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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

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    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
    感想、リクエスト(お断りさせていただくものもあります)はこちらへ→https://marshmallow-qa.com/kurokuro_happy5?t=ajqOjp&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

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    kurokuro_happy5

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    使い魔86ダムと魔女プレの話。

    羅針盤の魔女③羅針盤の針が指す彼女らの運命。それは時に暖かく、時に残酷で、時に……
    これは一つの羅針盤に導かれる、彼女らの物語。



    朝。
    とある町の宿屋でひと夜明かした魔女と使い魔達。
    朝風呂を浴びた魔女が髪を拭いていると、後ろから誰かが魔女を抱きしめた。
    「……おはようマルコス。珍しく早いのね」
    「おはよ、魔女様。最近猫になりっぱなしで寝てばっかだから、目が冴えちゃった」
    魔女はまだ服を着る前で裸だというのに、お互い気にしていない。既に肌を重ねているという事実があるからだろう。
    「ねぇ魔女様……一つ聞いてもいい?」
    「何かしら」
    魔女の細い体を抱き締める腕に力を込めながら、マルコスは問う。
    「……魔女様は、本当に死ぬつもりなの?」
    「……」
    魔女は黙った。しかしその沈黙はすぐ破られる。
    「えぇ、そうよ。私は死にたいの。貴方も見たでしょう?貫かれようと、焼かれようと、潰されようと……再生するこの体を。死神ですら終わりにできなかった心臓を……」
    「うん、知ってるよ。僕は二番目の使い魔だし、記憶力は無駄にいいから、鮮明に覚えてる」
    「……こんなの、気味が悪いでしょう。私自身が一番そう思ってる。だから終わらせたいの。……付け加えるとするなら、死神ですら終わりにできなかったこの身が、何なら終わりにできるのか……それに興味がある」
    淡々と語る魔女の声音は、驚く程に平坦だった。マルコスは魔女を自分の方に向かせると、正面から抱きしめる。
    「僕はさ……この旅、嫌いじゃないよ。魔女様と一緒にいるのも、皆と一緒にいるのも。魔法だって使えるし、こうして触れ合えるし、僕の好きな魔法少女ラジオだってある」
    「……何が言いたいの?」
    「……いつまで、続くかなって」
    一方でマルコスの声音は、不安の色が滲んでいた。魔女はマルコスの背中に腕を回す。
    「大丈夫、まだしばらくは続くわ、きっと。簡単に見つかるとは思えないもの」
    「……そっか」
    「えぇ」
    短い応答の後、二人ともなく顔を上げて、キスをする。触れるだけのキスから、舌を入れて深く。お互いの熱を確かめ合うように。
    「ん……は……」
    「……愛してるよ、僕の魔女様」
    「……えぇ。愛してるわ、マルコス」
    そしてもう一度キスをすると、マルコスは猫の姿になり部屋に戻っていった。
    (私の死……いつ、来るのかしら)
    服を着ながら、魔女は羅針盤を見つめる。羅針盤は答えをくれない。
    ただ、進むべき方向と、この町ですべき「人助け」を、示すだけ。



    (ふわぁ……)
    (マルコス、寝不足か?)
    (なんか最近朝早く目が覚めてさ、寝て起きてを何度も繰り返しちゃうんだよね〜)
    (若いのにご苦労なこった)
    (……)
    魔女の周りで好き勝手話す使い魔と、魔女の隣を歩くアダム。この町は他の町と比べると比較的平穏な町だった。
    「人を探してます!見かけたら連絡を!」
    そこへ、熱心にビラを配っている青年に出くわした。魔女達はそれをちらりと横目で見ただけで通り過ぎようとする。
    「!! 貴女、もしかして羅針盤の魔女様ですか!?」
    しかし魔女達の前へ青年が飛び出してくる。アダムは魔女の方をちらりと見たが、
    「えぇ、そうよ」
    隠すつもりは無いようで、あっさりそう答えた。
    「やっぱり!珍しい毛並みの猫と銀髪の騎士を連れた美しい魔女様が様々な旅をしているとお噂はかねがね……!!あの、良ければこの人を探していただけませんか?お礼は父が何でもしますので!」
    「……」
    差し出されたビラを見ると、魔女は静かに目を見開く。アダムと、魔女の肩に乗っていた零夜も同様に。
    「……誰が、彼を探しているの?」
    「うちの父です!研究員をやっていて……父の研究所の優秀な研究者が、突然行方を眩ませたそうなんです……父はいつも彼の話をしていて、心配だって毎日話していて……よければ、助けてくれませんか?」
    「……」
    すると、魔女の空いている方の肩にマルコスが飛び乗る。そこで彼も、目を見開いて固まった。
    (これって……)
    そう。ビラに載っていたのは、


    ​───────人の姿の、マルコスだったのだ。





    「お待ちください。父をお呼びします」
    魔女は、外にアダム、アタリ、零夜を待機させ、マルコスとサーティーンだけを連れてきた。
    青年に案内されたのは研究所内の客間のようだ。何かの部位が入った瓶や、本棚にぎゅうぎゅうに詰められた分厚い本、壁には所狭しと何かのメモが貼られている。
    (おいマルコス、あいつはお前の知り合いか?)
    (あの子は知らない。けど……この研究所は知ってる)
    「作り直したみたいね。懲りないこと」
    話していると、コンコンと扉がノックされ、眼鏡に毛髪の少ない白衣を着た男が現れた。
    「おぉ!これはこれは、羅針盤の魔女様!お目にかかれて光栄です!」
    男は魔女を見るなり握手を求めてきた。魔女は大人しく手を差し出す。
    「ほほう、この子らが貴女様の使い魔ですか。白はよく見ますが、オレンジの毛並みの猫など見たことがありません」
    そう言って男はマルコスに手を伸ばすが、マルコスはフーッ!と毛を逆立てて男を威嚇した。魔女がマルコスを抱き上げ、撫でて宥める。
    「すみません。この子、警戒心が強くて」
    「いやいや、仕方ないことです。さぁ座ってください。ゆっくりお話しましょう」
    魔女は言われた通りにソファに座る。向かい側のソファに男が座って、サーティーンは魔女の近くに丸まり、マルコスは魔女の脚の上に座った。
    「さて、本日魔女様を招かせていただいたのは、息子から聞いていると思いますが……うちの優秀な研究員、マルコスくんを探して欲しいのです」
    「……見ました。彼はいつ頃?」
    「つい2年前ほどでしょうか……こことは違う場所で研究をしていたのです。マルコスくんはとても優秀で、彼の頭脳と発想力、そして溢れんばかりの才能は、世の中を良くするために必要なものでした。しかし……彼はある日突然、姿を消したのです。彼がいなくなったと同時に、研究所が謎の火災に見舞われました……幸い研究資料等は無事だったので、2年かけてこの町に再建したのです。あとは彼が見つかれば……」
    「……」
    サーティーンはその話を欠伸をしながら聴いていたが、魔女とマルコスは険しい顔をしていた。
    ……マルコスは、彼らに利用されていたのだ。
    心の拠り所がない彼を騙し、操り、暴力のない奴隷のように扱っていた。
    それを、魔女は助けたのだ。そのお礼にマルコスは魔女についていくと決め、使い魔となった。
    研究所を燃やしたのも、契約の際にマルコスが力を使ってみたいと言い、その実験体に使ったからだ。
    まさか再建するほどの財力が残っているとは思わなかった。どうでもいいから、あまり考えてなかったのもあるが。
    「魔女様!どうか、どうかマルコスくんを探してください……!彼には戻ってきて欲しい……きっと彼も、ここで研究することを望んでいるはずです!」
    「……一つ、聞いてもいいかしら」
    「はい、何でもどうぞ!」
    魔女は鋭い視線を向けながら、男に質問する。
    「彼がもし戻ってきたとして、本当は研究なんてしたくない、自由に生きたいと言ったら……貴方はどうする?」
    魔女の問いに、男はきょとんとしながら答える。
    「そんなはずはない。彼は私達と研究をすることこそ生きがいで、それ以外に生きる理由はないはず。彼には私以外信用出来る者などいない」
    「……」
    「あはは、変なことを聞きますね魔女様。どうなさいました?」
    「……いいえ」
    魔女は目を伏せ、怒りを殺した。毛を逆立てるマルコスを撫で、必死に宥めている。
    「……その使い魔、躾がなっていませんな。ずっと私を睨んでいるではありませんか」
    「…………使い魔は躾をするものじゃないわ」
    「放任主義なのですかな?まぁ使い魔は主人に逆らえないと聞きますし、放任でも問題ないのでしょうな。ですが他人に危害を加えたら貴女の責任になってしまう、躾はするべきです。そんなことはさておき、報酬の件ですが​───────」
    それ以降は報酬の話やマルコスの特徴等についての話となり、終わった。





    夜中。
    魔女とマルコスは研究所の前に来ている。
    「……」
    「大丈夫?」
    人の姿のマルコスの手が震えているのを見て、魔女はその手を掴む。マルコスも魔女の手を握り返した。
    「……初めて、許せないと思った」
    「え?」
    「今まではさ、全部どうでもよかったんだ。何を思うのも無駄だし、必要とされてるなら何でも良かった……けど」
    ぐっ、と魔女の手を握る手に力が篭もる。それは恐怖ではなく、怒りだった。
    「僕の言葉を聞かなかったフリして、忘れて、都合良く記憶改竄して……あいつは君のことを侮辱したのもきっと覚えてないんだ。だから、許せないって、思った。これが憎しみってやつなんだね……」
    「……マルコス」
    魔女が何かを言いかけたところで、大勢の人間の靴音。振り返ると、そこには研究員の男と、その後ろに武装した男達がずらりと並んでいた。
    「やはりその女の使い魔になっていたのか、マルコスくん」
    「……久しぶりだね」
    「君はもっと賢い子だと思っていたが、やはり年相応に愚かだったようだね。さぁ、今すぐその魔女と契約を切って戻ってきなさい。死にたくなければね」
    ガチャ、と銃が構えられる。このまま撃たれれば一溜りもないだろう。
    ……このままなら。
    「君を信じてた時期も、確かにあった。けど……僕は魔女様に出会って、君が薄汚い人間だってわかった……ううん、認めたんだ」
    「何を言っている?」
    「わからない?つまり……こういうことさ」
    マルコスは魔女を横抱きにすると上に飛び上がった。大きな月が、二人の背景で輝いている。
    「魔女様、僕に命令を」
    「そうね……」
    そして魔女はマルコスの頬へ手を伸ばすと……顔を近づけた。
    「命令よ、マルコス​────あいつらに、復讐しなさい」
    魔女がマルコスの唇へ口付ける。口付けを受けたマルコスは、ニマリと笑った。
    「da,vrajitoarea mea」
    月の光が二人を包む。魔女と指を絡ませ、二人で空中に降り立つ。
    「!? 浮いてるぞ!?」
    「ありえない!まさか、魔法が本当に実在するとでも……!?」
    ぎゅ、と繋いだ手に力を込め……魔女とマルコスは手を下の男達に向かって翳す。
    「ドリーム☆ムーンライト!」
    そう叫ぶと月の光が光線となって男達の元へ降り注ぐ。光に貫かれた男達は阿鼻叫喚に陥り、光の塵となって消えていく。
    武装した男達は皆消え、残るはあの男のみ。
    「こ、こんなことはっ、ありえないっ!!」
    男は懐から何かを取り出すと、ニヤリと笑ってそれを口に放り込んだ。
    「っ……?あれは……?」
    「! あいつっ、こんな所で最終兵器を使うつもり!?」
    マルコスが焦る中、男は呻きながらどんどん体を大きくしていく​───────
    膨れ上がり、人の形など見る影もなくなった緑の肌の化け物が咆哮を上げた。
    「マルコス、あれは……!?」
    「……不老不死の研究の途中でできた、最終兵器……人の体を無理矢理肥大させて凶暴化させる薬だよ。あぁなったらもう二度と人には戻れない……」
    「そんな……」
    化け物は二人をロックオンすると、口をあんぐりと開け、エネルギー弾を発射した。
    「っ、ドリーム☆マジカルアンブレラ!」
    マルコスはピンク色の傘を開き、その攻撃を弾く。「こっち!」と魔女の手を引き、空中を進む。
    「どうするつもり?」
    「元は所詮人……燃やせばどうにかなる、あいつを研究所の方へ誘き寄せて研究所ごと燃やす。今度こそお別れするんだ……あの人に、この研究所に」
    はずれとはいえ、少し進んだ先に町がある。巻き込むわけにはいかない。
    化け物は二人を追って研究所を破壊しながら進んでいく。
    「ここら辺でいいかな。行くよ、魔女様」
    「えぇ」
    魔女とマルコスは空いている方の手でハートマークを作る。するとハートの空洞からオレンジの炎が生まれ、空中に浮かび、大きくなっていく。
    「みーんなまとめて!……消し炭だよ」
    「「ドリーム☆マジカルフレイム!!」」
    オレンジの炎が研究所へ落ちていく。着地すると一気に燃え広がり、体に炎が移った化け物は燃えながら咆哮をあげる。
    「……さよなら、僕の牢獄」
    「……」
    マルコスはその光景を、辛そうな目で見ていた。
    燃え盛る研究所の近くに降り立った二人は、ぎょっとする。
    「!?」
    「あいつ……!!まだ死んでないの……!?」
    炎の中で、化け物がまだ蠢いていたのである。炎に焼かれる痛みのせいか、研究所を破壊しながら暴れている。
    「このままじゃ町に被害が……!」
    「……不老不死の研究の最中にできた物って、言ってたわね。そのせいかも」
    「僕がいない間に手を加えたのか……何処まで狂ってんだよ……!!」
    マルコスの悔しそうな声。すると、トタッと誰かが後ろに降り立った。
    「お呼びかぁ?魔女サマ」
    「っ……?サーティーン……?」
    「えぇ、貴方の出番よ」
    現れたのはサーティーンだった。宿にいるはずの彼は、ついさっき魔女に呼ばれたのだ。
    ……永遠の命を終わらせる為に。
    「魔女サマ、ご命令は?」
    魔女の方へ屈んだサーティーンへ、魔女は手を伸ばし……顔を近づける。
    「サーティーン​───────あれの命を、終わらせて」
    口付けると、サーティーンはニヤと笑って魔女の頬へ口付けを返す。
    「アンタが居れば俺は何でもできるぜ、魔女サマ」
    サーティーンは飛び上がると、炎の海へ突っ込み、
    「そぉら、逝っちまいなぁ!!」
    鎌で化け物を両断すると……断末魔を残し、ドスンと真っ二つに割れた化け物の体が炎にのまれていった。
    戻ったサーティーンは、燃え盛る炎を見つめるマルコスの頭に手を置く。
    「決着、ついたか?」
    「……うん。ありがとう、魔女様。サーティーン」
    それを最後に……そこから人は、居なくなった。




    次の日。
    町を後にすると、魔女は早々に疲れたと言いアダムに抱っこされている。
    (昨日は僕とサーティーンの二人の力を解放したからね、仕方ないよ)
    「……いつもな気はしますが」
    (けど魔女様、今日はマジでぐっすりだぜ)
    (余程疲れたのだね。魔法も沢山使っていたみたいだし)
    (魔女様が使わせてくれたから、ついついいっぱい……)
    (あの技名どうにかしろよ、ガキくせぇったら)
    (あれがいいの!僕の激推しラジオ、リリカルルカラジオの二人がよく言ってる魔法なんだから!)
    話しながら、アダムはすやすやと眠る魔女を見つめる。
    (今回はマルコスさんの決着をつけた……なら、次は)
    アダムはふとサーティーンの方を見る。
    サーティーンはそんなことは露知らず、呑気に欠伸をこぼしていた。
    羅針盤の旅は続く。
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