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    raibou

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    raibou

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    10/9炎ホwebオンリー開催作品です。
    閲覧パスワードは会場内キャプションに記載。
    エンデヴァーの歯が気になるホークスの話。

    #炎ホー
    blessingOfHeaven
    #炎ホ
    flameHoop

    つみかさねる日々 えんえあーさん、と人の口の中で喋り始めた男を制止した。
    額に手を添えて押せば、男は口元から細い唾液の糸を引きながら離れていき、両手の指を己の唇に寄せ、ぐわと開いた顎に引っかけて歯列を俺に見せつけた。
    「ここ、これ」
    「歯がなんだ」
    「ひょっと、ゆれへますよ」
    これ、これ、とホークスは口を大きく開けたまま、奥を見せつけるように顔を傾けた。とんとんと指す指先を見て、同じ歯を舌で確認すると、確かに微かなぐらつきがある。
    「差し歯だ」
    「インプラントにしないんです?」
    「予定が付けづらい」
    「なるほど」
     男が何か思案するような顔つきをわざとらしく見せつけ、俺の胸板をぐいと押す。為すがままゆっくりと寝そべればホークスは俺の腹をまたいで膝を付き、ぺたりと裸の胸を押し付けてきた。指先をそろりと俺の口元にあて、悪戯をする子供の手つきで唇をめくろうとする。
    滅多なことはしないだろうと踏んで口を薄く開いてやれば、指がそろりと忍び込んできた。件の差し歯を中心にそろりと触れたがる指に緩い歯形を押してやれば、痛い、痛い、とおかしそうに笑い、抗議の意図か舌をつねってから出て行った。
    「何が気になった」
    「他にもそういう歯があるのかなって」
    「奥歯以外はそうだ」
    「え、わかんなかったです」
    エンデヴァーさんの新しい情報、ゲットですね。と言いながらまた男は機嫌の良い笑みを浮かべ、いっと唇の両端をつり上げて歯を見せつけてみせた。
    「俺は昔父親に殴られて、けっこう取れちゃいました。でも乳歯だったんで、ほら、きれいなもんでしょ」
     全部本物の歯なんですよ、と言いながら男はにっこりと微笑んだ。その手のCMが来たら、いつでも受けられそうなほど完璧な笑みだ。笑えば一層幼くなる表情にぞくりとして、俺は知らず眉根を寄せた。
    「……腹に座って良い」
    「へっ」
     言葉で促しても、俺をまたいだ膝立ちの姿勢を崩さない。片手で持ち上げるのも容易い体重が腹にかかったところで屁でもないと言うことが分からんらしい。
    「あっ、ちょっと」
     面倒になって戸惑ったままのくびれをぐいと両手で掴んだ。狼狽えたように腰が引けていくのを押さえつけ、半ば強引に腹の上にしゃがませた。一糸も纏わぬ皮膚同士が触れ合い、温い摩擦を生む。男の頬に朱が差した。
    「……っ」
     ふる、と小さく震えた男の股からとろりとした液が漏れ出た。行為に先んじて自身に仕込んだ潤滑剤の類だろう。気まずい心地がしたのか、ホークスは恨みがましい目でこちらをじっとりと睨み付けた。
    「……意地悪せんで」
    「しとらん」
     途端に淫靡な気配を纏ってみせた男に俺はふっと息を吐き、男が漏らした液を掬い取りながらそれを仕込んだ場所を弄くった。ぐちゅと濡れた音が響き、おしゃべりな男が口を閉じる。俺の肌に柔く唇を落としながら、健気な様子で俺の陰茎を撫で擦った。お互いにお互いの好きな場所を撫で回して、次第に昂ぶったそれを男に突き刺した。痛みを堪える表情は次第に嬌声を漏らすまいと唇を噛む仕草に変わり、俺は男が自身の唇に歯形を付けないよう、舐めては吸い付いてあやし続けた。


    「よく考えたら、歯科医さんは知ってるワケですよね」
     ぎゅ、と慣れた手つきでスキンを処理しながらホークスはぽつりと呟いた。
    「……まだその話は続いとったのか」
    「いやー、せっかく新しい情報が増えたのに、ちょっとそこは残念だなって」
     男はまたいっと唇を上げて笑んだ。妙なことにこだわりを見せるやつだと俺は呆れながら口を開いた。
    「……そういうお前はどうなんだ」
    「なにがですか」
    「全部本物の歯と言ったが、前歯は違うだろう」
     ぴた、と男はほんの一瞬動きを止めた。確信は半分だったが正解だったらしい。
    「なんで分かるんですか、怖いなぁ」
    「分かる物は分かる」
     俺の物言いのどこが面白いのか、あはっと大口を開けて笑ったあと、飛行訓練で落っこちたのだ、と男は語った。
    「速度出す訓練で、ほんと、垂直にどーんて落っこちたとき折れちゃったんですよ」
     これ恥ずかしいんで絶対秘密にして下さいよ。と男は人差し指を唇の前に立ててしーっと言いながらウインクなぞ飛ばしてきた。
    俺だけが知っているようなことが、また増えた。他愛のないことから、誰にも話せないようなことまで。
     同じくらい、歯医者なぞ比較にもならないほど。
     お前しか知らないような俺のことが、今となっては山ほどある。そう言ってやればこの男はどんな顔をするだろうか。飄々とした顔を止めて真顔にでもなるだろうか。それとも、あらぬ方に視線を彷徨わせたあと、得意げな笑みでも浮かべるだろうか。
    言えるはずがない。言えないのだから見られるはずも無いのに、想像ばかり張り巡らせる己の浅ましさが憎かった。本当のことを言える日は来ない。睦言じみたことなど、言えようも無い。
    こいつが度々ベッドの上でしょうもない嘘をつくのも、同じ理由だと、いつの頃からか気が付いていた。

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