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    人格マンション

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    或る父娘の話その2

    ##SotN

    火炎「カヌ・エ様から伝令!双蛇党全隊撤退!全隊撤退!黒渦団、不滅隊もじきに撤退する!」
    「了解、戦線を離脱」

    カルテノー平原は風が強く吹いて、炎と煙が舞い上がっていた。グリダニア、双蛇党の兵としてカルテノーの戦いに参加していたその女は、仲間の伝令を最後に聞き届けた殿の部隊に加わっていた。

    「待て、あれは───」

    伝令兵が女の背後、夜の空を見上げる。女がその目線を追うと、闇の中に浮かんでいた月の衛生ダラガブが一閃し、音と視界が真白に染まる。表層は四方に砕け散り、中から姿を表した古の神によって八方へ落とされる。

    「な、何だ?!ドラゴン…しかもとびきりデカい?!」
    「走れ!ぼーっとしていると死ぬぞ!」

    女は伝令兵の首根を掴んで走り出す。今や背中を見せても剣を振りかぶる帝国兵はいなかった。大きな翼が巻き起こす風に、炎を纏った“ダラガブだったもの”が振り落ちる。

    「危ない!!」
    「っ」

    言葉が出た頃には、もう表層は伝令兵と女に直撃していた。しかしその言葉の続きが出てきたのは、二人が無事であったからであった。

    「…無駄に叫んで気を散らさないでくれ」
    「し、しぬ…」
    「死にたくなければ離れるな」

    女の周りには炎の障壁が立ち上がっていた。降り注ぐ炎をものともせず、強く燃え上がる熱は女を纏った。

    「さ…さすが“日輪”…」
    「お喋りは帰ってからだ。離脱する!」

    女を纏うのは、日輪などという暖かな炎ではない。それは赤き竜の焔、猛き竜の息吹。全てを喰らう、異界の火炎である。
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