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    2023年11月開催「『まぷま!』准牧准webオンリー2」のタグ企画、#まぷまのしるし 参加作品です。
    ペアルックする二人。

    #まぷまのしるし
    ##准牧准

    [准牧] まぷまのしるし ~デザイナー&モデルAU「なぁ、ここへ来る途中でいいもの見たぞ」
     オフィスに入ってくるなり、プレストンは部屋の隅のコーヒーマシンでコーヒーを入れる。マンデルのオフィスはすでに、自宅のように勝手知ったる場所となっていた。マンデルももう咎めようとはしない。
    「街を歩いてる若いカップルが全身ペアルックしてたんだ。意外と珍しくないか?」
     手元に目を落としたままのマンデルから返事は返って来ない。
    「可愛いよな。付き合いたてかねぇ。カップルのしるしのつもりなんだろうなぁ」
     プレストンがソファにどかっと我が物顔で座ると、マンデルはちらりと見上げた。
    「そういうものなのか?」
    「さぁ、俺はやったことないから」とプレストンが肩をすくめると、マンデルはゆっくりと椅子に背を預け、考えるように顎に手をやった。
    「で、今日は何の用だ?」プレストンが聞く。
     しばらく虚空を見つめていたマンデルは、プレストンをちらりと見て、すっと椅子から立ち上がった。
    「来い」
     マンデルについて奥の部屋へ行く。製作中の作品や試作が置かれている部屋だ。マンデルは一つのハンガーラックの前で立ち止まった。シャツやズボンにジャケット、全て黒色だ。
    「今新しく作ってるやつだ」
    「いいじゃないか。いつもとちょっと違うテイストか?」
    「バンドミュージシャン風にしてみた」
     服を触ってみていたプレストンは、ふと思い当たった。そういえば少し前に、いま自分がハマっているバンドについて長々と話した。マンデルはいつも通り聞き流している風だったが……。
    「で、これを着て街を歩くのはどうだ?」とマンデルが言った。
    「え?」プレストンは聞き返す。「外で試着か? 構わないが――」
    「俺も着る」
    「は?」思わずプレストンは聞き返した。
    「デザインを迷ってるんだ。二人で着て歩いて、目を集めたほうにする」
     目を見開いたプレストンと、見つめ返すマンデルの間にしばし沈黙が流れる。
    「いや、待て待て待て」プレストンは言った。
    「二人で似たような格好して並んで歩くのか?」それはもはやペアルック以外のなにものでもないじゃないか、と顔が赤くなる。
    「そもそも」抵抗するプレストンをマンデルは涼しい顔で見る。
    「俺はプロのモデルだぞ。俺のほうが目線を集めるに決まってるだろ」
     マンデルの頬がわずかに持ち上がる。
    「ほぉ、たいした自信だな。ならやってみようじゃないか」
     プレストンが何か言う前にマンデルは数着を取ってプレストンの胸に押し付けた。
    「着てこい」
     プレストンは溜息をついて引き下がった。
     ほどなくして、上下を着替えたプレストンがもじもじと戻ってきた。
    「なあ、マンデル、これはちょっとアレじゃないか?」
     マンデルは上から下までじろりと見た。「何がだ?」
    「このズボンの丈だと脚が出る」
     プレストンの足元は黒いレザーのブーツだ。エンジニアブーツのようなベルト装飾がいくつかついていながら、脚に沿うタイトなデザイン。だが、脛あたりまであるブーツの上のズボンは、膝を辛うじて隠す程度の長さのため、その間からプレストンの脚が覗いている。
    「流石にこの年でナマ脚はどうかと」
    「そこがいいんじゃないか」
    「……お前、ひょっとしてそういう趣味でも……」
     マンデルは鼻を鳴らして、ぷいと後ろのラックに向き直った。
    「最近のコレクションでも見るやつだぞ。お前はセンスがないのか? そもそもお前モデルだろ。その程度の露出で怯むのか?」
     そう言われてはプレストンも黙る他ない。
    「じゃ、行くか」
     マンデルは颯爽とジャケットを羽織った。プレストンの服とテイストはよく似ているが、細部のデザインが異なっている。そしてマンデルの方はスキニーパンツにブーツだ。釈然としない思いを抱えながらもプレストンはマンデルの後に続いて外に出た。
     時折強く吹く秋風の中、街の通りを二人で歩く。すれ違う人々が、颯爽と歩くよく似た二人に視線を向ける。わざわざ振り返る人までいる。ペアルックで関係を世間に見せつけているカップルにしか見えないに違いない。いつもは視線を感じることは快感でこそすれ怯むことなどないプレストンですら、たまに気後れしそうになる。だがマンデルのほうは、全く意に返さない様子で、横断歩道では信号で止まる車列の前をランウェイのように颯爽と渡る。
     途中でコーヒーを買ったりなどしながら一、二時間ほど歩き回り、帰ってきた頃には体が暖まっていた。
    「結果はどうだ? やっぱり俺の勝ちだろ?」
     ジャケットを脱ぎながらプレストンが言うとマンデルはふんと笑う。「別にお前と勝負してはいない」そう言って部屋から出て行った。
     どうだかな、と笑いながらプレストンはブーツのファスナーを下ろして脱ぐ。だが片方が、脚を抜こうとしても抜けない。
     しばらくして着替えて戻ってきたマンデルは、椅子に座ってブーツと奮闘しているプレストンを見た。
    「どうした」「これ、脱げないんだが」
     そんなわけあるか、とマンデルはプレストンの足元を見る。だが顔を赤くしたプレストンがブーツを引っ張ったり脚を捩ったりしても一向に脱げない。プレストンはゼイゼイと息をしながら言った。
    「ダメだ。切っていいか?」
    「脚をか?」
    「ブーツに決まってるだろ」
    「ダメだ。俺の作品だぞ」
    「じゃあ手伝えよ。お前が作った靴だぞ」
     渋々といった様子でマンデルがしゃがみ、プレストンのブーツの様子を見る。
    「潤滑油でもあればいいがここにはないからな」
     ひょっとしたらカバンに入ってるかも、とプレストンは思ったが口に出すのはやめておいた。最後の手段でもよいだろう。
    「まったく、お前また太ったのか?」
     マンデルが小さく舌打ちする。
    「わかった。思い切り引っ張るぞ」
     プレストンは頷く。マンデルの両手がチャックの開口部とブーツの踵部分を掴み引っ張る。
    「踏ん張ってろ」思わず引っ張られそうになったプレストンにマンデルが言う。
     二人の顔が赤くなってきたところで、唐突にブーツが脱げた。
    「わっ……」反動でプレストンが椅子ごとひっくり返る。椅子の背にしこたま首の付け根をぶつけ、さすりながら起き上がる。
    「……いっ……」尻餅をついたマンデルも呻く。後ろにあったテーブルにぶつかったらしく、上に置かれた物が揺れている。
    「やれやれ。もう少し改良がいりそうだな 」
     プレストンが言うと、首元を押さえながらマンデルも唸った。

     数日ののち、マンデルのアシスタントたちの間で、二人が同じ場所にアザをつくっていたという話が広まった。ほどなくして、揃いのキスマークをつけていたらしいという噂となってまことしやかに囁かれたことを、当の二人は知るよしもなかった。

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    Ordet_er_frit_

    DONEフォラクレのクリスマス話。ドイツの小さな街にて。
    なお、アンティ…が成功したIf設定です。
    Stille Nacht ~静かなる聖夜~ 雪混じりの冷たい寒風が、クレーバーを嘲笑うかのように吹き抜ける。
     耳が千切れそうな冷たさに、帽子を忘れたことを激しく後悔する。だがクリスマスイブには店も開いていない。
     クレーバーは鼻をすすった。ふと、人前で鼻をすするのはやめなさいと博士に言われたことを思い出す。
     だが、もうここに博士はいない。
     もう一度、派手に鼻をすすると、冷たい空気が脳天を突いた。馬鹿だった。
     だが冷たい空気と一緒に、甘く香ばしい香りが鼻をくすぐった。クンクンと探る。たぶん、これは広場の方だろう。あてもなくフラフラしていた足は、突如目的をもってサクサクと雪を踏みしめた。
     街の広場には、一応クリスマスツリーが立ち、クリスマスのデコレーションがされている。見回すと匂いの元はすぐ見つかった。広場の片隅の小さな移動屋台。暖かい明かりの元、大きな銅鍋の中で、ローストアーモンドがかき混ぜられている。クレーバーは引き寄せられるようにそちらへ歩いていった。店員が、コーン型にした包み紙に、砂糖をたっぷり絡めたアーモンドを入れて客に渡している。前のカップルが嬉しそうに受け取って離れていくと、店員がクレーバーへ視線を移した。
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