石畳の広場に並べられた木製の椅子とテーブル。冬場の貴重な日差し。卓上の左手付近には白い湯気を立てたホットショコラ。そして右手につままれたショコラ・オランジュ。
それをあと一秒後には口に放り込んでいるといった格好のままマヒアは停止している。原因は目の前に立っている予期せぬ登場人物のせいだ。
「なんだ?食わないのか?」
ラフな格好をした腕組みを解かない強面が話しかけてきた。ということはどうやら他人の空似でもマヒアの幻覚でもなく正真正銘よく知っている相手で間違いないらしい。
「……なんでアイヴスがここにいるんだ?」
「今から説明する。だからこっちと交互にチラチラ見てるソレを早く口の中に仕舞ってくれ」
気になって話がしづらい、とため息を吐きながら断りもなく向かいの席に腰掛けた。マヒアは僅かに躊躇ったのちチョコレートが半分以上かかった大振りなオレンジにかぶりついた。
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