。
    紅茶の風味豊かな、...それでもどこか、もう跡形もなく吹き飛んだ理性正気の残り香を掻き消すかのような良い香りが俺を包み込んだ。



    『.,.紅茶のいい匂いがすると思ったらこんな所に喫茶店があったなんてw』
    『...そうだな、マスターのおすすめを一つ。頂いて帰ろうかなw』


    カウンターの奥に引っ込んでいくその人の後ろ姿にそう投げかけた。

    5分、10分、15分...。
    あっという間のような、それにしては長いような。
    しばらくして、カウンターの奥に消えていた姿が再びそれら一式を両手に持ち現れる。
    その姿はアリス・イン・ワンダーランドに出てくるマッドハッターのようで数秒見とれてまった。


    「...お茶会の準備も整った事だし、さぁどうぞ?」

    ...マスターは俺の思考を読んだようなセリフを添えて、仄かに温かいティーカップを目の前に置き静かに紅茶を注いでいく。
    それから、手乗りサイズの小さな壺を3つ,..俺とマスターの間に置いて向かいの席に座った。
    手馴れた様子で一つ一つ壺の蓋を開けティースプーンでそれぞれの中身を掬いながら、中身の正体を明かしていく。

    「,..この壺の中はシュガーが入っていて、その隣の壺にはミルクが入っているから。」

    言われるがまま、シュガーとミルクを傍に置かれたティースプーンで掬って、時折味見しながら一杯二杯と入れ混ぜ溶かして手を止める。


    ____________3つめの壺の中身が気になったが、数秒見つめた後にふいと目を逸らしてそのまま素知らぬふりをした。
    ...だって、その壺からえも言えぬものを感じ取ったから。
    きっと、この中身を知ってしまったら,..,..俺は、この壺の中身から逃れられない気がしたから。
    ただ黙々と紅茶を嗜む時間が過ぎていく。
    これまた居心地悪いような。
    ....でも、悪い気はしなかった。


    それからしばらくして、俺の持つティーカップの中身が最後の一口にまでなった頃。
    ポツリとマスターが独り言を零すよう呟く。


    『...キミは、3つめの壺の中身が気にならないんだ?』

    ...まるで、ずっと気になりつつも必死に素知らぬふりをし続けていた俺への当てつけのように。
    必死に.,.どこにでもいる“平凡”な人間を演じようとする“俺”を嘲笑うように。

    ティーカップの中身を小さく啜って、命を感じさせないような声のトーンでそっと呟く。


    ____俺の視線は、かの壺に、そしてその壺の中身に注がれて...目が離せなくなった。

    そりゃ、その場にさも当たり前のように置かれつつ無視されて...まるで公開処刑のように放置され続けているその壺の中身が何かなんて気になるに決まってる。
    その中身が例え見掛け倒しの空であろうと、シナモンなどの香辛料が入っていようと、はたまた俺の想像外のものであろうと...。

    『...ぇ?』
    『...いや、紅茶はシュガーとミルクだけ入れりゃそれで充分かと思って...。』
    『....ちなみに、...その中身...何が入ってるんすかw』

    残り1口の紅茶の入ったそれを両手で包んで、唆されるがまま3つめの壺の蓋を開けようかと静かに悩む。

    開けたら負けな気がする。
    ...でも、そうやって言われると気になってしまう。

    「...そうだな、キミの望むものが入っているとしたら,..」
    「....キミはその蓋を開けるのかい?」

    そう言われた矢先、俺にはもう踏みとどまるだけの理性なんて残っていなかった。もう、中身が何であろうとどうでもいい。


    無意識下に訴えかけられるようその壺へと手を伸ばし、蓋を開けて、封じられていたそれを確認するよりも早く中に入っていた小さいスプーンにすりきり一杯掬いとる。

    そして...冷めきった紅茶の中へ放り込んだ。

    それを...一瞬の躊躇、小さく唾を飲み込んだ後に、喉へ流し込む。

    『....っっ』
    『カ...、.....ぐ、ッッ...っっっ』

    確かに望んでいた、とはいえ。
    ...あまりにも酷く、惨い...事の顛末成れの果てに俺は机に突っ伏して向かいの席を睨め付ける。
    酷く甘く、口触りだけ心地いいそれは...人一人をあの世に送り込むには充分すぎる毒の味。

    ((嘘だ、俺はそんなのを望んでない、こんな結末なんてあんまりだ。))
    ((せめて、せめて...もっと楽に、それこそ誰もが望む“平凡”で、面白みのない、穏やかな...そんな死に方をさせて欲しかった。))
    ((なんだってわざわざこんな苦痛に塗れた最期を俺にさせるんだ........))

    急激に眩み歪んで白んでいく視界の中で、さして気にしていなかった喫茶店の奥側向かいに並ぶ絵画達が俺を一勢に嘲笑う。

    ((...ついさっきまで、俺と同じくお前ら絵画達だって素知らぬ顔していたくせに.,.))

    その中心にいるのは、黄金の額縁に縁取られた別世界にて行われている“お茶会”に参加する.,.貴族のような衣装を身にまとったぬいぐるみ達。
    彼らはそれぞれ豪勢で豪華なお菓子達を机に並べ、お茶を嗜みながらそれはさぞかし楽しそうに微笑みを浮かべて談笑混じりに俺の死に様をニヤニヤと舐めるよう見つめ下世話な視線を投げ会話に花を咲かせている。

    『ふ、...フ、っ...がッッ......ァ、はッッ...』
    『〜゛〜゛〜゛ッッ、.........、....カっっ...』
    ((見るな、見るな...見るな))
    ((やめろ、!!!))
    ((...俺の、俺の命を......、俺の死を、弄びやがって....))

    目を逸らしたくても、不満を漏らしたくても...もう、後戻り出来ないほどに毒に全てを乗っ取られて言うこと聞かないこの体じゃ何も出来ず。
    ただ...ただ、にらめっこでもしてるかのように俺を見る赤い瞳と絵画を睨めつけ、悔しさと恨めしさとを滲ませて藻掻く。

    『かは、...ハ、...ひゅ、...っっヒュ.......』
    『.....っっ、.........ッッッ.....、........』


    視界も身体の感覚も意識も霞んで消えるその刹那。
    何時ぞやの古い記憶が蘇る。
    ...初めて触れた“それ”もまた、テレビという額縁に縁取られた向こうの世界の出来事だった。
    たまたま、テレビの電源を付けたその時...。

    そこにいた人間が、耳に痛い程の音と共に持っていた食器を地面に叩き落として苦しげに蹲る。

    画面の外に居るのだろうその“黒幕”を下から恨めしげに睨めつけ、しばらくもがき苦しみ血を吐きながら...
    ____________動かなくなって、死んでいく。

    ...初めて見た“生き物の死に様”は、そんな...ドラマとしてはありがちな展開のものだった。

    幼き頃に偶然見た、その“人が死んでいく”様子は俺に凄まじい影響を与え...そのうち“遊び”の内容にまでその影を及ぼした。
    ある日は、自分が“殺される側“として妄想を膨らませて...自分の内側に存在する“欲望”を満たし慰め更に拡大していくのを確かに実感しながら。
    またある日は...自分の家の押し入れに眠っていたぬいぐるみ達を引っ張り出して、それぞれ役を与えて自分が“殺す側”として男の子らしくないお人形さん遊びに時間を費やす。

    まだ、常識も善悪も理性も知らなかった幼い頃...芽吹いた欲望に素直で貪欲だったあの頃の自分が、今、俺の死に様を見てクマのぬいぐるみ達と共に笑っている気がした。


    『.....、....』
    『..................。』

    眼球の小さな挙動さえ叶わなくなるその前に。
    本当に後戻り出来なくなるより前に。
    突っ伏した身体に自然に沿わせるよう、恨みがましげに睨んでいた視線を“彼ら”から外して机のすぐ先に投げ,..ふわりと瞳を閉じる。

    ((これで、もう“普通”を演じなくて済むんだ。))
    ((...もう、自分に、自分の欲望に嘘つかなくてもいいんだ。))
    ((...痛い、苦しい、怖い、けど。...なんか、すげぇ、...))

    ____さっきまであんなに恨めしかったのに。

    最期に感じたモノは...、自分が死んでくことへのすごく純粋な興奮と悦楽だった。





    「____随分と、楽しそうだ。」

    最期の最期に満足そうな表情を浮かべ、そのまま物言わぬ芸術品となった彼を見つめてマスターは言う。
    “彼”とお茶を嗜むのは初めてじゃない。
    これで2回目...だっただろうか。

    「....やはり、根本は同じか。」

    最後の一口を小さく啜って、事もなさげに一瞥する。“彼”がこの世界に来た時から興味を持ちこの空間に誘ったが、これじゃもう見飽きてしまったそれと一緒じゃないか。
    ....この喫茶店、もとい、アトリエの“管理人”は飲み終わったティーカップを持ちつまんなそうに席を立つ。

    この出来上がったばかりの芸術品を、どのように飾り立てようかと考えながら。

    ____________END.

































































































































































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