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    mii_wannyantyu

    @mii_wannyantyu

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    mii_wannyantyu

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    実験体しのぶさんと研究者カナエさんのお話。
    最初だけ。

    実験体しのぶさんと研究者カナエさん

    カナエさん視点

    「カナエ、本当に行くんですね?」
    「ええ。私にできることがあるのなら、やりたいの。お願い、父さん、母さん。」

     ◇

     ふ、と目を覚ますと、そこは実家ではなく、見慣れた私の部屋だった。研究機関に併設されている、居住区にある一室。研究者たちが快適に過ごすことのできるよう、その人にあった部屋を提供されている。私に割り当てられた部屋は、一般のマンションと大差ないものだった。これだけでも、十分すぎるくらいなのだけれど。

     起き上がり、電気をつけて、伸びをする。懐かしい夢を、見たものだ。あれは確か、私がここに来ることを決めた日の出来事。ここに来て、もう6年目。新人の期間は終わり、後輩もできた。覚えること、実践すること、応用すること。毎日新たな人や、物事との出会いにてんてこまいだ。

     私の専門分野はコミュニケーションだけど、ここには美術や医学など、色々な人がいる。そんな人たちと話し、意見を交わすことのできるここは、私にとってとても居心地の良い場所だった。

     さあ、新しい1日の始まりだ。カーテンを開けて、部屋の中いっぱいに、日の光を取り入れる。
    (今日はどんな出会いがあるかしら。)
     胸を高鳴らせながら、顔を洗うため、洗面所に向かったのだった。



    しのぶさん視点

    「おい、ニニ四番。聞こえているのか。朝だ。起きろ。」
     耳をざわつかせる嫌な声に、私は、重たい瞼を開けた。目の前には私を囲む真っ白な壁と、一面だけ、向こうから私が見えるようにとつけられた、ガラスの壁。
     その向こう側から、男は私に話しかけていた。
    「飯を食う前に実験だ。出てこい。」
     正直、まだ寝ていたい。だが、この男に逆らうと、首に嵌めてある枷に、電流が流れる。それは、痛いし苦しい。だから、大人しく従う。この痛みで死ぬのは、なんとなく嫌だから。

     ◇

     ぺたぺたと裸足で箱の中を歩いて、壁の前まで行く。すると、その壁の一部が窪み、廊下に出られた。どんな仕組みかはわからないが、遠隔で操作されているらしい。……自分一人でここから脱出するのは不可能だろう。まあ、そんなつもりは毛頭ないけれど。

     生まれた時から、私はここにいる。ここで、育った。白い服を着たこの人たちに、育てられた。だから、ここから出ても、行くあてもなければ、この建物というものの外がどうなっているのかを、知らない。ここの人たちは、外から来たというが、外のことを、教えてくれない。でも、書物はくれたから、読んだことはある。しかし、何もかもが妄想のようで、実際にどうなっているのかは、よくわからなかった。

     この建物の中には、私のような子供が、何人かいた。ここには、私がいるのと、同じような部屋がたくさんあるらしく、悲鳴や叫び声などの子供の声が、よく聞こえていた。

     しかし、いつのまにか、隣で叫んでいた子はいなくなって、隣の部屋からは、違う子供の声が聞こえるようになった。きっと私も、隣の部屋にいたはずの子たちのように、いつか部屋の中からいなくなり、帰らない日が来るのだろう。その日が、早くくれば良いのに。

    「来い。今日は投薬だ。」
     ぐい、と強い力で手を引かれて、引きずられるようにして廊下を歩く。

     男が作る薬、を飲むと、体が燃えるように熱くなったり、痛くなったりする。それなのに、こいつは喜ぶ。実験がうまくいったぞ。なんて。薬のおかげで、私は散々ひどい目にあったのだが、なかなか死ねないのも薬のせいらしい。

    (ああ、はやく、ここからいなくなりたい。)

     生きることも、死ぬことも自由ではないこの身。……『自由』、という言葉の意味を、知らなければよかった。私は知識を身につけたことを、深く深く後悔した。
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    mii_wannyantyu

    DOODLEさっきお話ししてた、モブさんに告白されて言い出せなかった💧さんとそれにもやっとしてしまう🍑さんのお話。らくがきです。まだ続くけど一旦ここまで。大丈夫!ハッピーエンド仲直りするよ!(これは僕のために言っています…)
    仲直りして!!!「どうして、言ってくれなかったの」
    ……愛莉ちゃんのこんな顔見たの、いつぶりだろう。
     私を見下ろす愛莉ちゃんを、真っ直ぐに見つめる。愛莉ちゃんの後ろには天井が見えて、ああ、私、今倒れてるんだ、なんて。
     形が良くて愛らしい眉毛がきゅっと寄って、私を映す桃色は、悲しそうに細められてる。いつもは綺麗に上がっている口元も、への字みたいに下がり切っていて。
    「えっと……」
    事の発端は、私が、この前出演したドラマの相手役の人に告白された事だった。もちろん、私には愛莉ちゃんがいるから断ったけれど、お付き合いしていることは、まだ内緒にしておこうって愛莉ちゃんと二人で決めたからちゃんと言えなかった。
     その人は愛莉ちゃんとも仲がいい人だったから、愛莉ちゃんになんとなく言い出しづらくて、切り出すタイミングを伺っていたらどんどん時間が過ぎてしまって、もう一週間。どういうルートを辿ったのか、私があの人に告白されたことが愛莉ちゃんの耳にも入っていて、おうちに帰ってきた瞬間、愛莉ちゃんに手首を少し痛いくらいに掴まれて、ソファにぐいって押し倒されてしまったの。
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    mii_wannyantyu

    MOURNING『現代鬼殺のお話①』
    前に呟いていた、現代鬼殺のお話。書きたくて書いたものの、何書いてるのかよくわからなくなったので供養。
    現代鬼殺のお話①

    「はあっ!!」

    私に向かってくる、異形のものに対し、私だけの刃を振るう。ガシャン、プシュウ。一閃。ドサリという物音と、ぶわりと巻き上がる黒い靄。ふよふよとこの場を漂うけれど、それはもう無視。なんの害もこちらには及ぼせなくなっている状態のはずだから。耳をそばだて、気配を探る。……よし。もうあいつらはいない、みたい。依頼の内容も、一体だっていう報告だったし。

    「ふう。任務、完了」
    『今の刀の振るい方、なんだか粗くありませんでした?』

    ……ああ、また始まった。

    「うるっさいなあ」
    『蟲柱たるもの、もっと美しく、軽やかにこなしてもらいませんと』
    「ふんっ。そんなことにばかり拘ってるから、この間みたいに失敗するんじゃないの?」
    『なんですって?!』
    「ほらほら、しのぶ。後は隠がやってくれるから。今日はもう帰っておやすみ」
    「社長」
    『お館様』

    急に目の前に現れた雇い主の姿に、跪く。この位置からは見えないけれど、多分もう一人の私も、同じ格好をしてる。

    「そんなにかしこまらないでおくれ。しのぶ、今日はどうだった?」
    「はい。任務は、つつがなく。相手は人型を取ってはいま 2898

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