Marry me 出島を歩いていると、時折様々な地方の結婚式に出会うことがある。オーソドックスな白のドレスや、刺繍が細かく施された民族衣装など、少女が憧れるドレスに、こんなにも種類があるのだと思わされるのだ。
今日見たのは山岳地方に住むヨーロッパの移民のドレスで、それは花々の刺繍があちこちに施され、彼女の周りの子供たちは花びらを巻いていた。俺はそれを踏みそうになって、あわてて狭い通りの端に寄る。しかし狡噛は邪魔した詫びにとあめ玉をやっていて、そうやって子どもを手なずけるのかと、俺はどこかで感心していた。
「おめでとう」
「おめでとう」
「幸せにね」
「幸せになれよ」
そんな言葉があふれる通りで花嫁と花婿が通り過ぎるのを俺たちは見て、日本に来て幸せになった人々がいることに、俺は単純に嬉しくなった。俺が担当するのは基本的に血生臭い事件だ。誰が誰を殺したとか、移民たちが不幸になる事件ばかりだ。それが今日は違った。人が幸せになる瞬間を見ることができた。花嫁の微笑み、花婿の緊張した表情。それは普段は滅多に見られない。
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