イルミネーションを見に行くくりんばの蛇足大倶利伽羅が国広の持っていた指輪に気づいたのはこの日の朝のことでした。昼という方が近い時間に、国広の部屋で目を覚ましてしばらくごろごろした後、枕元に置きっぱなしだった本を本棚に戻そうとして、不自然に本棚と本の隙間が空いているところを見つけて興味本位で覗き込んだ結果、隠されていたベルベットの小箱を見つけてしまいました。お互いの部屋で寝起きすることはあれど、基本的に相手の持ち物は触らないのが暗黙のルールになっていたので、勝手に触ったうえに、見つけられることを想定していないものを見つけてしまった、と思って大倶利伽羅は謝っています。
記念日にはこだわらないけど覚えていた大倶利伽羅は、このままでは明日国広にプロポーズされてしまうと焦って、今日言おうと決めました。これだけは絶対に先に言うと長年決めていたので、本当にそれしか頭にありませんでした。その結果、もう一方の指輪も買い物袋も財布もスマホも何もかも忘れました。本当にポケットに指輪だけ入れて出てきたわけです。
今朝、指輪を見つけたのに、その日にすぐ自分から言えたのは、もちろん指輪をもう買ってたからです。それも国広よりずっと前に。本当は半年間の出張の前に言おうと思っていました。会えない間の心の支えにしたいと思っていました。でもいざ渡そうとすると、もしかしてこれは重いんじゃないか、とか、自分がいない間、縛りつけるのはどうなんだ、とか色々考えてしまい、結局渡せないまま海外に行きました。空港まで持って行っていた指輪も、このとき一緒に飛行機に乗って海を渡っています。
国広は国広で、大倶利伽羅が帰ってくる前日にウキウキで指輪を買って、再会して熱い夜を過ごした翌朝、目が覚めると指にキラリと光るものが……というロマンチックな演出をしたいと目論んでいましたが、案の定起きられませんでした。
ちなみにこの帰国日の翌日、ふたりで時間ギリギリに駆け込んで食べた朝マックが渡航先で一生分食べたと思っていたどのハンバーガーよりも美味しくて、大倶利伽羅は人生二度目の結婚してくれ宣言をしています。
一度目はテレビ通話をするたびにみるみる痩せていく大倶利伽羅を見かねた国広が何も言わずにどん兵衛を1ダース送ってくれた時に言いました。
この日の晩、もしかしてこれは初夜なのか、とひとりそわそわ緊張し始めた国広に、大倶利伽羅はかわいいのはどっちだと思いながら、いつもどおり大切に抱きましたとさ。
くりんばくりんば