ハッピーバースデー ……今年も、この時期がやってきた。
クリスマスが終わり、年が明けて、お正月明けの始まりの日。
正直、一番初めに贈ったものがあまりに大物だったために、翌年以降、何を贈ったらいいものか悩ましくて。
毎年、ギリギリまで悩んでしまう。
そういえば、最初の年の贈り物はなぜ天体望遠鏡だったのか、と問われたことがある。
……深い意味はない。
強いて言えば、彼の千の空という名から、空に向かって手を伸ばして、星まで掴んでしまいそうな。
そんな印象を抱いていたからだ。
しかし、これも改めて口に出すと恥ずかしい。
けれど、その印象は今も変わらなくて。
彼は、星を掴むもの……星の開拓者。
そんな、感覚。
なんとなく、ロマンチックで、ふふっと笑ってしまう。
千空ちゃんは基本的に合理的なリアリストだけれど。
いつかなにかで、目にした言葉。
『 科学者というのは、ロマンチストです。でなければ、どうして月に行こうなどと思うでしょうか』
本当に、そうだと思った。
彼は合理的なリアリストであると同時に、夢想的なロマンチストで。
そんなところが、なんだか年相応に思えてかわいい。
それはそれとして、今年のプレゼントはどうしよう。そんなふうに悩んでいるうちに、前日の夜になった。
午前〇時近くになって、天文台を覗き込むと、灯がついていて。
まだ、千空が起きているのがわかった。
「 おっ疲〜、千空ちゃん、まだ起きてんの?」
階段を昇って問いかけると、望遠鏡の側の千空がこちらを振り返る。
「 テメーこそどうした。こんな時間に」
逆に問われて、誤魔化すように笑った。
……贈り物はどうにか用意したが、苦肉の策で。しかも喜んでもらえるかは、かなり微妙だ。
……一月四日まで、あと、三、二、一秒。
「 千空ちゃん、お誕生日おめでとう」
言葉と同時に、白い花が光の鱗粉をまとい、雪の結晶のように舞う。
千空はそれを視線で追って、穏やかにわらった。
「 プレゼント、どうしようか悩んだんだけど、なかなか良いアイデアが出なくて。
……だから、千空ちゃんに決めてもらおうと思って、あさぎりゲン、何でも言うこと聞いちゃうよ券を!作りました!」
どうしようゴイスーはずかしい。
小学生の肩叩き券のレベルだ。
「 ……なんでも、っつったか?」
「 なんでもだけど、ドイヒー作業はお手柔らかにね♬」
戯けたように言うと、千空は早速一枚手に取って。
サラサラと何事か書き込むと、こちらに手渡してきた。
文面を読んで、ぶわっと頬に血が上る。
『 浅霧幻は、永年契約で石神千空について来ること』
振り向くと、二言はねぇな?と千空がニヤリと笑った。