「おい」
呼びかけに対してビクーッと飛び上がらせる細肩をロハンは冷ややかな眼差しで眺めた。
「何か言い残すことはあるか?」
「二言目で最終通告はちょっと早すぎませんか!?」
不穏な先触れに堪らず振り返った青年はロハンの顔を見て「うっ……」と言葉を詰まらせる。その反応でロハンは怒りの段階を一段下げてやった。
「なるほど。いつもは厚顔無恥なお前でも流石に今回はマズイと思ってるわけか」
「……あの、えっと、その。もしかして、ご迷惑おかけしました……か?」
恐る恐る尋ねてくる下っ端にも分かりやすいようにロハンは深く深い溜息を吐き捨てた。
「いつも迷惑かけてる自覚はねぇのか」
棘を生やした恨み言に我欲にまみれた問題発生源は返す言葉もないらしい。ただ生意気に回る口を噤んでいるところを見ると一応反省はしているようだ。
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