幕間の楓恒㊽ 読み終わった書物を抱えながら、次の書物へと手を伸ばす。普段であれば苦も無く届く位置にあるそれが今日は触れることすら難しい。
ん…と、爪先で体を支えながら指先を伸ばしてどうにか書物を取ろうとするが、俺の指が書物に届くよりも早く後ろから伸びてきた手がそれを取り上げた。
「たんふう…」
「無理をするなと余は言わなかったか?」
「これくらい、できる…」
「そのようには見えなかったがな」
「…たんふうにたよりきりなのも、だめだろう…」
「今朝も伝えたが非常事態なのだから、仕方あるまい」
事の発端は今朝方、白珠が持ってきた曰く付きらしい書物を俺が運ぶ途中で落としてしまったことから始まる。
子どもが欲しかった作者の念が籠められているのか、その書物を開いてしまったものは一定期間子どもの姿になってしまうという書物で、丹楓に言われ運んでいう途中にたまたま龍師とぶつかってしまった俺は目的地へ辿り着く前に書物を落とし、落とした拍子に開いてしまった書物のせいで子どもの姿になってしまっていた。
1798