『アパートの隣人』の蛇足現パロっぽくなっていますが現パロではありません。初めての単独現代遠征に赴いた国広♀と、それが心配で心配で休暇をもぎ取って自分の給金でアパート契約してついてきた心配性の彼氏こと大倶利伽羅です。任務じゃない大倶利伽羅はまともな身分証明を持っておらず、モブくんのお察しのとおり無職です。
はじめての単独任務をひとりで成し遂げるんだ!と国広♀が意気込んでいたので、任務中は他人のふりをしていました。刀剣男士としても休暇中だし現世でも無職だし、国広♀を構おうとしたら自分でやると意地を張られてしまってやることがないので、なんとか貰った合鍵で昼間に部屋へ忍び込んで家事をしてあげていたようです。刀としての国広♀の実力は心配していないので本来の任務にはついていったりしませんが、深夜の偵察に出た国広♀が帰ってくるのは律儀に待っていたようです。
越してきた初日、隣人に引っ越しの挨拶へ行こうとする国広♀に、そんなの行かなくていいと拗ねたりしましたが、こういうのは最初の印象が大事らしいぞと言った国広♀に根負けしたら、案の定隣人の心を奪って帰ってきたので、言わんこっちゃないと思いました。過保護タイプの大倶利伽羅なので、最初の挨拶の段階で国広♀にやましい目を向けた存在が現れたことには気づいています。すれ違うモブくんを睨みつけていたのもコイツです。たぶん国広♀にも気づかれない程度に薄く結界をまとわせたりしているんでしょう。過保護なので。
あの日、一月に渡る任務が終わったので、大倶利伽羅は一ヶ月ぶりに待てを解除されました。窓を開けたまま事を始めたのはもちろん隣人への牽制が大部分ですが、モブくんの心がだいぶ澱んでいたので、ショックを与えるくらいでちょうどいいだろと思っていました。まあでも、国広♀にも任務中なんだぞとあらゆる接触を拒否されていたので、その腹いせもやはりあったようです。
モブくんを失恋させるだけなら自分の顔を見せる必要はありませんでしたが、わざわざ時間を合わせて彼女を抱いていたのが誰か見せつけに外へ出てきたのは大倶利伽羅の可愛げです。他人の妄想の中ですら国広♀の相手が自分じゃないのが許せなかったのかもしれません。
モブくんはやや仕事にくたびれているだけで元々悪い人ではないんですが、突然現れた人間でない国広♀の比類なき美しさに魅了され、やや正気を失いそうになっていました。なおモブくんは国広♀に処女性を見ていますが全然処女ではないです(??「気づかなかったですか?すみません気をつけます」)。国広♀に出会ってからは、年齢とともに適当になっていた身なりに気を遣うようになり、やや高めだったプライドをこてんぱんに折られて考え方も変化し、なによりこの出会いで運命の回転がわずかに変化するので、仕事もいい流れが来て、私生活もうまく回るようになり、そう遠くない未来に家庭を持つことになるでしょう。
現代での用が済んだふたりは本丸へ戻るので、土曜出勤からモブくんが帰ってくる頃には隣もその隣も空き部屋になっています。
この一件を経て、大倶利伽羅はやっぱりちょっと国広♀を隠してしまいたいなと思ったりしますが、そのへんは国広♀が話し合ったり多少の代償を払ったりしながら、うまくやってくれることでしょう。
くりんばくりんば