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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

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    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
    感想、リクエスト(お断りさせていただくものもあります)はこちらへ→https://marshmallow-qa.com/kurokuro_happy5?t=ajqOjp&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

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    kurokuro_happy5

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    使い魔86ダムと魔女プレの話。なんか色々あった後だと思ってください。

    羅針盤の魔女⑤ついに彼の目的が果たされる時が来た。しかしそれが、本当に彼が求めたものか。そして彼は何を選ぶのか。
    全ては、魔女の手の中の、羅針盤しか知らない​───────。




    「……ここね」
    羅針盤の針は、目の前にある古城を指している。
    魔女達はアダムの弟、ソーンの居場所を求め旅をしてきたが……
    ついに、その場所へ訪れることが出来た。
    (まさか異界にあるなんてね〜。羅針盤が正常に作動してないはずだよ)
    (ここにアダムの弟がいるんだな)
    (良かったな、見つかって。羅針盤が示したってことは、生きてるってことだぜ)
    (ようやく悲願が果たされる時が来たね)
    「……えぇ。本当にありがとうございます、皆さん。魔女様」
    「まだ礼を言うのは早いわ。弟を見つけてからよ、行きましょう」
    「はい」
    魔女が門に触れると、ギィィィ、と大きな音を立てて開く。深い霧の中で、魔女達は門の中へと姿を消した。




    中は薄暗く、誰もいない。羅針盤はどうやら城の地下を示しているらしかった。
    「……こっちね」
    生命の気配はしない。今ここで生きているのは魔女達だけだ。
    ロビーの東の扉、そこを開けて中へ入ると、どうやら書斎のようだ。
    「……」
    魔女は羅針盤の示す方にある本棚の前で立ち止まる。本棚の隙間から風が吹いており、どうやらこの裏に空間があるようだが、アダムが押しても動きそうにない。何か仕掛けがあるようだ。
    「マルコス、わかる?」
    (んー、ノーヒントだけど……こういうのは大抵、どれかの本を押したり引いたりするとそれがスイッチになってるものだよ。例えば、この本棚の中で異様に分厚いその本とか?)
    マルコスの言う通りに一番分厚い本を手前に引くと、カチッと音がし、本棚が右へ動いて地下への階段が現れた。
    「お見事です、マルコスさん」
    「流石ね」
    (ふふーん。ま、僕にかかればこんなものだよね〜)
    (すげーっ!こういうのワクワクするよな!)
    (……わかりやすすぎねぇか)
    (罠だろうと関係ないさ、羅針盤はこの先を示しているのだから)
    「行きましょう」
    魔女達は地下へと進む……



    地下は真っ暗で、魔女が灯りを灯すことでようやく進めるくらいだった。
    やはり生命の気配はしない。
    「……本当に、こんな所にソーンが?」
    「間違いないはずよ。……弟はどんな奴らに拐われたの?」
    「女です。髪の短い、細身の」
    「一人だったの?」
    「はい。ですが、街を襲った連中とは無関係です。第三者が戦争に紛れソーンを拐ったのかと」
    「……へぇ。どっちにしろ、こんな所にいて生きているのが不思議なくらいね」
    「魔女様、早く奥へ」
    すると、カタカタッと何かが動く音がした。全員が警戒態勢をとる中。
    「!! 上だッ!!」
    上に張り付いている薄気味悪い笑みの女に気づき、攻撃を繰り出されると同時にアダムが魔女を横抱きにして開けた部屋の方へ避ける。
    「あいつですッ……!ソーンをさらったのは!」
    「……女の、人形…………?」
    スタッと降りた女は、木でできた人形だった。どこからか吊られた糸で首が360°回転し、ケタケタと笑っている。
    「……アダム、奥へ行きなさい」
    「え?しかし」
    「貴方の弟でしょう。一番助けに来て欲しい相手が行かなくてどうするの」
    「魔女様……」
    「零夜」
    魔女は零夜を元の姿に戻す。アダムは頷いて、奥の部屋へと走る。
    「くっ、鍵が……!」
    「アダム、下がって」
    零夜が手をかざすと、バキッ!と鍵が壊れ、扉が開く。「ありがとうございます!」と言いながら、アダムは奥へ走る。
    「僕の魔女、今回は何秒かな」
    「少し厄介そうだから……3分にするわ」
    魔女は零夜の頬へ手を添えると、顔を近づける。
    「お願い零夜​───────あいつを、燃やして」
    キスをすると、零夜はバチバチッとプラズマを纏った。
    「……あぁ、君の為なら」
    ケタケタと笑った女の人形は飛び上がり、零夜へ襲いかかる。それを零夜はプラズマで向かい打ち、人形は吹き飛ばされる。
    人形は腕も脚もどの方向へ曲がろうと関係なく、糸が操るままに襲いかかり続ける。
    (あの糸、特殊な魔法がかかってる……普通じゃ切れないみたい)
    (魔女様、零夜気をつけろ!そいつすっげー嫌な感じがする!)
    (操られてるんじゃ俺様の出番はねぇな……油断するんじゃねぇぞ!)
    「わかってるわ……ミスティックアーツ【Δ】ッ!」
    魔女が零夜の能力を放つと、それが人形に当たる。人形は一瞬動きを止めたが、やはり人の体でない為か麻痺は効かない。
    「燃えろッ……!!」
    零夜がプラズマの熱を高め人形にぶつけるが、人形はそれを避け旋回し避け続ける。
    「っ……?(急に攻撃が止んだ……?何のつもり……?)」
    (……! これって……魔女様、零夜!!今すぐこの部屋から出て!!)
    「何っ……!?」
    マルコスが気づいた時には人形はニヤリと笑い、旋回した時に張り巡らされていた糸が全員を縛り上げた。
    「ぐっ……!?」
    「ッ……!!」
    (な、何だこの糸ッ……!!)
    (っ……!これが狙いだったんだ……!!)
    (くそっ、体にくい込みやがる……!!)
    人形はケタケタと笑い、魔女達の周りをぐるりと回ると、糸の端全てを引っ張る。細い糸が肉にくい込み、魔女と零夜の体から血が噴き出す。
    「あぁッ!!!!!」
    (魔女様!!零夜!!!!)
    「っ……!!よくも……僕の魔女を……無機物風情がッ…………!!!」
    人形はケタケタと笑いながら、痛みに喘ぐ魔女達を空虚な瞳で見つめる​。そしてそのまま、アダムが向かった部屋の奥へと消えていった。
    「っ、いけないっ……!!アダムっ……!!!」




    「……」
    部屋の奥に辿り着いたアダムは、鉄の扉の前にいた。
    そこからは異様に冷たい空気が漏れ出ている。
    アダムにとっては日常茶飯事のようなもので、凍てつくような冷たさの扉に触れることも苦ではなかった。
    「……ソーン、頼む。無事でいてくれ」
    そんな願いを込めて、鉄の扉を押し開ける​───────。
    「…………え」
    アダムは目を見開いて固まった。
    目の前にいたのは、大型の水色の獣だった。
    獣は鎖で繋がれ、ヒュゥ、ヒュゥ、と浅く呼吸をしている。
    アダムが固まって動けないのは、獣に脅えているからでは無い。



    ……獣の傍に、弟がいつも大事に持っていた魔導書が、ボロボロになって、血がついて、落ちていたからだ。



    「……嘘、だよな、ソーン」
    アダムは堪らず大声をあげる。
    「ソーン!!いるんだろう!?返事をしてくれ!!俺だ!!アダムだ!!ソーン!!ソーン!!!!」
    いくら呼んでも、ここ以外に部屋はない。アダムと獣以外は存在していない。
    アダムはガクッと膝をつく。
    「……嘘だ、こんな…………」
    すると……
    獣が動き、アダムの傍へゆっくり近づく。
    「……………」
    食われる。そう思ったが、動けない。
    膝をついたアダムへ、獣は……
    すり、と擦り寄ってきた。
    「……何、を」
    次の瞬間。アダムは、信じられないものを耳にする。



    「……ニ……ィ……サ…………マ………………」



    「……………………ソー、ン?」
    獣の声ではあった。原型など留めていなかった。
    しかし、アダムに対してその呼び方をするのは、
    たった一人なのだ。
    「まさか、お前……ソーンなのか……?なぁ……」
    「……」
    獣はそれ以降返事をしない。苦しそうに呼吸を繰り返すだけ。
    「頼む、教えてくれ!お前はソーンなのか!?」
    「……」
    「教えてくれ……頼むッ……!!」
    涙を流すアダムに、獣が身動ぎした瞬間。
    グチャッ
    「……が、はッ」
    ケケケ、と、人形が気持ちの悪い笑みを浮かべる。
    アダムは人形の手で心臓を貫かれていた。力なく倒れるアダムに、人形はケタケタと笑うだけ。
    獣は目を見開き、倒れたアダムを見つめている。そして、
    「グオオオオオオオッッッッ​───────!!!!」
    耳を劈く、悲鳴のような咆哮をあげた……



    「はぁっ、はぁっ……!!」
    なんとか脱出できた魔女達が辿り着いた部屋は、氷で覆われていた。
    (っ、寒っ……!!)
    (こんな所いたら凍っちまうぜ……!!)
    (おい魔女サマ、こんなとこ居たら凍死しちまうぞ!!)
    「っ、アダムっ、アダムっ!!」
    魔女が名前を呼びながら部屋の中へ入ると……
    「!!!!」
    目の前の巨大な獣の傍に、血まみれのアダムが倒れていた……
    「アダム!!!!!!」
    近づこうとする魔女の元へ氷柱が飛んでくる。それを零夜がプラズマシールドで跳ね返し、魔女の手首を掴む。
    「魔女、アレは危険だ、今すぐ引き返して」
    「ダメよ、彼を置いていけない……!!」
    「彼は手遅れだ」
    「嫌ッ……!!アダムはっ、私の騎士だものッ……置いていけないわ!」
    「っ、いけないっ、魔女!!」
    走ってアダムの元へ向かう魔女。獣に近づく度、指先から感覚が無くなるほど体が凍りついていくのがわかる。
    それでも魔女は足をとめなかった。
    「アダムッ……!!」
    瞬間。獣に踏み潰され、魔女は死ぬ。獣が足を上げた瞬間、魔女は生き返り、また進む。
    「アダムッ!」
    床から生えてきた氷柱に貫かれ、魔女はそれを魔法で破壊すると、また進む。
    「アダムッ!!」
    足が凍りつき折れても、体全体を凍らされても、魔女は進み続け、
    アダムの元へ辿り着いた。
    「アダムっ、アダムっ……!!」
    アダムを抱き抱えるが……彼はもう冷たくなっており、目を開けることは無かった。
    「……ごめんなさい、アダム。私嘘をついていたの」
    吹雪の中で獣に睨まれながらも、魔女はアダムに向けて懺悔をした。
    「貴方に契約してくれと言われた時、キャパオーバーだと言って断ったけれど……それは嘘。もし貴方が弟に巡り会えた時、使い魔になってしまったら、弟と暮らせなくなってしまう。だから半契約状態でいつでも元に戻れるようにしていたの……貴方が弟に会えた時、普通の兄弟に戻れるように……」
    魔女は涙をこぼす。その涙すら凍って、氷の砂となって消えていく。
    「なのに私はッ……貴方を弟の前で死なせてしまったッ……ごめんなさい……本当に、ごめんなさいッ…………!!!」
    アダムを抱き締め、魔女は泣いた。その様子を見ていた獣は、吹雪を止ませ魔女の頭をつつく。
    「っ……貴方、アダムの弟ね……こんな姿にされて……可哀想に……生きていても、こんな姿じゃ……」
    「……」
    「……え?ここに、触れたらいいの?」
    魔女は獣の透き通った角に手を伸ばす。触れた瞬間、魔獣に改造されてしまった少年の心の声が聞こえた。
    (貴女は、兄様を大切に想ってくださっていたのですね……なのに、酷いことをしてしまってごめんなさい……)
    「……仕方ないわ。相手は違えど目の前で兄を殺されたんだもの」
    (貴女が殺した訳じゃないのに、本当にごめんなさい。その上に、少しお手伝いをして頂こうだなんて……烏滸がましいとわかっているのですが、貴女にしか頼めないんです。魔女様)
    「お手伝い……?」
    (……僕を、兄様の体の中に宿していただけませんか)
    「っ……!?どういう、こと?」
    (僕のこの魔獣としての力を、命を、兄様の体の中に移すんです。そうすれば兄様は生き返るはず)
    「そんなことをすれば、貴方は永遠に人に戻れるチャンスを失うわ……!!」
    (構わないです。僕は兄様の心の中で永遠に生き続ける。兄様が幸せになることが僕の望み……貴女が兄様の傍に居てくれるのなら、安心できます)
    「ソーン……」
    (お願いです、魔女様。僕を兄様のヤドリギにしてください)
    「……」
    迷う魔女の手を、傍に来た零夜が握る。強く頷いた彼を見て、魔女は立ち上がる。
    「……わかった。彼の身に、貴方を移すわ」
    (良かった……一度生き返れば、後は貴方の契約の力で兄様の命は安定するはずです)
    「えぇ……ありがとう、ソーン」
    (お礼を言いたいのはこちらの方です。兄様に会わせてくれて、ありがとうございます)
    ソーンは微笑んだ。
    それから儀式を行い……ソーンを新たな命としてアダムの中に宿らせ、アダムの身が砕ける前に魔女が契約を施し……
    アダムは、生き返ることができた。




    「……」
    異界を出て元の世界に戻り、とある街。
    全てを聞いたアダムは、屋根の上で空を見上げていた。
    ほうきに乗ってきた魔女が隣に座ると、アダムは胸に手を当てる。
    「……魔女様、ありがとうございました」
    「……私は貴方の弟を殺したのよ」
    「そんなことないです。私と……弟を生かしてくれて、ありがとうございます」
    「え……?」
    アダムが微笑む。すると魔女にも、耳を疑う声が聞こえて来る。
    (えっと、あはは……こんにちは、魔女様)
    「!? 貴方、ソーン……!?」
    (どうやら魔女様の契約の力が強すぎて、それが僕にも反映されちゃったみたいです。魂だけが繋ぎ止められて、兄様の中で生きているようで……)
    「体は共有するしかなくなりましたが、ソーンの魂は確かに私の中で生きている。契約がソーンにも適応されているということは、貴女が生きている限り、ソーンも生き続けます」
    (そういうことですので、皆さん。兄様共々、これからよろしくお願いしますね!)
    (すっげー……!!よかったな!アダム!!)
    (やっぱり、奇跡も魔法もあるってことだね〜)
    (またうるさいのが増えたねぇ。ま、いいんじゃねぇか?)
    (これは君でなければ成しえなかった……僕の羅針盤の魔女は、次々と奇跡を起こすね)
    「……」
    魔女は堪らず、アダムを抱きしめた。アダムの中にいるソーンも。まとめて。
    「ま、魔女様!?」
    「……本当に、良かった…………人生で生きていてよかったって思えたの、これで二回目だわ」
    「…………私も、貴女に出会えてよかったと思っています。深く、感謝を。魔女様」
    (僕からも感謝を!羅針盤の魔女様!)
    「えぇ、えぇ……!!」
    こうして、魔女は結果的に6人の使い魔を持つこととなった。
    しかし、魔女が求めるのは、己を終わらせる死。
    ソーンが見つかった今、羅針盤が示すのは彼女の死だ。
    「そろそろ行きましょうか」
    「はい」
    (はい!行きましょう!)



    羅針盤の旅は、まだまだ続く。
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