付き合ってる良乱②おれくらいの年齢の男なら、性的なことに興味を持つのは普通だと思う。
ひろしと大介の話を聞いていると、話題として上がることも度々だ。
ただ、おれ達はまだ年齢上そういう本は買えないのであくまで想像での話になる。
最中の声は甘やかで軽やかで扇情的で可愛い。というのが、2人の意見らしくておれは首を傾げた。
「そういうもんか?」
「そういうもんなんだよ!」
「やっぱ、モテる男は違う意見か〜」
「モテるとかはかんけーねーだろ」
そんなことよりも、だ。
そういうことをしている時の声に少なからず普通の男なら夢を抱くんだろう。
こいつらみたいな普通のやつらですら思ってるということは、当然良牙も夢を抱いていたかもしれない。
「……やべ…」
「どうした、乱馬?」
「い、いや…!わり、今日はもう帰るわ」
「おー、また週明けにな」
足早にラーメン屋から出ると頬を生暖かい風が撫でた。春がすぎて本格的な夏が近い。
春の終わりに修行のため出ていった良牙もそろそろ帰ってくる頃だろう。
「……恋人のことほっときすぎだろ」
時間にして言うなら1、2ヶ月。
いつものことだが良牙から手紙なんぞ届いていない。
強いて言うなら果たし状は届いていたが、待ち合わせの日付からもう2週間は過ぎていた。
今日も来ているとは思えないが、待ってやるかと地面を蹴りいつもの待ち合わせ場所の空き地に向かう。
移動のために足をつけた屋根は地面よりも太陽に近いせいか暑く感じる。
ちらちらと地面を見ながら足を進めていると空き地の近くで見知った人影がぐるぐると迷っているのが見えた。
なるべく足音を立てないように良牙の近くに寄るが、気づかない。そんな良牙に大きく息を吐き出してから声をかけた。
「やっと来たのか」
「うおっ……なんだ、乱馬か」
「なんだじゃねーだろ、今日が何日だと思ってんだよ」
「また遅れてしまったか…」
「それも2週間もな」
「ぐ……」
「ここも指定してた空き地じゃねーし」
「近くまでは来てるはずなんだがな」
自作の地図を見ながらぼそぼそ呟きながら、また方向違いのところへ行こうとしている良牙の腕を掴む。
「おめーはどこ行こうとしてんだ」
「ここでは乱馬と満足に戦えないだろ、早く空き地に行くぞ」
「空き地に行くならそっちじゃねーって」
空き地から遠ざかる方向へ、ずんずん行こうとする良牙が変な方向に行かないように、空き地の方へ足を向ける。
どうせこれから空き地で良牙を待つつもりだったからちょうど良い。
「やめろ、乱馬!空き地はそっちじゃなく、こっちな筈だ!」
「いーから、黙ってろ!」
「なんだと…!」
半ば引きづるように良牙の腕を引っ張っていく。あー言えばこー言うを繰り返しながら空き地を目指す。
空き地まで来るとその頃には良牙は黙っていた。
「ほら、着いたぞー」
「…………」
「手がどうかしたか?」
「……いや」
空き地に着いたので掴んでいた腕を離すと良牙はじっと自分の手を見つめて動こうとしない。
「良牙?」
「……なんでもない」
なんでもないようには見えないが、聞いたところでどうせ良牙のやつは答えないんだろう。
気にはなるけど。
「まぁ、いいけどなー……それで?やるのかやらねーのか」
「やるに決まっとるだろ!なんのために来たと思ってんだ!」
「そうこなくっちゃな!手加減しねーぜ」
「はっ…乱馬こそ、今のうちに負けゼリフでも考えとくんだな!」
良牙が負けたらさっきのなんとも言えない顔のことを聞いてやろうと心の中で決めて、良牙と同じように構えた。
◆◆◆
最後の蹴りが良牙の腹に入って、良牙が倒れ込む。
おれも良牙もなんやかんやぼろぼろだ。
このまま帰るとなんか言われそうだと、頬についた汚れを手の甲で拭う。茶色くなった手の甲を見て、思ったよりも汚れていることに気づいた。
「おーい、良牙、無事かー?」
「おまえが、ここまで、やったんだろ!」
「手合わせで手加減してどうすんだよ」