無糖と微糖「 はい、千空ちゃん♬」
あたたかげな湯気を漂わせて、コトンとカップが目の前に置かれる。
白いカップには、濃い琥珀色の液体。それにいつもの角砂糖とミルクピッチャーが添えられている。
「 大学のレポート?……あんまり根詰めすぎないようにね」
「 おう。……テメーは飲まねぇのか?」
カップに口をつけながら問いかけると、答えずににこにこ笑ってこちらを見ていた。
やや濃いめのコーヒーに、オーガニックの角砂糖とミルクの甘さがやわらかくて。
好みを完全に把握されている。
「 ご馳走さん。……じゃあ、テメーの分は俺が淹れてやるわ」
カップを手に立ち上がると、ゲンは焦ったように両手をバタバタさせた。
「 えっいいよ千空ちゃんレポートあるでしょ!」
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