所有物【オル相龍神パロ】 最近の八木様はやたらどこかに出かけて行く。なんでも、若い後継者の育成をしなければならないらしい。八木様の力は本人曰く衰えて行くばかりらしいから、その補佐か穴埋めにと言うことらしい。
神様の世界は俺にはわからない。
力が衰え続けたら、それはつまり死ぬと言うことですかとは怖くて聞けずにいる。
「じゃあ行ってくるね」
「はい」
「消太、最近浮かない顔をしてるね。あっ?!私が少年に稽古をつけているからと言ってそれは浮気じゃないからね?!」
「……あなたが俺以外の誰かを気にかけて愛したとして、俺はそれを咎められる立場にありませんから」
顔も上げずに漏らした本音に八木様は黙り込んでしまった。
「それは……どういう」
「俺如きがあなたの行動に口を出せるもんじゃないって意味です」
ぴり、と空気が変わる。きっと俺の受け答えは八木様の気に入らない部分に触れたろう。でも本当のことだから仕方がない。
俺は拾われた身で、過ぎた寵愛を受けているけれどそれが八木様に首輪をつける意味になっていいはずがない。
「折檻したければどうぞ。俺はあなたの本当の姿の鋭い鉤爪でこの身を引き裂かれようと、あなたを恨んだりはしませんよ」
今度こそ八木様は本当に黙り込んでしまって、中途半端に啖呵を切った手前俺はそれ以上何も言い出せなくて、ただ俯いてぎゅっと手を握り込むくらいしかできなくて。
「……一緒に行くかい」
「え?」
「少々君を閉じ込め過ぎたようだ。覚えておきなさい消太。私は君を下男として屋敷に置いているわけじゃないし、愛玩物にしたいわけでもない」
そう言うが早いが、八木様は俺をひょいと抱き上げて空へ飛び上がった。
「は……?!」
「君には私の伴侶だと言う自覚を持ってもらいたいんだ」
八木様が言っていることの意味がわからないまま、ちらりと覗いた高さに怯えてしがみつく俺に遅刻しそうだから少し飛ばすよ、と容赦ない声が聞こえて俺はせめて悲鳴を上げないように強く唇を噛み締めた。