Drag/on「お前、その痣って怪我じゃないよな」
「ん?」
鮮やかなサベネアのメリードズメイハネの隅の席に、場に似つかわしくない暗い色合いの二人組が座っている。
一人は酒をあおり、もう一人は武器を手入れし、この日は特に何をするでもなくゆっくりとした時間を過ごしていた。
「頬のやつ」
「あぁこれか」
槍の手入れをしていた女は左頬に触れる。
「こちらに来てからずっとだ、治る気配がないから怪我ではないのだろうとは思うが…支障もないのでそのままにしていたな」
「死ぬ前はなかったのか?」
「あぁ、むしろ昔は右瞼に引っかき傷があったんだ。アイルー…まぁミニオンみたいな子がいて…」
過去を思い出す女はふっと柔らかい笑みを浮かべる。じくりと頬の痣が蠢くのを見て、赤い青年は頬杖をついた。
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