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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    恋人役で潜入捜査というリク。

    アドリブから出たまこと【オル相】 ソファに悠然と腰を下ろしたオールマイトの隣にぴたりと体を触れ合わせながら座って、相澤は艶めいた溜息をひとつ吐く。床に着けていた足をついと揃えて持ち上げ、オールマイトの太腿の上に負担にならないように乗せた。傾きかける体を支えるようにするりと手が伸び、脇に寄り添わせる。抱き寄せられて甘えるような手がそのままシャツの胸元を掴んだ。
    「ごめんね。私の子猫ちゃんはやきもち焼きでね」
    「焼いてませんよ。あんたが俺以外に目移りするつもりなら暴れようと思ってるだけです」
     テーブルを挟んだ向かい側に座っている人影が細かく震えている。
    「君だけだと言ってるだろ?私は誓って浮気なんかしないよ」
     オールマイトは歌うように囁いて、拗ねた素振りの相澤の機嫌を取るように髪を一房手のひらに掬い上げて唇を落とした。
    「ほらみろ。唇にしてくれないのは疚しいことがあるからでしょう」
    「おや。子猫ちゃんは今夜少し飲み過ぎたかな?」
    「今日のワインは美味いです」
    「及第点を貰ったよ。良かったね」
     震えた人影は謝辞を告げるように片手を上げた。伏せた頭は起き上がる気配もなく、二人の空気を壊さぬように息は潜められたままだった。
    「で?キスはまだですか」
    「皆の見ている前でしてもいいの?」
     そう言いながらオールマイトの手は相澤の膝から下を猫でも愛でるように撫でている。
    「だってこの人たち疑ってるんでしょう、俺とあんたが恋人じゃないって」
    「それは残念だね」
    「まァ……正確にはこの人が俺に首っ丈なだけですけどね」
    「否定はしないよ」
    「なんですその言い方」
     相澤が軽く鼻で笑う。オールマイトを見上げ、こめかみの辺りを肩に擦る。オールマイトはそれに呼応するように脇腹に回していた手を体のラインに沿って、斜め下から相澤の頬に大きな手を這わせた。
     柔らかな微笑みと裏のある笑顔の視線が交わって、そこに嘘の気配がした。
    「っ、もうダメだァ!!」
     うひゃひゃひゃひゃとけたたましい笑い声が夜の寮の共用スペースに響き渡る。個性を使ってもいないのにマイクの声は建物中に聞こえているのではないかと思う程だった。あまりにも笑い過ぎて咽せ、咳き込んで背を丸めえずいてすらいる。その背を同じく延々と笑いながらミッドナイトが摩っていた。
    「やだちょっともう笑わせないでよあんた達!」
    「カップル潜入捜査の真似しろって言ったのあんたですが?」
     相澤はテーブルの上のグラスを手に、赤ワインで喉を潤している。しかし体勢はオールマイトに寄り添ったままだ。足も二本とも太腿の上に投げ出されている。
    「だって絶対できないと思ったから振ったのに、即興で芝居始められるなんて案外ノリがいいのねイレイザー」
     溢れそうな涙を指先で拭ってミッドナイトは上機嫌に酒を煽った。
    「ちょっとマイク笑い過ぎよ」
    「こんなもん見せられてそら無理ってもんでしょ!」
    「吐かないでよね」
    「オールマイトもノリ良過ぎでしょ。何の打ち合わせもしてないのに」
    「そう?アドリブでも相澤くんは合わせやすいよ」
    「いやいや、言うに事欠いて百八十オーバーのアラサーを子猫ちゃん呼ばわりできんのは世界広しといえどオールマイトだけっすわ」
    「にゃあ」
     絶妙なタイミングで相澤が低い声で猫の鳴き真似をするものだから、マイクとミッドナイトは更にツボにハマって笑いを通り越して全身を震わせている。
    「随分と酔っ払ってるね、君」
     オールマイトの指が相澤の前髪を掬った。アルコールで蕩けて水分を湛えた目がとろりとオールマイトを見上げる。
    「すげえいい、気分です」
     そう言って相澤はオールマイトに寄りかかったまま目を閉じてしまった。
    「相澤くん、寝るならお部屋でおやすみよ」
     呼びかけるも返答はない。
    「やだぁイレイザー、そこで寝るの?」
     言いながらミッドナイトはオールマイトに軽く抱き付いて眠っている相澤をスマートフォンのカメラで連写している。
     酒宴は他のテーブルでも盛り上がっていて、酒を飲まないオールマイトは周囲を見回し丁度いい時間だと膝の上の相澤を抱いて立ち上がった。
    「私の子猫ちゃんがおねむだからベッドに連れて行くことにするよ」
     黄色い声でミッドナイトが囃し立て、その場にいる全員の万雷の拍手に見送られる形でオールマイトは会場を後にした。熱狂の渦から解放され、頬を撫でる空気が冷たい階段の踊り場で足を止める。
    「……相澤くん。寝たふりはもういいんじゃない?」
    「全自動部屋まで運んでくれるマシーンじゃないんですか」
    「運んであげてもいいけど報酬が欲しいな」
    「遅刻しても怒られない権利ですか?」
    「最近は気をつけてるからしてないだろ」
    「お姫様だっこと引き換えに何が欲しいんです」
     オールマイトは止めていた足を再び動かした。一段ずつ階段を登って行く。相澤は腕の中でぐんにゃりと体から力を抜きつつ、落ちないようにオールマイトの首に肘を引っ掛けていた。
     至近距離で見つめ合う。オールマイトが相澤の唇にちょんとキスをした。一瞬触れるだけの、事故のようで意思のあるくちづけを。
    「私に疚しいことはないからね。君にちゃんとキスだってできるよ子猫ちゃん」
    「芝居、ですよ」
     呆然と返した相澤に、オールマイトはただ笑った。
    「だって、終わりって言われてないしね」
     相澤の部屋のフロアに辿り着き、廊下に抜けようとしたオールマイトの首に抱き付こうとする力が入る。
    「……まだ。終わりにしなくて、いいです」
    「明日覚えててくれよ?」
     オールマイトは踵を返し相澤を抱き上げたままもうワンフロア階段を登り始める。
     ひとつ上には、オールマイトの部屋があった。



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